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危機に瀕する音楽産業

2012年08月29日
 ほんの2~3年前は、音楽産業の大きなビジネスになる…と言われた「デジタル音楽配信」が危機的な状況になっている。「着メロ」「着うた」「着うたフル」…と、デジタル音楽配信は急成長し、99年以来、年々減少し続けるCDなどのパッケージメディアを補完するものになる――と期待されていたのだが、それも雲行きが怪しくなってきた。

 一般社団法人日本レコード協会(RIAJ)は先ごろ、2012年第2四半期(4~6月)の有料デジタル音楽配信の売上実績を発表した。それによると数量では6715万ダウンロードとなり、前年同期比で71%強と大幅な減少となった。その結果、金額では131億7300万円となり前年同期を29%強も下回る結果となった。

 内訳を見ると、インターネットでのダウンロードは数量で1740万ダウンロードとなり、前年同期を20%強も上回り、金額でも27%強増収の39億5800万円となったものの、携帯電話などのモバイルでのダウンロード数が前年同期比で62%の4916万ダウンロードとなり、金額では前年同期比58%の88億1500万円と半減近くにまで落ち込んでしまった。

 これは、スマホの普及などもあってモバイルでのダウンロード、売上げのダウンは大きく落ち込むことは十分に予想は出来ていた。結局は、スマホでの音楽デジタル配信の対応が後手になったとも言えるが、携帯電話で音楽を聴くと言う行動も減少したのだろう。

 もちろん、違法配信影響もある。違法配信は年々増加していて、著作権法の改正など法整備されている中でも今や年間で50万ダウンロードに迫る勢いとなっている。若い世代の間では「音楽は自由に取るもの」といった風潮まで出てきている。一方でYouTubeなどの影響もあるのだろ。とにかく、対価を支払って購入するという認識も低下し、ネットで聴いて満足してしまっている傾向さえある。

 もっとも、モバイルの落ち込みは大きいもののインターネットを使ってのダウンロードというと、シングルが大幅に伸びている。数量で前年同期を22%もアップし、金額では41%増の27億円にもなった。当然、アルバムでも数量が18%増となり、金額では6%増の11億円になるなど好調に推移している。因みに、インターネット・ダウンロードの2桁プラスはダウンロード数では6期連続となり、金額では5期連続となっている。

 この結果、2012年上半期(1~6月)の累計実績でも、数量が前年同期比74%の1億4532万ダウンロードとなり、金額では75%の285億8300万円と苦しい状況となっている。もっとも上半期のインターネット・ダウンロード数をみると、シングルの数量が27%増の3億3067万ダウンロードで、金額では45%増収の54億1600万円にも達している。また、アルバムも数量は20%増の2006万ダウンロードとなり、金額では13.5%増の21億6700万円となるなど大幅な伸びとなった。

 こういった流れの中でデジタル音楽配信は今後、大きな見直しが必要となってこることは明らかだ。その一つが「違法ダウンロード」への対応だろう。もはや、キャンペーン展開で精神に訴えるのは限界にきている。ネットの普及で情報への価値観も下がっている。そういった時代に、いかに対処していかなければならないのか?なかなか結論は出にくいが、やはり法整備を進め罰則を厳しくしていく中で取り締まりを強化させていくしか手段はないのかもしれない。音楽がなくなることはないだろうが音楽業界が危機に瀕していることは紛れもない事実だ。

(渡邉裕二)

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