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インタビュー:濱名一哉 TBSテレビ 映像事業センター映画事業部長

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インタビュー:濱名一哉 TBSテレビ 映像事業センター映画事業部長

2009年06月23日
新記録達成!総興収220億円超
“量と質”理想的な1年―「おくりびと」快挙
09年は「クローズ~」「ROOKIES」など
新記録達成!総興収220億円超
“量と質”理想的な1年―「おくりびと」快挙
09年は「クローズ~」「ROOKIES」など


 TBSにとって08年度は最高の年となった。なんといっても「おくりびと」。日本アカデミー賞9部門最優秀賞受賞に続き、米アカデミー賞外国語映画賞受賞という日本映画初の快挙を成し遂げ、興収60億円超という予想をはるかに超えた驚異的な成績を収めるとともに、77冠(4月14日現在)の名誉を獲得、社会現象まで巻き起こした。「花より男子ファイナル」は08年実写映画興収№1に輝き、大ヒットドラマの連動に大きな成果を上げた。そしてTBS08年度映画事業は、当初目標を大きく上回り、総興収、利益ともに新記録を達成した。濱名一哉映画事業部長は「量と質を兼ね備えた理想的な1年だった」と話す。
 08年度を振り返るとともに、09年度の展開について濱名部長に話を聞いた―。



街頭テレビ状態で

――あらためまして、「おくりびと」の米アカデミー賞外国語映画賞受賞おめでとうございます。受賞はどちらで聞かれましたか。

濱名 僕はTBSテレビの映画事業部の室内で、部員たちや周辺の部の人たちと一緒にWOWOWの生放送を見てました。それはもう、受賞出来たらいいなとは思ってましたけど、そう上手くいかないだろうとどこかで思ってましたね。アカデミー賞に詳しい方が、司会者がノミネート作品を紹介する時の会場の拍手がけっこう大きいと可能性が高いっていうのを聞いてたんですね。まあ、その直後にすぐ結果はわかるんですけど。それで司会者が「おくりびと」(米題デバーチャーズ)を紹介した時にパラパラ拍手だったので、ああ、やっぱり有力候補のイスラエルの映画「戦場でワルツを」が獲るのかなと。そしたら結果は「おくりびと」でしょ。その瞬間はもう拍手喝采で、映画事業部以外の人たちも大勢駆けつけてきて、そこはもう街頭テレビのような状態でしたよ(笑)。とにかく驚きも含め、嬉しい瞬間でした。

「おくりびと」興収倍増

――「おくりびと」は日・米アカデミー賞受賞前の段階で興収約30億円でした。それだけでも予想外の好成績だったと思うのですが、受賞後さらに30億円を上げ、合計60億円を超えるという驚異的な記録となりました。

濱名 こんなことって、おそらく長い映画の歴史上、洋画も邦画も含めてなかっただろうと思いますね。昨年の9月13日に公開されて、それから25週、26週も経ってから映画ランキング1位になったり、興行も終わりに近付いて興収30億円の成績で収めてこれからDVDを売っていかないといけないなと思っていたところで、受賞記念で劇場館数も200館ぐらいに拡大して、受賞後に、受賞前と同等の30億円の興収を得るんですからね。2回興行したような感じで、こうしたことはあり得ないのではないですかね、本当に驚き以外の何ものでもないですね。
 
――「おくりびと」製作の経緯をあらためてお伺いできますか。

濱名 これはご存知のように主演の本木雅弘さんが15年ぐらい前から企画をあたためていて、セディックインターナショナルの中沢敏明プロデューサーと一緒に準備していたんですね。それで2年ほど前、小山薫堂さん脚本の初稿をTBSに持って来られて検討しました。納棺をされる仕事に注目した映画ということで、1980年の伊丹十三監督作品「お葬式」を連想するわけですが、冠婚葬祭をモチーフに、その発想がまず面白いと思ったんですね。それで、うちのメンバー含め、皆でシナリオを読みまして、そしたら、この感動的な物語に関して、誰もが素晴らしいと異口同音の感想でした。ただ、僕らはビジネスの側面も考えて企画決定を判断しなければならないので、題材の地味さも含めてビジネス的には厳しいのではないかと不安視する意見はもちろんありました。でも、これだけ素晴らしい脚本を見せられた時にやらない手はないなと思いました。難しいかもしれないけど、やる価値があるなということで、誰も反対はしなかったですね。

――それが興行収入だけでなく、日米アカデミー賞はじめ数々の賞を総ナメにして、受賞77冠(4月14日現在)となったのですからスゴイですね。DVDも好調ですし。ちなみにパート2はありますか。

濱名 それはどうでしょうか。主人公の転勤というか、いろんな土地に行って、さまざまな死を見送るというようなストーリーで、発想的になくはないと思いますけど、映画「おくりびと」として完結したからこそ輝くものでしょうし。少なくとも今そんな話はないですね。

利益も新記録22億円超

――08年度を振り返っていただけますか。

濱名 おかげさまで、「おくりびと」のセカンドラン大ヒットや、08年度実写映画の興収トップとなった「花より男子」(興収77億5千万円)などがありまして、08年度の年間総興収は目標の200億円を超えることが出来ました。最終的には220億円の後半が見込まれます。TBSの映画史上の年間興行収入の新記録です。利益も新記録となりました。公開した10作品だけの収支でなく、その前の年度のDVD収入も含みますが、22億円か23億円の見込みです。「世界の中心で、愛をさけぶ」を公開した04年度の利益16億円がTBSのこれまでの最高でしたが、これを上回りました。ですので、08年度は量と質を兼ね備えた、そして名誉まで頂いた、これ以上ない理想的な1年だったと思います。

3大要素念頭に編成

――いずれも好成績でしたね。大きな要因として企画の選定が当たったと言えると思うのですが。

濱名 映画は時代性と普遍性と多様性、この3つの大きな要素が必要だと思うんですね。この要素を満たすことで、作品の質が高く、収入も高く目指せると思うので。TBSのラインナップを組む時には、それをいつも念頭に置いています。08年度のラインナップ10本では、時代性はまさしく「花より男子ファイナル」で、典型的にタイムリーな人気ドラマの映画化だったと思います。普遍性で言えば、「おくりびと」や「私は貝になりたい」など、家族愛や戦争に対する想いだとか、そういういつの時代でも通じるテーマ性が感動を呼んだと思います。多様性というのはジャンルに偏らないということで、可能性を秘めた作品にも挑戦していくことですね。09年はまさしくそういうラインナップが組めた。そこに予想以上の結果がついてきた。ラブストーリーがあったり、単館系の秀作だったり、多様な作品が上手くかみ合って大きな成果を上げたかなと思う。TBSの映画の歴史を振り返れば、少なくとも、ここ7~8年、先に言ったことを大切にしながらいい展開ができたのではないかなと思っています。

――09年度のラインナップは。

濱名 4月11日公開の「クローズZERO2」(小栗旬、山田孝之)から、未発表作品2本含めて、現在のところ7本の予定です。最大の目玉はやはり「ROOKIES 卒業」(5月30日公開/佐藤隆太、市原隼人)ですね。昨年大きな話題となったTBSドラマの映画化ですので、興行収入的にも期待は大きいです。これが昨年興収77億5千万円をあげて大ヒットした「花より男子ファイナル」にどれだけ迫ることが出来るか。そして越えられるか。いま、追いつけ追い越せ的なことでのプロモーションをやっています。
 秋以降の作品もポテンシャルがあります。9月公開予定の「キラー・ヴァージンロード」は、俳優の岸谷五朗さんの映画初監督品。上野樹里さんと木村佳乃さんの競演で、コメディエンヌぶりも見どころです。正月公開予定のアニメ映画「レイトン教授と永遠の歌姫」(声・大泉洋、堀北真希)は、大ヒットしたニンテンドーDS用ゲームソフト「レイトン教授」シリーズの映画化なので、期待できます。
5作品のうち、TBS幹事は前半の3本です。「キラー・ヴァージンロード」はアミューズ、「レイトン教授」は小学館が幹事社です。(写真は「ROOKIES」の1シーン)

※全文は、文化通信ジャーナル5月号に掲載

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