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トップインタビュー:佐藤直樹日活(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:佐藤直樹日活(株)代表取締役社長

2008年12月26日





















撮影所事業の再構築が直近する最大のテーマ
“調布撮影所”リニューアルへ、準備段階
経営方針“コンテンツ・ファクトリー”目指す


 今年で日活の代表取締役社長に就いて3周年を迎えた佐藤直樹氏は、就任以来“撮影所の今後”について検討を重ねて来たが“調布をリニューアル”する方向で結論を下した。移転などいくつかのプランの中から決断したという……


7月期決算は減収減益

――今年で代表取締役社長に就任して3年目を迎えたわけですが、「2008年7月期決算」(07年8月~08年7月)はいかがでしたか。昨年5月にお聞きした時には、メディア・スーツとの合併効果もあって「07年7月期」の年間売上高は140億円というお話でした。先きの7月期決算はどうでしたか。

佐藤直樹日活(株)社長 売上は若干の減収、収益ベースでいくと大幅に目標に届かずというのが「7月期決算」の状況です。

――減益になったというのは、やはり映画の製作・配給ということですか。

佐藤 昨年取材していただいた時に申し上げた通り、経営資源をまずプロダクツにシフトしますと話しました。日活が制作プロダクションを担当した「デスノート」(前後編で総興収80億円/'06)や「手紙」(12億円/'06)で一定の成果を収めることができ、これはいけるぞと、ディストリビュートで結果が出せるぞと1年前倒ししてチャレンジしたのです。日活自らが主幹事となって投資・製作・配給し、日活の直営興行チェーンのシネ・リーブル系を中心に公開したのです。映画会社にとって、一番収益が上がるビジネス・モデルはこれです。そして一番危険なビジネス・モデルでもあるのです。「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(08・1)「奈緒子」(08・2)「うた魂♪」(08・4)と3作品を続けて公開し、作品自体は一定の評価をいただきましたが、残念ながら事業的には失敗しました。それで、今期経営方針を変更しました。

――具体的に、どう変えていくのですか。

佐藤 まず、マーケット全体を見渡して思っていることなんですが、当たる映画、当たらない映画が明確に二極化してきていると思うのです。話題性の高い、いわゆる大きいタイトル、大玉は惨敗する可能性が低いと。これは、日活のマーケットではなく、松竹さんと共同配給で「ヤッターマン」(09・3)をやらせていただいたり、東宝さんともお話をさせていただいています。例えば、「デスノート」では、日本テレビさんが幹事で、うちがプロダクツ、ワーナーさんがディストリビュートをして、300スクリーン規模のマーケットで公開したわけですが、この規模はやはり、大手配給会社さんと組んで展開していくことに軸足を置いていきます。作るタイトルにも、外部と組んで大作を製作していくことに、軸足を移していこうと考えています。以前、ABCという分けかたのお話をしました。大玉、中規模、小規模という、このBの中規模がなかなか難しいマーケットになっていると思っているんです。10億狙いにいって7億から5億に止まっている気がするんです。5億狙いにいって3億しか上がらなかった。そういう印象を持っています。その中で、僕がいま考えているのは、プロダクションとしての成果は収めたのだから、これを武器に力のあるディストリビューターや、テレビ局さんと組んで製作し、日活のプロダクションとしての力を示す。ただ、ディストリビューターとしての将来を考え、これに関しては小さいタイトル――バジェット的に1億円前後のタイトルを、日活のディストリビューション、日活のマーケットにしっかりかけて、成功体験を積んでいこうと思っています。この小規模タイトルに関しては、方針変更後、成果が出始めています。例えば洋画では、昨年の東京国際映画祭で東京サクラグランプリを受賞した「迷子の警察音楽隊」(07・12)、「イースタン・プロミス」(08・6)で目標数字を上回る一定の結果を出すことができましたし、邦画では蒼井優さんが主演した「百万円と苦虫女」(08・7)で一定の成果を収めることができました。

6月に経営方針を変更

――「百万円と苦虫女」はどのくらいの興収を上げたんですか。

佐藤 現在2億1千万円上がっていますので、最終興収では2億3千万円を超えてくるでしょう。学校で育てているブタを「食べる」「食べない」と賛否両論を巻き起こした「ブタがいた教室」も公開しています。これも東京国際映画祭で観客賞(コンペティション部門)と審査員賞(トヨタ・アース・グランプリ部門)をダブル受賞して、11月1日から「レッドクリフ パート1」や「ハンサム・スーツ」など大作、強豪の中で地道に稼いでいまして、興収2億円を目指しています。

――健闘していますね。

佐藤 いや、本当にいい映画なんです。主演の妻夫木聡くんも頑張っていますし、若い前田哲監督も立派な映画を作ってくれました。前から申し上げている通り、日活は若く才能のある監督に札を貼って、彼らと一緒に上がっていこうと。いずれはマーケットの状況が変っていくだろうから、次には中規模のサイズの作品に上げられる力をつけていこうと話しています。

――この小規模作品というのは、製作費は1億円ぐらいですか。

佐藤 1億円といっても幅がありますが、2億円はかけずにそのくらいのサイズの作品を作っていこうと思っています。やはり、3億かけるとどうしても10億上げなければという話になってくるんです。P&Aに2億かければ原価は5億円でしょう。

――「うた魂♪」は原価4億を超えているんですね。

佐藤 まあ、4億円ぐらいです。先程も話したのですが、「ネガティブー」「奈緒子」そして「うた魂♪」と3タイトル続けて負けたわけです。さすがに「うた魂♪」の時は、体勢をどう巻き返すのか社員皆で知恵を絞って、数字は多少足りないのですが、最終的にはなんとか持ち上げて、社内的にコミュニケーションを取れるかたちにしたのです。ただ、原価とのバランスで考えると「うた魂♪」の原価が2億であったら勝っているんです。若い才能と組む場合は、コストだったり、マーケティング・プランをきっちりと考えなければなりません。150スクリーンでの公開は、はたして妥当だったのかどうか。例えば、「ブタ」は51館でスタートしましたが、社内ではもっと拡大したいと言ってくるわけです。それを止めたんです。興行会社さんの意向もあり、長く上映していきたいですからね。

――興収5億円のヒットとなった「めがね」(07・9)もそれほど拡大していないですね。

佐藤 していないです。「めがね」は80スクリーンで、あれだけの数字が上がるわけです。そういう意味では、メディア・スーツの部隊と一緒になって、製作や宣伝のノウハウやマーケティングプランの大切さを知ったのです。いまのマーケットは、作品のサイズに合ったブッキング展開やマーケットに合ったマーケティングプランといったものを緻密に考えていかなければダメだったのです。今回、火傷してハッキリわかりました。「あ、こりゃいかん!」と。で、経営方針を変更したわけです。

――具体的にはいつ変更したんですか。

佐藤 「うた魂♪」の後です。明確にアナウンスしたのは、6月の社長ミーティングで「大玉にシフトして、方針変更します」と話してからです。



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