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トップインタビュー:宇野康秀(株)ギャガ・コミュニケーションズ代取社長兼最高執行役員

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トップインタビュー:宇野康秀(株)ギャガ・コミュニケーションズ代取社長兼最高執行役員

2006年12月05日

いま本当にやりたいこと
 “メジャースタジオ”を目指し、“新生ギャガ”再スタート
 「ギャガに100%!」を決意させたものとは一体何か-



 創立20周年を迎えた今年、(株)ギャガ・コミュニケーションズ(以下、GAGA)は、(株)USENの完全子会社となった―。
 1986年の創業から独立系配給会社の雄の一角として日本映画業界を牽引。95年「マスク」(配収18億円)、96年「セブン」(配収26・5億円)、00年「グリーンマイル」(興収65億円)など数々のヒット作を手掛け、01年にはナスダックジャパン市場(現ヘラクレス)に上場、拡大の一途を辿るかに見えたが、次第に買付額の高騰などによる“洋画配給の構造的問題”にぶち当たり、経営が悪化、04年末にUSENの傘下に入り、再建を目指すことに。
 そして、新生GAGAとなった途端、「オペラ座の怪人」(興収42億円)、「Shall we Dance?」(興収25億円)、「私の頭の中の消しゴム」(興収30億円)など、それまでの不振がウソのようにヒット作を連発、05年は年間累計興収165億円をあげ、同社歴代新記録を樹立し、再びテイクオフするかに見えた。だが、前期は「消しゴム」以外、大ヒット作に恵まれず、改めて配給事業の不安定さが露呈、更なる改革、新たな挑戦が求められていた。
 そこで依田会長と宇野社長は上場維持を断念し、「USENの完全子会社となって、より自由度の高い、積極的でダイナミックな経営を続けていこうと決心。アジアNO.1のメジャースタジオを目指し、いろいろなチャレンジをしていきたい」(依田会長)と宣言。
 昨年から着手した自社での企画開発・製作、そして劇場配給、ビデオ発売などあらゆるメディアに一貫してコンテンツを提供できる体制を整え、プロモーションのメディアであるUSENが運営する「GyaO」も活用し、本当の意味で新生GAGAとしてのスタートを切った。「上場会社ではなくなるが、やっていくことは変わらない。変わる事と言えば、私自身のGAGAに対する気持ちが100%になるだけ。大好きな映画を仕事にしてやっていく」と宇野社長は強い決意を表明。「USENグループ連結売上3千億円を目指す規模に成長している」とした。
 今期(平成19年8月期)から新生GAGAとして仕込んだ期待作を次々と公開する。宇野社長はUSENグループとのシナジーをどう発揮しようとしているのか。GAGA、そして映画ビジネスに賭ける思いを聞いた―。



2年間一緒に汗かいて

――一昨年にUSENグループ傘下に収めた時点で、完全子会社化、上場廃止を考えていたのですか。

宇野 一つの方向性としてそれが正しいのだろうというようには考えていました。2年間やってきて、私もこの映画ビジネスに対する思いもより強くなっています。はじめはまったく勝手もわからなかったわけですが、大体そのいろんな事業の勘所は分かってきたかなと、その経営の舵取りは出来るであろうという自信はつかめてきました。
もう一つは、GAGAの社員たちとのことで言いますと、我々が2年前に株式を取得して、組織的な融和が進むのか不安もあったのですが、お陰さまで2年間一緒に汗かいてやってきて、抵抗感もなくグループという意識でやっていけるんではないかということが諸々重なって、このタイミングになっているという形です。

――宇野さんから見たGAGAの問題点はどういったところだったのですか。

宇野 一番大きな問題点は、売上主義というか、作品の本数主義というか、とにかく沢山買ってきて、沢山公開していたところです。そうするとどうしても雑になってしまうこともありますし、何よりも一つ一つの作品に対する愛着もどこまで持っていけていたのだろうというのは、気になっていました。

――買付コストの償却方法の変更、買付作品の厳選、マーケティングの効率化、経費削減、USENグループとのシナジー発揮、そしてDVD/ビデオの自社発売機能の強化といった「改革プラン」は着実に進んでいるのでしょうか。

宇野 おおよそこうしていこうという形は固まってきました。後は実績を積んでいくことです。これからが本当の改革です。


今期の厳選作品に期待

――USEN傘下に入れた初年度は大ヒット作が続きましたが、前期(平成17年9月1日~18年8月31日)は「消しゴム」以降、大ヒットと呼べるものが出ませんでしたね。

宇野 05年公開の「オペラ座の怪人」や「Shall we Dance?」などは、たまたま過去に仕込んで頂いていた中で、非常にいい作品に恵まれました。新しい宣伝、プロモーション体制にもはまってくれましたね。前年度は、いい作品がない中で、かなりプロモーション的には頑張ったんですけど、上手くいかずというところではありました。今期から「地下鉄に乗って」(10月21日より公開中)に始まり、自社製作並びにその厳選作品が出てきますので、かなり期待できるかなと思っています。

――年間の買付総額は決めているのでしょうか。理想とする公開本数はありますか。

宇野 額という面では決めてはいないですね。邦画、洋画どれくらいというのはないんですけど、年間トータルで主要作品として15本くらいをイメージしています。それ以外に単館系のもの、もしくはビデオストレートものはいろいろ取り扱いはするでしょうけど、それもあまり何本買わなければいけないということにならないように心掛けていて、極端なことを言えば今年はいいものがないのでゼロですと、もしくは今年はいいものが沢山あるので、無理しても30本やろうという感じになるかもしれません。安定供給ということは凄く大事ですが、それに縛られて自信のない作品をやって行くことの方がもっと良くないと思っています。どうしても海外マーケットに行くと買わなければいけないという意識が働いて、手ぶらで帰ると悪いんじゃないかという時期が過去にどうもあって、そこをちょっと直している最中です。ですから本数についてはなるべく語らないようにしています。


短期間で結論出さず諦めない

――今年は「ウォーターズ」、「キャッチ ア ウェーブ」(WB配給)、そして自社製作第1弾「初恋」、第2弾「バックダンサーズ!」、第3弾「地下鉄に乗って」と公開しましたが、ここまでの邦画の興行結果をどう見ていますか。

宇野 当然、全く新しくやりはじめたので、いきなり当たってくれることはないのですが、むしろきちんと一つ一つ勉強して、何本か、何年か先にちゃんとしたものが作れればいいなと。逆にそういう心構えがないとなかなか邦画製作に参入するのも、一回やってダメだからやめたっていうのを沢山見てきていますから、そういう姿勢ではないというのが第一にあります。ただ、比較的恵まれているのではないかと思っていまして、「初恋」(興収3億円)に関しては「GAGA FILMS」第1弾でありながらそれなりの数字にもなりましたし、いろんなところからも評価を頂きました。劇場さんからもよく頑張ったねとお声を頂いた部分もあり、デビュー作品としてはそれなりの形にはなったのではないかと思っています。
 「バックダンサーズ!」に関しては正直、期待値に全然届かなかったというのがあって、いろいろ反省すべきところは大きかったのかなと思っておりますが、いい勉強をさせて頂いたと思っています。実際には、なかなか結果を見てから次を作るというわけにはいきません。現実的には並行して作ってきたものがこれから公開されていきますが、「地下鉄に乗って」も第4弾「手紙」も期待できるのかなと思っております。自社邦画製作第一弾グループ、はじめの企画のいくつかの中で、既に期待できるものがあるというのは、恵まれているのではないでしょうか。

↑「地下鉄に乗って」の1シーン(C)2006 METRO ASSOIATES


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