特集:ラジオ最前線 TFM突然のデジタルラジオ休止に業界衝撃
2008年06月18日
帯域めぐりデジタルラジオ陣営分裂状態 ルール違反めぐり対立、舞台はユビキタス特区へ
跡地新放送ではVロー帯で全面対決か
帯域めぐりデジタルラジオ陣営分裂状態に ルール違反めぐり対立、舞台はユビキタス特区へ 跡地新放送ではVロー帯で全面対決か エフエム東京(TFM)は、社団法人デジタルラジオ推進協会(DRP/理事長=亀渕昭信ニッポン放送相談役)の「正会員A」から退会することを3月27日に通告、同31日には同協会が実施する実用化試験放送を休止した。KDDI(au)デジラジ対応携帯電話の発売に合わせ、06年12月から他局に先駆けて“本格的”試験放送を開始し、3セグメント幅の帯域を利用した様々なサービスを率先して行ってきただけに、業界内に衝撃が走った。
この判断は、TFMが主張してきた放送波ダウンロードコンテンツ課金の免許申請に対し、消極姿勢を続けるDRPに痺れを切らしたもので、2011年以降の地上アナログテレビ帯域跡地で本サービスを目指すデジタルラジオは、既にJ‐WAVEが撤退しているため、AM陣営とTFM陣営に分裂した格好となった――。
舞台はユビキタス特区へ TFMはリスナーに向け、放送休止に至った理由を「より新しいサービスを利用者に提供できる環境を整えていただくよう、再三にわたりDRPに要請してきたが、残念ながら叶わず、休止せざるを得ない状況となった」と説明。この“新しいサービス”を実現するため、既存法体系の枠内では実験できない技術、ビジネスモデルを先行的に実施できる「ユビキタス特区」に指定された福岡市に舞台を移し、今年10月より実験という形で改めて放送を開始する予定だ。
特区では、2010年制定予定の通信・放送融合法制「情報通信法」(仮称)を想定した「インフラ」「編成」「コンテンツ」の3層構造で、有料放送と広告放送を実施。懸案だった放送波ダウンロードコンテンツ課金のほか、デジタル放送上にIPパケットを伝送する「IP over デジタル放送(IoDB)」方式を用いた技術の確立や、海外も視野に入れた複数方式に対応する端末の開発・検証などを行う。
ルール違反めぐり対立 こうした動きに対し、AMラジオ各局は「DRP発足時の中心メンバーとしての責任があり、リスナーに対し突然放送を止めるのはいかがなものかと思う」(文化放送三木明博社長)、「DRPはデジタルラジオ実施に向け各社協力してやっていこうという合意の下で組織運営されている。同じ正会員の立場から見て、正に遺憾という言葉に象徴される」(ニッポン放送磯原裕社長)、「(DRPの)総会で08年度の予算・会員社の費用負担を異論なく決めたにも関わらず、その後の退会の届出は受理できるものでない」(TBSラジオ藤井彰取締役デジタル推進局長)と、突然の通告・放送休止に不快感を顕わにした。
さらに、DRPの“3ヵ月ルール”という点でも問題視。これは、退会を表明してから最低3ヵ月間は、放送を含め会員として現状を維持しなければならないというもので、DRPの運営委員会で決定した。だがTFM側は「総務省所管の〝公益法人〟が、退会に関わるような重要ルールを公にしていないことにそもそも問題がある」として無効を主張。DRP側は、総務省との緊密な連絡に加え、弁護士とも相談しており、対立は激しさを増している。
Vロー帯で全面対決か そんな中、アナログ跡地の新放送を検討する総務省の懇談会は、3月28日の会合で「地方向けデジタルラジオ放送」をVHFローバンド(18MHz幅)に割り当てる方針を確認した。AM陣営がVロー全帯域を希望する一方、TFM陣営はこれまでVHFハイバンド全帯域(14・5MHz幅)を希望していたが、この方針により両陣営の全面対決の様相が一層色濃くなってきている。
画像は、TFM後藤亘会長(上)、DRP亀渕昭信理事長(下)
(全文は「月刊文化通信ジャーナル」08年5月に掲載)