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シネマート新宿の館内展示やコンセッション展開が話題

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シネマート新宿の館内展示やコンセッション展開が話題

2021年03月18日
装飾が話題「シネマート新宿」の宮森氏.jpg


 シネマート新宿が、こだわりの館内展示やコンセッション(売店)展開で注目を集めている。映画の興行会社では異例の「美術部」を擁し、手作りで映画の世界観を再現。館内は作品愛があふれており、この装飾を見ようと遠方から足を運ぶ熱心な映画ファンも存在するという。エスピーオー コンテンツ事業部 映画事業室の宮森覚太氏(=上写真)に詳細を聞いた――。
(この記事は日刊文化通信速報【映画版】2021年3月11日付で掲載したものです)


 韓国などアジア映画を中心に編成している同館だが、近年はカルト映画の上映も増えている。今年は『ヒッチャー ニューマスター版』や『クラッシュ 4K無修正版』を公開。『アメリカン・サイコ』を含む特集上映「狂人暴走・大激突」も話題となった。いずれも好調に集客しており、新たな看板ジャンルの1つとして定着しつつある。

 きっかけとなった作品は、2018年11月に公開した『恐怖の報酬 オリジナル完全版』だ。同館だけで興収1千万円を超えるヒットとなり、今にいたる礎を築いた。館内展示に本格的に取り組んだのも同作からで、映画をイメージした吊り橋やニトログリセリン、壁面のジャングル装飾などをスタッフが手掛け、配給元が用意した車両のスタンディと共に展示、『恐怖の報酬』の世界を再現したところ、「SNSでざわつくようになったのです」(宮森氏)という。これに感銘を受けた作品の宣伝プロデューサーが、担当スタッフたちを “シネマート新宿美術部” と命名したことで、社内の正式部署ではないものの、「美術部」としての活動が始まった。

 担当するスタッフは3~4人。宮森氏は「美術が得意な人を採用したわけではなく、たまたま器用なスタッフが揃っていました。みんな20代の若手で、ダンボールの工作が得意なタイプ、絵が得意なタイプ、発想力が豊かなタイプなど、それぞれ得意分野があるのです。私がイメージを伝え、彼らがそれを形にするという流れで取り組んでいます」と説明する。材料は100円ショップや東急ハンズなどで購入し、上映中などの手が空いた時間にコツコツと制作する、正真正銘のハンドメイドだ。

 アマチュアの手作りと言っても、その手の込みようは半端ではない。特に宮森氏が “究極” と評価するのは、『続・荒野の用心棒 デジタルリマスター版』(20年1月公開)の上映時に展示した「棺桶」だ。「ベニヤ板を購入し、スタッフがゼロから設計図を書きました。やすりで延々と(形状を)整え、茶色く塗装し、古さを出すためにコーヒー豆の出がらしを使って付着した砂利を再現し、さらに何度も色を重ねて…。こんなものが作れるのかと驚きました」。こういった熱量の高さがファンにも伝わり、新たな展示を披露すると「良い意味で『またシネマート新宿がバカなことをやっている』と喜んでもらえるようになりました」という。

 並行して、コンセッションの展開にも力が入っている。『ザ・バニシング‐消失‐』(19年4月公開)の上映時には、劇中で睡眠薬入りのコーヒーが重要アイテムになることから、売店でウイスキー入りコーヒーを「バニシングコーヒー」として販売。普段、アルコールの販売は比較的ハードルが高いが、この時は300杯が売れる大盛況となり、以降はコンセッションでも次々と斬新なメニューを繰り出している。

 これらの取り組みが実を結び、コロナ下でも爆発的に話題になったのが、20年6月に公開した『アングスト/不安』だ。同作の奇抜なビジュアルをエレベーターホールの壁面全面に張り巡らせ、劇中をイメージした血みどろの殺害現場や風呂桶を展示すると、訪れた客が次々と撮影しSNSに投稿。また、コンセッションでは、主人公と同様に黒手袋でソーセージを手づかみで食べる「不安クフルト(フランクフルト)」を販売すると、500本以上が売れる大好評となった。同作は、緊急事態宣言が明けてから間もない時期にもかかわらず、初日から連日満席を記録。当時はコロナ感染対策のためチケットは隔席で販売していたが、同館だけで1500万円近い興収を上げる大ヒットとなった。「普段は中高年のお客様が中心で、男女比は半々ほどですが、この時は10代の若い女性も非常に多く、初めていらっしゃったという方も目立ちました。シネマート新宿の存在を知ってもらえたのは良かったです」と宮森氏。同館での『アングスト』ムーブメントは映画業界内でも注目され、多くの業界人から「凄いらしいね」と声を掛けられたという。

 これまでに上映したカルト系映画は、キングレコード提供の作品が多く、配給をアンプラグド、コピアポア・フィルムらが手掛けている。いずれも作品への理解が深い会社であり、コアファンへの訴求が確実だ。宮森氏も「熱意と宣伝のうまさを信頼しています」と話す。配給と映画館の双方が全幅の信頼を寄せ合い、良い連携をとれていることも好調の大きな要因のようだ。

 3月12日からは、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・ブルード/怒りのメタファー』と『スキャナーズ』をイベント上映する。4月16日からは『ハンバーガー・ヒル』、告知解禁前ながら6月以降もエッジの効いた作品が揃っている。館内での取り組みの注目度が高くなり、「今はプレッシャーでしかないです(笑)」とのことだが、映画館全体で作品の世界観を楽しめるように努める同館の姿勢は、 “体験” が重視される昨今のエンタメ業界の時流に乗っていると言えそうだ。


『恐怖の報酬』ロビー.jpg
『恐怖の報酬』時のロビー


『続・荒野の用心棒』棺桶.jpg
『続・荒野の用心棒』時の棺桶とマシンガン


『アングスト/不安』壁面.jpg
『アングスト/不安』時の壁面


取材・文 平池由典

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