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「第2回アジア著作権会議」2月23~24日開催

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「第2回アジア著作権会議」2月23~24日開催

2011年02月28日

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 文化庁、(社)著作権情報センター共催「第2回アジア著作権会議」が2月23、24日の2日間に渡り、新宿の京王プラザホテルで開催された。同会議は、アジア各国を中心に、著作権に関する動向等について情報・意見交換するもので、海賊版対策事業の一環として昨年より開催されている。

 今回のテーマは「国境を越えた著作権保護のための連携」。インターネットの普及により、ボーダーレスな著作権侵害が世界各国で加速する中、会議に参加した機関の多くがいくつかの共通の悩みを挙げた。特に話題の中心となったのが「ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)」との協力関係だ。不正アップローダー、ダウンローダーの抑止には、ISPの協力が欠かすことができない。

 しかし、ISPにとっては、ユーザーに利用制限を設けることはユーザー離れ、売上減少に繋がりかねず、著作権関連団体への協力は消極的な場合がほとんどだ。各国の著作権関連団体は、法的な強制力をもってISPに働きかけるのか、ISPのメリットも含めた提案を行うべきか、一様に頭を抱えているようだった。日本においては、コンテンツサイドとISPサイドが協議する場(CCIF)が設けられているものの、世界的にはこれは稀なケース。まずは、各国の見本となるような成功例の誕生が待たれる。

 各参加機関による報告・発表は以下の通り。


リチャード・オウエンス氏(世界知的所有権機関〈WIPO〉)の話

 著作権の分野においては、その国々で立法化がバラバラ。その中で、184カ国が加盟するWIPOの役割は、現在の環境に合わせて各法律を類似化させることだ。また、著作権をどうやって守っていくのか、将来のコンテンツの発展に向けて、制作者・著作権者と、利用者のバランスをどのようにとるのかも重要だ。
 国際レコード産業(IFPI)の報告によれば、音楽業界のデジタル回線からの業界収入比率は、03年はごくわずかであったが、09年には27%に及ぶなど、新しい需要が急増している。それに伴い、制作者への支払い形態が変わってきているため、収益配分をどうするべきなのかも問題だ。
 また、デジタル環境が進む中で著作物の不正使用が蔓延している。これを解決するためには、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)が重要な役割を果たす。ISPは著作権を持っていないため、どうやって彼らに収益を配分するのか、各国で共通認識があるのが理想的だ。


大路正浩氏(文化庁)の話

 日本政府としては、デジタル・ネットワーク技術を受け入れ、それがもたらす変容にどう対応するかが重要と考えている。
 「権利制限の一般規定」(日本版フェアユース)の導入については、08年11月より文化庁で慎重に検討してきたが、今年1月に最終報告を取りまとめ、現在立法化作業を進めている、早ければ今国会で提出できる見通しだ。また、昨年10月から議論していた「アクセスコントロール規制」についても、日本版フェアユースと同じ工程で作業を進めており、今国会に提出できるかもしれない。デジタル出版物の利活用については、技術の進歩によって電子市場も急速に伸びる中、出版ビジネスが廃れてしまうという懸念も出ている。その利害の調整をどうしていくのかを考えていく必要がある。


スン・ジエ氏(中国版権保護センター〈CRCC〉)の話

 CRCCは、中国政府により98年9月に設立された、著作権管理の全ての側面をカバーしている唯一の機関。昨年6月からは、映像著作権監視&調査サービス・プラットフォームを稼働させており、権利者に代わって2000以上の侵害ウェブサイトを削除。日本からも通知をもらい、著作権侵害のある8万8502のリンクを削除した。
 また、18団体からなる「中国オンライン・ゲーム著作権連合」をこの1月8日より稼働させている。ただ、中国の4億2000万のネットユーザーの過半がルールを守ろうとしないため、まずは国民意識を高めることが重要だろう。


イ・ヘチョン氏(韓国文化体育観光部)の話

 韓国では、取り締りを強化することにより、ネット侵害は年々減少してきている(違法複製物市場規模:08年9659億ウォン→09年8784億ウォン)。『ウェブハード』サービスを利用しての侵害率が圧倒的に高いため、今後は「登録制」を推進し、登録した事業者だけが利用できるようにする方向性だ。韓国では著作権保護のために、3回以上の警告後、利用者のID停止(最大6ヶ月)及び掲示板停止の是正命令制度(スリーストライク制)を導入しているほか、オンライン上にアップロードされる関連コンテンツを識別して違法如何を検討する違法複製物追跡管理システム『ICOP』も導入している。


シラパット・バジュラパイ氏(タイ知的財産局)の話

 タイでは、2010年の7月1日から9月30日までの期間に、合計で423件の知的財産権侵害事件が発生し、398人が告発された。この期間に押収された知的財産侵害物品は、124万1255個に上った。
 タイでは、現在25の集中管理団体(CMO)があり、そのすべてが楽曲と録音物の使用料を徴収している。その中で、使用料の徴収の重複や、違法な使用料徴収が問題となっている。今は、著作権の集中管理等の修正案が審議されているが、6年間かかってようやく最終審議に入った。
 タイは、東南アジアのクリエイティブ産業の中心地とし、国内のクリエイティブ産業を現在のGDPの12%から、年内に20%に向上させる目的で、クリエイティブ経済政策を昨年8月31日に正式に開始した。


マット・コープ氏(英国知的財産局)の話

 英国は昨年、連立政権(保守党、自民党)が誕生し、政策がどこから出てくるのかわからない状態だが、政府は「成長」というアジェンダを掲げている。その中で、コンテンツを制作した人と、これから作る人のために、著作権をどのように保護するかのバランスが必要だ。特に、「オーファンワークス」(権利者の所在が不明な著作物)のデジタルプロジェクト化について解決策を探っているが難しい。
 英国では現在、違法なファイル共有ソフトを使用している人が700万人前後おり、オンライン上の著作物侵害被害額は年間4億ポンドと推測されている。これらの問題を解決するためには、ISPに、権利侵害している加入者に適切な措置を行うよう義務化しなければいけないが、法律化するにはまだ少し時間がかかりそうだ。


ミシェル・ウッズ氏(米国著作権局)の話

 アメリカでは不正ウェブサイトに対して、既存法で対応することと、新しく立法することの2部立てで対応している。今は、「オンラインにおける権利侵害および偽造防止法(COICA)」を提案中で、下院でも支持を取り付けていることから、ねじれ国会でも法案が通る見通し。
 既存法では、国内に限ったことではあるが、不正のダウンロードのホストとなっているドメインを没収することができる。つい最近も「スーパーボウル」を不正ストリーミングしたサイトがドメインを取り上げられた、「COICA」はさらに先んじていて、ISPを対象に、IPアドレスのブロッキングを命令することができる。


永野行雄氏(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構〈CODA〉)の話

 CODAは02年に設立され、09年に一般社団法人化した。現在28の企業会員、11の団体会員、6の賛助会員が参画している。侵害対策として、米国・欧州・中国など世界7地域で登録されている『CJマーク』事業を行っているほか、各国の関連団体と連携して業務を推進している。
 ネット侵害対策には、国境を越えた協力体制が必要だ。日本を例にとると、個々の企業は外国の侵害に対するアクションを起こす体力のない小さな企業が多いので、CODAが代わりに窓口になる。同じように、各国も窓口となる機関を設け、その機関同士が違法コンテンツの削除要請等の連絡を取り合い、自国で起きた違法案件はその国の機関が対処する、という体制を構築するべきだ。そのためには、政府機関にも協力してもらう必要がある。


レオン・メイシー氏(国際レコード産業連盟〈IFPI〉)の話

 レコード産業の課題としては、海賊版CDなどの物理的な著作権侵害と、インターネット上での違法コピーがある。まず、海賊版CDについて、現在は中国から高品質な音楽CDボックスが世界各地に輸出されている。ネットだけでなく、まだまだ海賊版CDへの対応も必要だ。
 オンライン上での侵害は、P2Pサービス上でダウンロードされた違法楽曲が年間で400億ドルと推定され、ダウンロードされた楽曲の90%を占めると見られている。これは、ユーザーを止めることができる、ISPと協力し合わなければならない。


マイケル・エリス氏(モーション・ピクチャー・アソシエーション〈MPA〉)の話

 MPA加盟社の主要作品の製作費及び広告費の平均費用は、1億6百万ドル。しかし、10本の映画のうち、6本が初期投資を回収できない。また、1つの作品を黒字化するためには6年かかると言われており、劇場で回収できる額はほんのわずか。正規の商品を守らなければならない。
 海賊版の商品は、主に中国やマレーシアで作られており、工場、貿易会社、オンライン小売業者を通じて販売するという、正規の商品と変わらない流通経路で販売されている。その商品は偽造だと知らずに購入している人も多い。ただ、日本と中国の間では、中国の物流センターで検査し、合法の品だけ日本に送るというシステムが構築されており、これは大きな成功だ。
 デジタルコンテンツの盗難は、さらに特定するのが難しくなっている。世界の主要なサイトTOP100のうち、51%が偽造品販売に使われていた可能性があり、それらのサイトと協力していく必要がある。また、最近は主要広告主が海賊版サイトに知らないうちに広告を掲載されている被害も続出している。海賊版サイトが、合法サイトとして見られたいがためにすることだが、発見するのが難しく、見つけたとしてもすぐに広告を変更してしまうため、厄介な問題となっている。
 MPAとCODAは6年前から協力関係にあり、CODAが守備範囲を拡大し、アジアのリーダーシップをとってくれることは良いことだと思う。今後も協力関係を強化したい。



「第2回アジア著作権会議」


今回の参加機関
■国際機関:世界知的所有権機関(WIPO)
■政府:中国版権保護センター、韓国文化体育観光部、タイ知的財産局、英国知的財産局、米国著作権局
■民間団体:一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)、国際レコード産業連盟(IFPI)、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)

主催:文化庁、社団法著作権情報センター

日時・場所
日時:平成23年2月23日(水)~2月24日(木)
場所:京王プラザホテル




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