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第44回藤本賞授賞式、『ラストマイル』など関係者喜びの言葉

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第44回藤本賞授賞式、『ラストマイル』など関係者喜びの言葉

2025年05月14日
 「第44回藤本真澄賞」(主催:一般社団法人 映画演劇文化協会)の授賞式が4月16日、パレスホテル東京で開催された。全国の劇場で公開された映画の中から選考の上で、優れたエンターテインメント性を持った作品の製作者を表彰するもの。今回の選考対象期間は24年1月1日~12月31日。

 藤本真澄賞は『ラストマイル』、特別賞は『ルックバック』、奨励賞は『侍タイムスリッパー』の製作者が受賞した。選考委員は中川敬(委員長)、襟川クロ、樋口尚文、品田英雄、金澤誠、市川南の各氏が務めた。樋口氏によると、稀に見る「完全に全会一致」の選考結果だったという。


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前列左より塚原、新井、野木、後列左より安田、押山、大山の各氏


受賞者のコメントは次の通り。


■藤本真澄賞『ラストマイル』

新井順子氏(プロデューサー、TBSスパークル)の話
 人の縁がここまで繋がった。私は(制作会社の)VSOに入り、塚原(あゆ子)監督とは別の会社にいたが、木下プロダクション(現 TBSスパークル)と合併して一緒に仕事をするようになった。そして「Nのために」を作ったところ、野木(亜紀子)さんが『面白かった!』とおっしゃってくださり、TBSの編成の方から「一緒にやりなよ」と言われ、法医学もの(「アンナチュラル」)をやろうということでこの3人が集まった。(「アンナチュラル」「MIU404」から続く)長い道のりだったが、あっという間という感じがある。映画(製作)は初めてだったが、TBSの那須田(淳)さんとC&Iの八尾(香澄)さんに入って頂き、映画を学ばせてもらった。TBSのフラッグシップコンテンツにして頂き、たくさんの方にご尽力頂き59.6億円というびっくりするような数字が出た。ここにいる2人と、今まで私を育ててくれた皆さんのおかげ。

野木亜紀子氏(脚本)の話
 もともと日本映画学校に入り、それから30年は経った。映画を志していたが、紆余曲折を経て、テレビドラマの脚本の仕事を得て今ここにいる。色々な巡りあわせがある中で、もともと志していた映画の場所に戻ってこられて、私にとっても『ラストマイル』は大切な作品になった。今は劇場離れや、(時間が)長いものが見られないとか(言われるが)、私は全然そんなことはないと思っていて、ちゃんと劇場に足を運んでもらえるものが作れると思っている。今後とも頑張りたい。

塚原あゆ子氏(監督、TBSスパークル)の話
 火野正平さんに、現場で「映画なんていっぱいやるもんじゃないぞ」と言われた。なぜですかと聞いたら、「やめられなくなる面白い仕事だから」と言われた。私も火野さんと同じ年までやろうと思いますとお伝えすると、「それはお前が後で考えることで、とにかく真っすぐ進んでいくべきだ」とおっしゃった。火野さんから最後に頂いたお酒を今でも大事にしていて、もうちょっと偉い仕事ができたら乾杯しようと思う。


■藤本真澄賞・特別賞『ルックバック』

押山清高氏(監督、ドリアン)の話
 原作者も“藤本”(タツキ)さんなので不思議なご縁を感じる。私はアニメスタジオの代表をやっており、今の製作委員会方式でのアニメ作りは、制作側からすると構造的なハードルや限界を感じていて、身を削るような思いで出資した。こうやって映画が興行的に成功して本当にラッキーだった。海外も含めると、今興収は44億円ぐらい。なかなか海外の売上は日本に還元されないようで、委員会はたぶん潤っていないが(笑)。クリエイターへの讃歌をテーマに作った作品ということもあり、クリエイターもお客さんから注目を浴び、社会的に評価されるようなことが日本でも活気づけばいいなと思う。

大山良氏(プロデューサー、エイベックス・アニメーションレーベルズ)の話
 先ほど監督が、成功は幸運だったと言っていたが、押山監督は監督、脚本、キャラクターデザインも務められ、58分の映像の中の半分以上をアニメーターとして描かれた。そのクリエイターとしての純度の高さ、真っすぐな決意、クイエイティブの力が、幸運に導いてくれた作品だったと思う。藤本賞・特別賞を頂き、プロデュースチーム一同、光栄に思っている。


■藤本真澄賞・奨励賞『侍タイムスリッパー』

安田淳一氏(監督、未来映画社)の話
 ビジネスマンとしての側面を評価して頂き、この上ない幸せ。(自主映画による東映京都撮影所での撮影に)東映の人も驚いていた。『よう単騎で乗り込んでくるな~』と(笑)。前作『ごはん』で福本清三さんに出てもらい、尊敬している方なので、また出てもらえないかと思い脚本をお渡ししていた。でもお亡くなりになり、もうこれはアカンなと思っていたところ、亡くなった翌年に(京撮の人から)ご連絡頂き、「これを何とかしたろう」と色々な方に集まって頂いた。(公開にあたり)宣伝費が無かったので、『カメラを止めるな!』のように、シネマ・ロサで話題になり、その勢いでシネコンに掛け合っていくしかないと思った。実はシネコンでもお話は頂いていたが、客層が全く違う。あのシネマ・ロサにおられる、インディーズを応援してやろうというお客さんをまず頼っていこうという目論見があった。『ごはん』は1万2千人ぐらいに見てもらったが、30億円を上げるようなインディーズ映画(『カメラを止めるな!』)を見て、反省してもう1回やり直した。


 選考委員の樋口尚文氏は総評の中で、受賞作品は全てに「いい圧を感じた」という。「3作品ともエンタメとして見やすくなっているので皆さん意外に気付かないが、『侍タイムスリッパー』は時代劇でお金がかかり当たりづらい、『ルックバック』はオタク少女2人の感情の機微を描く地味(な題材)、『ラストマイル』も物流の闇に切り込んでいく社会派で、社会派は炎上のように面倒なことが起きる可能性がある。『それちょっとやめておこうよ』といった回路にハマるようなものをそれぞれが含んでいる。これを企画から手を緩めずに実現していくのは、(受賞した)皆さんの人間力、企画力など色々なものの合わせ技が、見る側が思っている以上にある。皆さんが蒔いた種は、映画を志す人に有形無形の励ましやエールになっていると思う。ぜひこれからもチャレンジを続けて頂きたい」と語った。


取材 平池由典

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