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急成長の「サーティースリー」が人員増強中、久保田光治COOに聞く

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急成長の「サーティースリー」が人員増強中、久保田光治COOに聞く

2022年07月11日
サーティースリー久保田COO.jpg
サーティースリー 久保田氏


リピート指名相次ぎ、話題作続々


 エンターテインメント業界に特化した総合マーケティング会社「サーティースリー」が、急速に事業規模を拡大させている。昨年1月4日に会社を立ち上げたばかりだが、社員は当初の10人から現在は20人に倍増。さらに、年内に約30人まで増える予定だ。内装にこだわった麹町のオフィスも、手狭になったため約1年半でやむなく手放し、今年8月に移転することを決めている。給与面の待遇や、職場環境の良さもあり、求人への応募も多く、入社面接は毎週15人ほど行っているが、久保田光治COO(=写真)は「それでもまだ人手不足です」と悩ましい胸の内を吐露する。

 売上は初年度から黒字で着地し、2期目の今年度は前年の1.5倍から2倍を見込む。この業績好調の要因は、手掛ける作品の増加だ。創業当初こそ、久保田氏を中心にクライアントのもとに足を運び、1件ずつ依頼を受ける地道な営業活動を行っていたが、業務内容で信頼を得られたことでリピート指名が相次ぎ、今では多くの会社から声が掛かるようになった。実写映画とはノウハウが異なるアニメに強いことも特長で、これまでにPRを担当した作品は『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』、『特『刀剣乱舞-花丸-』~雪月華~』、劇場版『からかい上手の高木さん』など錚々たるタイトルが並ぶ。今後も、「チェンソーマン」、『ゆるキャン△』、『BLUE GIANT』など、ヒットが見込まれる劇場版やTVシリーズのアニメが目白押しの状況。3年後の22025年の作品までオファーが入っているという。一方で『モエカレはオレンジ色』、『耳をすませば』のように、実写映画も担当している。やみくもに受けることはせず、「社員のみんなが情熱を注ぎ、やりがいを持って取り組めるか、クライアントの皆様とより良いチーム関係が作れるかなど、様々な事を考えて有り難く作品をお受けしています」(久保田氏)と作品にはこだわりを持って受注しているものの、それでも公開・放送時期が重なってしまい、「本当はお受けしたいのに、泣く泣くお断りする事例が出てきています」という。そのジレンマを解消するため、現在急ピッチで人員の増強を図っている。


サービス領域の柔軟性、社員の熱量など強みに

 まだ業界認知率のさほど高くない新興のサーティースリーにオファーが集まる理由は何なのか。久保田氏は大きな要因の一つとして、「サービス領域の柔軟さ」を挙げる。「PR領域では、宣伝プロデュース、パブリシティ、SNSマーケティングを、一括でも部分的にでもお受けできます。同様に、広告・販促領域でも、オンライン/オフライン問わず、企画性の高いプロモーションで多くの話題を生んでおり、大手広告代理店やクリエイティブエージェンシーからのリプレイス受注も増えています。社内にデザインチームもあります。これらをワンストップで提供できる体制を整えているので、クライアントの皆さんの立場から見ると、まるっと任せることもできるし、必要なパートを託すこともでき、抱えている課題に対して最適なソリューションを提供できるパートナーになってきていると思います」と分析する。

 さらに、スタッフの熱量の高さもポイントのようだ。現社員20人の男女比は4:6で、平均年齢29歳とフレッシュな構成。前述の通り、こだわりを持って作品を受注しており、「やらされ仕事にならない、流れ作業にならないよう組織としてマネージメントしています」(久保田氏)と、若いスタッフたちの意欲を尊重する経営方針を敷く。その結果、各スタッフが作品に愛着や熱意をもって接しており、社内も活気に満ちているという。

 また、スタッフのバックグラウンドの多様性も特徴の一つに挙げられる。半数は映画やアニメ業界の宣伝経験者で、顧客の窓口となるリーダー職などを担当する。一方、もう半数は「ポテンシャル採用」と称し、別業界・別業種から幅広く採用している。例えば、アニメ制作スタジオのアニメーター、アパレルブランドのプレス、ゲームメーカーのマーケティング、旅行代理店の営業など、映画業界や宣伝業務こそ未経験ながら各分野で活躍してきた人材を積極的に取り入れており、「映画業界にはなかった考え方やメディアへのアプローチの切り口を持っており、すごく刺激になっています」という。

 ちなみに、現時点の組織構成は、PR部の宣伝プロデューサーが2人、パブリシティが7人(2チーム体制)、SNSマーケティングが4人。広告・販促部が4人、クリエイティブ部が2人、ブランドマーケティング部が1人という陣容。SNSマーケティングに4人を擁しており、さらに増員してSNS公式アカウント運用への対応にも力を注ぐ。「クライアントの方にお話を聞くと、オールパブリシティが任せられ、なおかつSNSマーケティングを担当できる会社は貴重だそうで、重宝して頂いてます。弊社が強みとするサービス間の横連携を、より機能させていけたらと考えています」(久保田氏)。さらに、パブリシティは間もなくもう1チームを新たに追加する運びだ。

 アニメーションや邦画の宣伝を手掛けることが増え、クリエイターと接することが多くなったことで、久保田氏はある思いを強く持つようになったと明かす。「多くのクリエイターの方々が、命を削り魂を込めて作品を制作されている姿を目の当たりにしてきました。その思いを乗せて、一人でも多くの人に、確実に作品を届けなければと強く思うようになりました。もちろん顧客第一に変わりはないですが、同じぐらいに、僕たちはクリエイターの方々からも指名されるような、信頼される存在になりたいと思っています」。作品はもとより、作り手にも寄り添いたいという姿勢は、その後ろに広がる多くのファンからの支持にも繋がりそうだ。


取材・文 平池由典

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