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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.16

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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.16

2011年02月08日

◎「GANTZ」は、今後どう持ちこたえられるか

 先週末の新作の興行では、「ウォール・ストリート」や「ザ・タウン」などが登場したが、先行する作品を超えられなかった。では、先行作品がいいのかというと、少し微妙な情勢になってきた。2週連続トップの座を射止めた「GANTZ」だったが、本当のところは、どんな興行になっているのか。

 「GANTZ」の2月5、6日の2週目の成績は、動員が30万2201人、興収が3億8618万1100円だった(410スクリーン)。これは、1週目の土日である1月29、30日と比較して、65・1%の興収である。この数字の推移に、私は少し意外な気がした。作品の評価もまずまずであり、口コミで客層はある程度広がるのではないかとの期待を抱いていたからだ。

 原作は人気青年コミックだが、本作の客層は女性が目立つ。これは当然ながら、主演の二宮和也、松山ケンイチ、2人の人気が大きい。とくに、二宮人気は今やジャニーズ事務所に限らず、若手俳優のなかで群を抜く。これは、いい。そういう狙いの作品なのだから。事実、二宮はどこにもいそうな若者像を巧みに演じ、松山もまた心に傷をもつ若者をうまく演じていて、女性たちの満足度は高いだろう。

 しかし、原作ファン、及びそこから派生する男性観客の広がりに、少し欠けている気がする。この傾向は、2週目になってもあまり変わっていない。原作はかなりえぐい内容をもったものだが、その過激描写が映画化では希薄になっているように感じられ(見ていない人にすれば)、それが原作ファンにすれば物足りなく映り、劇場にあまり足を運んでいないとも考えられる。また、女性の側にすれば見事な俳優の布陣が、男性の側にすれば逆の方向になることも当然あるだろう。

 今のところ、最終30億円台の興収は大丈夫だろうが、「SP 野望篇」が36億3千万円の興収を記録したことを考えれば、40億円は超えないと関係者は大満足というわけにはいかないと思う。ちなみに「SP 野望篇」は、2週目は60%台に落ちたにもかかわらず、その後何とか持ちこたえた経緯をもつ。

 「GANTZ」は今後、どのように持ちこたえられるか。この推移は、注目である。前編の早期テレビオンエアで、後編が飛躍的な伸びを見せた「デスノート」のように、関係者の期待は早くも後編に移っているのかどうか。テレビ局の意地のぶつかり合いが今後、いたるところで出てきそうな気もするのである。
                                                      (大高宏雄)



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