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「GTFトーキョーシネマショー2011」シンポジウム

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「GTFトーキョーシネマショー2011」シンポジウム

2011年09月22日

欧州映画とアジア映画の今後の可能性

大高 外国映画というとアメリカ映画という印象があるんですけど、実際は外国映画ですから、あらゆる国籍の映画ということになるんですね、日本映画以外の。そうすると、かつてフランス映画、イタリア映画が大人気になった時がかなり昔になりますけどありまして、その流れの中で韓国映画、韓流があって、でもすぐブームが去り、そうして買い付けがトーンダウンした。
 しかし、またこの時期になって韓流の第2、第3ブームっていうんですかね、いろんな流れがTVドラマとか音楽シーンで出てくる。じゃあ映画はどうなってるんだとなると、新たな韓国映画のブームには今のところなっていない。いわゆるヨーロッパ映画とアジア映画の今後の興隆の可能性ってどうですか。


豊島 最近よく言われているのは、若い人は字幕を見るのさえ嫌がるという話もある。逆のいい方しますと、英語でもフランス語でも中国語でも、同じ映画を見るという意味では、同じステージに立って、本当に英語映画だけでない、他の地域の映画もやりようによっては可能性があるのではないか。洋画をどういう風に観て頂くかという構造的な問題さえクリアできればと思いますが。


大高 アメリカ映画の興行のバーと、ヨーロッパ映画の興行のバーって全然違うんですよね。先ほど賞をもらった「木洩れ日の家で」はポーランド映画です。これは岩波ホールで上映し、大ヒットしたんです。こういうマーケットは今確実にあるんです。しかし、それがマスのマーケットになるかというと難しい。そこへのポテンシャルとしてのヨーロッパ映画というのは、買付けも含めて今難しいですか。


P1170460.jpg豊島 映画を普段スクリーンで観ていない方も動員できる、ムーブメントを起こすポテンシャルを持った洋画自体、なかなか今はない、と感じています。岩波ホールさんの特性でもありますが、高野悦子(総支配人)さんを中心とした、いわばサークルですよね。そこにヒントが隠されているような気がします。一つのコミュニティが出来上がっていて、そこで見れば面白い、よりポテンシャルのある作品がかかればヒットすると思うんですけど、先ほど中川さんが仰った1500万人のコアユーザーというような層が映画を支えている。
 私も1500万人というのをもっと啓蒙していくことによって、多様性も生まれて、輸入してくる映画もアメリカ映画だけでなく、ヨーロッパ映画なり、中国映画でもいいという形で増えてくるのかなという風に思います。いま中川さんを中心にやられている「午前十時の映画祭」ですか、シニアのお客様が中心だと聞いていますが、ああいうお客様にはもっと旧作だけでなく、新作の情報もお渡しすれば、きっとヨーロッパ映画でも見て頂けるんだろうなと思います。


大高 先ほど佐野さんから中川さんに、ヨーロッパ映画を上映できないかというお話があったんですけど、中川さん、「午前十時の映画祭」を始められて、昨年大盛況となったんですけども、2年目に入りましたよね。どうですか、今後の展開として。


P1170459.jpg中川 1年目がだいたい60万人くらいで、興収が5億円くらい。今年は新たに作品を50作品追加して、全部で50劇場で上映していますけども、100万人前後の動員かなとは思っています。ただ、これフィルムで、ニュープリントでやったんですけども、これは意図しなかったんですが、デジタル上映の端境期にぶつかってしまいましてね、ちょっと3回目をどうするかというのが難しいかなと。ファンの方からは、次の新しい50本を早く決めて!というご意見ももらうんですけど、ちょっとお休みをしなければいけないかなと思っています、残念ながら。

 でも、各メジャーも名作のデジタルリマスターをやっていらっしゃるので、近いうちに僕はもっと名作のデジタル版のストックが出来ると思うので、そういうところでもう一回また再スタートが出来ればなあと思っています。というのは、新作でお客様を納得させて話題を作ることがベストなんですけども、音楽と一緒で、古典をもうちょっと活性化させるのも映画という文化の大切なところなので、もったいないなと思っています。

 若者の映画離れ、洋画離れというのがありますけど、どこかで身近な日本映画の方に気持ちが動くんですけども、映画には奮い立つような感動ってありますよね。そういう経験をもしかしたら若い人は知らないのではないか。これは映画ファンを育成する意味でももっとクラシックを上映し続けることは必要だなあと。これがどこかで洋画マーケットを拡大することに貢献できるのかなと思って、「午前10時の映画祭」をやらせてもらったわけです。


米映画が若者の気持ちを捉えられなくなってきた!?

大高 今日は興行のシステム的なことを中心に話してきたんですけども、恐らく、いま中川さんが仰った若者の洋画離れですよね。じゃあアメリカ映画が日本で興行が厳しくなったというので、他の国はどうかというとですね、やはり日本ほど落ち込んでいないというデータが出ています。そうするとアメリカ映画にとっての日本マーケットというのが非常に特殊なものになってきているのか、その背景には若者の映画離れと、アメリカ映画に対しての日本人が、ちょっとかつて持っていたものと比べるとですね、かなり価値が下がり始めているのではないか。
 それは例えば中国とか、ロシアなのでアメリカ映画がどんどん公開されていて、彼らにはアメリカ映画は非常に新鮮なものですので、ある程度の話題の映画にはお客さんが来る。日本人にとってアメリカ映画はずっと慣れ親しんできて、ここに来てアメリカ映画が大きく変わってきた中で、なかなか気持ちを捉えられなくなってきたというようなことも当然あると思うんですけど。その根本的なことに対してはいかがですか。


中川 アメリカがそうなんだから、ヨーロッパへの関心は、僕はものすごく低いと思いますよ。それを根本的に映画だけで変革するのは無理な話だと思いますよ。


豊島 関心というか、スターが洋画でいないわけですよね。残念ながら「ロードショー」さんが休刊になってしまったりして、スターを育てる、フォーカスするっていうこと、それはハリウッドだけではなく、フランスとかヨーロッパ、中国でも構わないと思うんですけど、そういえば、スターがあまりいなくなってしまったと思いますね。


佐野 未だにブラッド・ピットか、ジョニー・デップですものね。


大高 ソニーはアメリカのコロムビア、メジャーを買収しましたよね。ソニー・ピクチャーズになって19年になります。それでいつも私は不思議なんですけど、ソニーが買収した映画会社に、なんで日本の俳優がどんどん出ないのかといつも疑問なんです。
 どういうことかというと、例えばこの前の「グリーン・ホーネット」も韓国人の方が出ているし、なかなか日本の俳優がですね、親会社が日本の会社にも関わらず、組織形態が違いますから、ないものねだりをしているかもしれないんですけど、やはりそういう近い所にいるわけだから、日本の俳優がアメリカ映画に進出していく、日本の俳優は起用されてまた関心を持たれるというような、そういう映画の作られ方というのはどうなっていますか。


佐野 写真審査は一発で受かるんですよ、みんな格好いいから。でも、やはり英語が出来ないからなんですよね。一番悔しかった最たるものは、「SAYURI」でした。あれは芸者をみんな中国人がやっていて、空しいですよね。「バイオハザード4」に中島美嘉さんが出たり、「~5」にも日本の俳優さんが出ますけど、確かに、日本の映画人として、日本の役者に世界へもっと出て欲しいという気持ちはあります。一番やりやすいのはソニーかもしれないんですけど。ステレオタイプのイメージの日本人役はやって欲しくないですから。


大高 かつての「ライジング・サン」のような感じとも違ってきているような気がするので、やはり日本人が活躍できるような場を、アメリカ人のスターがいなければ、日本の俳優がそういうところへ進出するくらいの気構えが日本人にあれば、変わっていくかなという気がしたんです。

 今日は結論が出る話し合いではないので、いろんな現状認識をしてもらいたいなというような話し合いの中で、方向性がちょっといろんな方へ行ったかもしれないですけど、今の話を聞いて、或いはこのお三方、日本映画界の代表の方ですから、何か一般の方から質問があったら手をあげて下さい。



―なぜ、洋画の復習上映はないのか

質問
 最近は続編が多いですよね。今日から「トランスフォーマー」が公開になりますが、観たいのは山々なんですけど、結構前の話を忘れているんですよね。シリーズの2作目、3作目をやる時に前の作品を、日本映画がやっているみたいに復習上映みたいな形で、やってもらえると助かります。そこには制約があるのか、やっても旨みがないのか、不思議に思っていた。


佐野 今はTVがその役割を担っているんですね。「トランスフォーマー」も公開前に前の作品を放映していた。また、それこそレンタル店でお借り頂きたい。劇場で旧作をかけて新作の上映回数を減らすことは、なかなか配給会社としても興行会社としても難しいんじゃないかと思います。



―映画の入場料金について

質問
 映画の入場料についてなんですけども、いろいろキャンペーンをやってお客さんが入っていますが、TOHOシネマズさんが来年から1500円にするというようなことも聞いたんですけど、一般1800円て結構高いなと思うんです。その値段を今度どうするべきだとか、作品によって値段を変えるなんてことは、可能なのでしょうか。


中川 TOHOシネマズとしては今いろんなトライアルをしています。この春から全国7つの劇場で、18歳以上1500円、以下1000円というかたちで、あとプラス、レディースデイやシニアを廃止した劇場もあり、いろんなパターンで、どういう風にお客様が、新しい料金体系に反応されるか、というのをやっています。この夏までのデータをベースに,秋口いろいろ検討して、来年のことを考えようとしています。決して1500円と約束したのではなくて、1500円じゃなくなるかもしれませんが。

 ここにいらっしゃるのは、業界の方々、プラス一般の映画ファンの方なんですけども、一般1800円という言い方が、正規の映画料金の代表選手みたいに言われますけども、TOHOシネマズを年間にご利用されるのは4000万人なんです。その内の40%がレディースの方及びシニアの方。1600万人の方が、実は1000円でご覧になっているわけですよ。プラス、レイトショーが大体9%で、もう半分が1200円以下ですよ。そういう現状がある時に、映画料金が1800円と言われてしまうと、ちょっとそれは代表価格なのかなというのは、非常に大きな疑問があります。

 実際にその平均単価は3D入れても1300円前後かな、料金は各興行会社が独自判断されることですが、映画人口を増やす、あるいは増えない、その阻害要因として、いろんな作品の問題、サービスの問題もあるでしょうけど、もしかしたら1800円というのが、映画館はなんとなく高いという、高価な娯楽だという印象を形成しているのかなという反省があります。お客様はなるべく安い料金でご覧になればそれに越したことはないので、なんとかその方向の実現に向けて一歩でも前進したいなと今模索している最中です。
 作品によって値段が変わるとなると、製作費が10億円なら1500円で、半分の5億円だから1000円というのはこれ難しいですね。均一というのが正しいのではないでしょうか。


大高 いま上映している東映配給の「大鹿村騒動記」が1000円、その前の「デンデラ」も1000円で上映していますので、作品によってはというケースもありますね。


佐野 製作費に関係なく値段が一緒という不条理なこの世界が好きです。製作費200億円の洋画もそうでない映画も同じ値段で見られますからね。是非洋画を見て下さい。



―3Dメガネはもっと軽く、吹き替え版だけに

質問
 3Dメガネについて、もっと軽いメガネで飛び出してくる方がいいと思います。もう一つ、3Dは観難いので日本語版だけでいいのではないか、2Dの方に両方やってもらいたい。


中川 メガネにはいろんなバージョンがあるので、軽いメガネを採用している劇場を選ばれた方がいいかなという気がします。飛び出すことに関しては、気分が悪くなったアニメの話もありましたけど、3Dにも基準がありまして、あまり飛び出すと気分を害されるケースもありますので、基本的に今の3Dは奥行きで表現の水準を高めていると思います。飛び出して驚かせるような方向には進んでいない。期待されない方がいいと思います。


佐野 今度の「スパイダーマン」最新作は凄く飛び出してきますよ。ご覧になって下さい(笑)。でも、作品によるのできちんと3Dで製作されたものを選んで下さい。アメリカでも3Dの将来を心配する声があります。



―3Dの問題、アメリカ映画の今後

大高 今日は3Dの話もしようと思ったのですが、本当に3Dの問題というのは、果たしてこの方向でアメリカ映画は行くのかというのもあります。それでは時間ですので、みなさん最後に一言ずつお願いします。


中川 短い予告編を作って頂いて、劇場によく来る映画ファンにいろんな映画を知って頂いて、鑑賞頻度をもう少しあげて欲しい。そういう戦略を興行会社としてもとっていきたいと思っています。


豊島 とにかくコアユーザーの1500万人の方へ、我々配給会社と興行会社さんと一緒に、情報が届く密度というのが本当にどんどん洋画に関しては薄くなっていっているなと非常に感じています。そういった意味で、コア層の方に情報を届けるかという事を一緒に、より真剣にこれから取り組んで洋画ファンの拡大に努めていきたいなと節に願っております。


佐野 業界の方以外でここにいらしている方って本当に映画を愛している方だと思うんですよね。映画って人生を変えることがあるし、それを経験している方々だと思いますので、是非映画をどんどん勧めて下さい。映画というのは芸術でもあるし、人生の指針にもなるし、それを友だちとかと暗い空間で共有するのは素晴らしい体験です。そんな映画の良さを知らない人がまだたくさんいるので、宜しくお願いします。


大高 今日はこういうテーマで結論を出すということではないので、皆さんのいろんな考えがあって、現状がおわかりになったということで、現場の方々も引き続き日本映画界のために考えて行ってもらいたいと思います。今日は本当にありがとうございました。(了)

※7月29日(金)、東商ホールにて。



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