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3年ぶりにステージで“拓郎節”が復活!!

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3年ぶりにステージで“拓郎節”が復活!!

2012年10月26日

 “フォークの神様”の異名をもつ吉田拓郎が3年ぶりにステージに復活した。

 驚いたのはコンサート当日の10月22日。“ナマ拓郎”を観たさに、東京・有楽町の東京国際フォーラムのあるJR有楽町駅周辺では「チケットを譲って下さい」と手書きで記した紙を持った中年族があちらこちらにいたことだ。ジャニーズのコンサートとかならよく見る光景なのだが…実に異様な雰囲気を醸し出していた。

 思い返せば、拓郎が“最後の全国ツアー”と宣言して全国コンサート・ツアーを始めたのは3年前の09年6月だった。丁度、押尾学や酒井法子の覚醒剤騒動が勃発した時のこと。ところがコンサートをスタートした直後の7月8日、拓郎はグランキューブ大阪で予定していた大阪公演を体調不良で突然に中止してしまった。その後の検査で、「風邪および体調不良を契機に慢性気管支炎が急性増悪したため約2週間の自宅療養を要する」と診断された。その結果、神戸と広島、福岡公演も中止した。さらに、その後も一向に体調が上向かなかったことから7月25日に静岡・つま恋エキジビションホールで予定していた公演と、“全国ツアーのファイナル公演”となっていた8月3日の東京・NHKホールまでも中止した。結局、拓郎の宣言した“ラスト全国ツアー”は中途半端な形の尻切れトンボ状態に終わってしまった。

 当時のことを振り返り、拓郎は「とにかく、コンサートをやりたくなくなった。やりたくないと思ったらどうにもならなかった」。冷静に考えたら、実にワガママな話である。が、拓郎にとっては理屈ではないのかもしれないし、それが気分屋の拓郎らしい行動なのかもしれない。

 それから3年。その拓郎が元気になってステージに戻ってきた。

 しかも、その復活は当時、宣言した通り全国ツアーではなく都内近郊だけの公演だった。前述した通り22日の東京国際フォーラム・ホールAを皮切りに、昨日25日の埼玉の大宮ソニックホール、来週の29日の神奈川・横浜のパシフィコ横浜、そしてラストは前回中止したリベンジなのだろうか東京・渋谷のNHKホール。とにかく、コンサートは「吉田拓郎LIVE2010」とタイトルされてはいたものの僅か4公演だけ。拓郎ファンにとっては「せっかく元気になったのに…」と、もったいない気もしただろう。

 で、初日の東京国際フォーラムでのコンサート。

 会場は「拓郎待ってました」のファン5000人で熱気でムンムンとなった。会場を見渡すと50~60代が圧倒的。若い人を探すのが大変なほど。それも男性が7割近かった。これこそが拓郎ファンなのだろうが、若いファンが少ないと言うのは辛い感じもしないわけではない。もっとも、今や日本は高齢化社会。65歳以上が3000万人を突破しているし、50代以上となると5500万人を突破する…ある意味で国民の半数近くが拓郎で育ってきた世代と言うことになる。ステージで拓郎は「若い人間とは分かり合えない」なんて言っていたから、現在の立ち位置で十分と言うことなのだろう。

 いずれにしてもコンサートは始まる前から、これまた異様な雰囲気だった。「タクロー!!」「タクロー!!」。会場内は男の叫び声ばかり響いていた。

 ギター1本を引き下げてステージに登場してきた拓郎は、ギターをチューニングしているかのような雰囲気で突然に口ずさみ始めたのが映画「エマニエル夫人」のテーマ曲だった。フォークシンガーらしい拓郎の即興演奏だったのかもしれないが、要はエマニエル夫人を演じて一世を風靡したオランダの女優シルビア・クリステルさんが(享年60歳)先週末に亡くなったことから拓郎なりに偲んだのだ。拓郎は「僕らにとってエマニエル夫人は青春だった」とポロリ。

 その後、予定のオープニングとなった。その1曲目は弾き語りで「ロンリー・ストリート・カフェ」。ナマの拓郎節に会場には涙する男性ファンもいた。そして続く「落陽」では会場は一気にボルテージが上がった。そして「こうき心」と続いた。

 3年ぶりのステージに当然、会場に集まったファンも「大丈夫だろうか」とドキドキしていただろう。しかし、拓郎は元気いっぱいで思った以上にやる気十分だった。拓郎節も健在で声も張りがあって見応えは十分だった。拓郎は「僕は勝手に歌っていますから、みんなはご自由に歓談していてください」とジョークまで飛び出すほどのノリだった。

 全体的にはMCも少なく「虹の魚」や「流星」「全部だきしめて」、それに「春だったね」「外は白い雪の夜」などアンコールを含め約2時間に亘って全22曲を歌い上げた。

 また、最近の生活について語り出した拓郎は毎朝、NHK朝の連続テレビ小説を観るのが楽しみになっていることを吐露していた。現在は「純と愛」にハマっているそうで「ドラマを観ながら、うなづいたり涙したり…いけないですね。ヒロインの子(夏菜)も好感が持てる」。このドラマには奥さんの森下愛子も出演している。何気ない日常話だったが会場を和ませた。

(渡邉裕二)

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