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期待値高まり急遽拡大公開『哀愁しんでれら』、浅野由香プロデューサーに聞く

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期待値高まり急遽拡大公開『哀愁しんでれら』、浅野由香プロデューサーに聞く

2021年01月29日
『哀愁しんでれら』プロデューサーの浅野由香氏.jpg


 土屋太鳳と田中圭が共演したサスペンス映画『哀愁しんでれら』(配給:クロックワークス)が、2月5日(金)から公開される。配給元は当初100~130館での公開を想定していたが、興行会社からの期待値が高まっており、急遽278館まで増加。公開後は賛否両論を巻き起こすこと必至の刺激的な内容の映画にもかかわらず、メジャー作品と同等の、堂々たる大規模公開に発展している。カルチュア・エンタテインメント(以下、CE)の映像企画部長で同作のプロデューサーである浅野由香氏(=写真)に製作経緯や宣伝展開を聞いた――。


 TSUTAYAの映画企画コンペティション「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM(ツタヤクリエイターズプログラム、以下TCP)」の第2回(16年)でグランプリを獲得し、晴れて映画化が決まった同作だが、コンペの審査段階から評価は真っ二つに割れていた。審査員を務めていた阿部秀司氏が「結末が嫌い」と一刀両断するなど、当初から物議を醸しそうな企画だったが、浅野氏は「賛否が起こるのは、それだけ引っかかる何かがあるということ」とポジティブに捉えていたという。

 作品は、ごく普通の真面目な女性が、不幸のドン底にあった中で王子様と出会い、幸せの絶頂に一転するもの、徐々にその生活に異変が起き、ついには社会を震撼させる凶悪事件を起こしてしまうという物語。『3月のライオン』などの脚本を手掛けてきた渡部亮平氏のオリジナル作品であり、今作で商業映画監督デビューを果たす。

 映画化決定後、大手配給会社が関心を示したが、やはり問題の結末がネックとなった。全国公開するためにはリスクも大きく、配給会社やCE内からもハッピーエンドへ内容変更してはどうかという意見が挙がったものの、浅野Pは「修正することも含め監督と話し合いましたが結末に対する強い意志を尊重し、そこは変えずに、大変だけど一緒に頑張ろうと監督と共に決めました」と振り返る。結局、「クロックワークスの深瀬(和美 宣伝プロデューサー)さんに脚本をご覧頂いたところ、面白い!と気に入って頂き、公開に向けて進めることができました」という。

 浅野Pと渡部監督の、作品の軸を変えずにこだわり抜く姿勢はキャスティングの際にも表れた。主人公の小春役には、当初から土屋太鳳を希望していた。「(狂気の女性に)豹変してしまう前の、小春の意志の強さ、真っすぐさを上手に表現してくださる女優は土屋さん以外にいないと思いました」とその理由を語る。ところが、依頼した当初の土屋の回答は「NO」。本人も、11月に開催された同作のイベントの場で、オファーを3度断ったことを認めた。浅野氏は「普通なら、では次の人に…となりますが、この作品では『そう言わずに』と粘り、マネージャーさんに間に入ってもらい、半年以上はやりとりを続けました」という。この熱心な姿勢が実を結び、今をときめく主演2人の起用が実現した。

 また、主人公2人の子どもで、物語のキーパーソンとなるヒカリ役には、撮影当時9歳だったインスタグラマーのCOCOを抜擢。オーディションでは、ほかに演技上手の子役が多数参加していたが、演技経験ゼロのCOCOを選び、撮影までの2か月間、監督がほぼ毎週演技指導を行った。

 こういった妥協のない取り組みにより、コンペでの受賞から撮影まで3年、公開まで実に4年以上を費やす難産となったが、ついに完成にこぎつけた。関係者・マスコミ試写を始めると、まさに期待通りの反響が寄せられている。「見た人は『言葉が出てこないが、めちゃくちゃよかった』という反応が多く、かなり手応えがあります。一部で嫌悪感を持つ人がいますが、それも想定の範囲内。とにかく主人公が幸せを求めるがゆえに堕ちていく様を観て、そこを面白いと感じるか、嫌いと思うかは分かれるでしょう。映画らしい映画だと思います。ハッピーエンドに変更して大きくやる手もあったと思いますが、この形で粘って良かったです。監督はデビュー作ですが、よくぞここまで頑張ってくれました。たくさんの人の手を借りて、メジャー映画とそん色ないものにしてもらえました」と仕上がりに自信を見せる。

 宣伝展開では、主人公の小春と同様、「幸せになりたい」と願う20~30代の女性をターゲットの中心に据える。衝撃的な内容の映画ではあるが、浅野Pは「エンタメの要素もある分、スッと見てもらえると思います。(小春の人生の乱高下を)ジェットコースターのようなスピード感を意識して描いています」と、間口の広い作品であることを強調する。

 ビジュアルにもこだわり、主人公たちが白目で描かれた劇中の油絵を使用したティザービジュアルを解禁した際は、大きな話題となった。「どんな作品なんだ!?とバズりました。原作の無いオリジナルの映画なので、誰も内容を知らず、『気になる』という人が多かったです」という。出演者への注目度も高く、映画公式ツイッターのフォロワーは1万5千人まで増加している。監督が毎週2回投稿する4コマ漫画も人気だ。

 TSUTAYAの企画コンペ「TCP」発の作品のため、全国各地の同社チェーンの書店、レンタル店でも宣伝を全面バックアップ。大都市の旗艦店の壁面やビジョンのジャックを行う。また、双葉文庫からコラボブック「哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ」(著:秋吉理香子)も発売中だ。1月19日には、イイノホールでキャスト登壇による完成報告会も行い、多くのメディアに取り上げられた。

 前記の通り、公開館数は280館規模に膨れ上がっており、興収の目標も上方修正。「公開館数に見合った興行収入を目指します」(浅野氏)という。


※このインタビューは、文化通信速報【映画版】1月22日付で掲載したものです。

取材・文 平池由典

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