CS事業 伊藤忠はどう動くのか
2011年03月10日
いよいよ、そう来たか……。KDDIが音楽チャンネル「スペースシャワーTV」(㈱スペースシャワーネットワーク)に資本・業務提携したからではない。伊藤忠商事がその株式を一部売却することを決めたからだ。これまで51%超を保有してきたが、この3月中に14%超をKDDIに売却する。残り保有分は37%になる。手塩を掛けて育ててきたスペース社の「親会社」から「その他の関係会社」という位置付けに変わる。CS放送事業に対し、また一歩、商社の後退だ。
「スペースシャワーTV」の総視聴可能世帯数は857万世帯(10年12月末)と業界トップクラスを誇る。数あるCS放送のうち、視聴世帯800万を超えるのは現在5チャンネル、そのうちの1つであり、CS放送界のシンボル的存在。CS放送を柱とする事業者としては唯一上場もしている。このところの業績低迷ゆえに、今回の経営判断が下されることになったが、伊藤忠の後退は今後の展開を占う意味で大きい。
「商社がCS放送事業から撤退している…」。そう言われて久しいが、96年10月パーフェクTV!(現スカパー!)開局時をピークに、大手商社は目の色を変えこぞって参入した。しかし、拡げた事業から撤退も相次ぎ、淘汰され、今とはすっかり風景が変わってしまった。競争市場にあって、商社に限った話ではないものの、あの躍起ぶりはなんだったのかと思う人は少なくないだろう。
その中、成長持続・拡大したのは住商のJ:COM。CATV最大手として、かつ多数の有力CS放送事業者を傘下に持つ。牽引してきた森泉社長はこの3月退任、一つの時代を終えた感がある。KDDIの資本参加でこの先、どう進むのか。
伊藤忠は、タイタスのCATV事業はじめ、チャンネル事業のカートゥーンネットワーク、Jスポーツからも手を引いた。しかし、衛星事業を勝ち抜き、スカパーJSATとして統合させ、その大株主の1社として名を連ね、プラットフォーム事業会社を担っている。
ただ、この4月には、伊藤忠本体においてCS放送を扱う組織が変わる。「情報通信・メディア部門」を「情報通信部門」に改編。その下部組織は情報産業ビジネス部と通信・モバイルビジネス部となる。放送メディア事業はさらに縮小と見られる。今年、経営体制が変わると囁かれているスカパーJSAT。伊藤忠はどう動くのか、業界で注目されている。