放送界、揺らいだ夏
2011年09月01日
猛暑の今年、放送界にとってどんな夏だったか。東海テレビの不適切テロップ(8月4日)、フジテレビへの韓流偏重抗議デモ(8月21日)、島田紳助電撃引退(8月23日)と相次ぎ、大きく揺らいだ。一方、経費不正使用した社員の処分も続くなどの騒動もあった。
被災地を傷つけた「ぴーかんテレビ」不適切テロップの問題は深刻だ。東海テレビは8月30日午前、約1時間にわたり検証番組を放送するとともに、検証報告書をまとめた。放送は東海エリア3県だけだったが、同社ホームページにアップし、当面、誰もが視聴可能。
問題の直接要因は「社会常識を欠いたテロップ制作者の存在」、「不慣れな新人TK(タイムキーパー)の存在」等を挙げた。その背景として、人出不足の激務という体制の不備やコミュニケーション不足が原因とし、経営方針に問題ありと行き着いた。ただ、景気の冷え込みで広告を主財源とする民放局、とりわけ地方局の環境は厳しく、どこも似たような問題を抱えている。だからと言って仕方なしとしないが、検証番組や報告書を見る限り、テロップ制作者への何故?というやり切れない気持ちが残った。
問題のテロップが出るまで、いくつかの要因が重なった。検証番組ではそれを再現ドラマにして解説していくのだが、そこは見ていてやや緊張感すら感じるよう。
放送前日にAPと新人TKが、視聴者プレゼント当選者の仮テロップ「怪しいお米」等を見てテロップ制作者に不謹慎と指摘。当日の放送前もAPが怒鳴るように指摘するが、テロップ制作者は「はい、はい」と受け流すようだったという。だがテロップ制作者によれば、修正を求められていないという。さらに当日にAPから何か言われた記憶もないと。ただ、APが怒鳴るようにしていたのを一人のスタッフは見ていたという。この大きな食い違いは一体どうしたことか。そして、そもそも不謹慎な仮テロップを作ったのは「ふざけ心で」「思いつきで」あり、何か意図があったわけではないとテロップ制作者は主張し、「まさか放送されるとは思っていなかったので」を繰り返す。
番組に顔は見せず登場したテロップ制作者。質問に応えるその様相に違和感を感じずにはいられない。猛省しているのかが、画面からは伝わってこない。番組内では自ら謝罪の弁を述べることはなかった。真意はどうなのか。
テロップ制作者は外部スタッフの50代男性で、番組スタッフの中では最年長。東海テレビでの仕事は通算30年以上ある。報告書の中で、周囲からは無口でおとなしい、とっつきにくいとの評価が多く、仕事の手が遅く、評価は高くなかった。テロップの修正依頼が殺到すると「テンパる」ことがあると。結局、「社会常識を欠いた」人物として、スタッフ教育の努力不足を課題とした。その男性は所属会社を28日付で懲戒解雇されている。
東海テレビは31日、再発防止策を立案し、実施状況をチェックする「再生委員会」を設置した。音好宏上智大学文学部新聞学科教授を委員長に10名で構成する。
一方、抗議デモは、フジにしてみれば思いも寄らぬ事態だが、放送局以外で次なる企業をターゲットに近くあるとも云われている。紳助引退で放送局は番組対応に追われるが、引退の真相が注目されている。いずれも何故をもってして語られ、激震の夏となった。
(戎 正治)