ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給『ゾンビランド:ダブルタップ』が、2020年の正月映画スタートの週とも言える11月22日(金)に公開される。先ごろ初号試写が行われ、文化通信の記者もお呼ばれした。
ゾンビ映画でありながら、ブラックなユーモアあり、青春・友情ありの楽しいロードムービーとして熱狂的なファンを生み出した『ゾンビランド』から10年。とうとう製作された続編はひと足早く全米で公開され、前作を上回るヒットスタート。批評サイト「ロッテントマト」の一般スコアでは90%(10月24日時点)の高評価を獲得し、満を持しての日本上陸となる。
映画の世界も前作から10年後が舞台。いまやすっかり大スターになったウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、アビゲイル・ブレスリン、エマ・ストーン演じる主人公4人は、ゾンビで埋め尽くされた今もたくましく生き抜いていた。
今作でも、皮肉と笑いあふれる会話劇は健在。特に、ゾンビランドの真骨頂である荒くれ者のタラハシー(ウディ)と慎重な性格のコロンバス(ジェシー)のブラックな掛け合いは今回も冴えわたっている。そして、前作で初々しい恋模様が描かれたコロンバス(ジェシー)とウィチタ(エマ)の関係は、ある強烈な女性キャラクターの登場により、再びやきもきさせる展開となる。10年前は可愛らしいツンデレギャルだったウィチタは、よりハスキーボイスで大人の女性に変わっているが、前作以上のツンデレぶりを発揮して男のハートを揺さぶってくること請け合いだ。
驚くのは、10年経っても全く変わらない世界観。当時子役だったアビゲイルが大きくなったぐらいで、ファンが大好きなゾンビランドの世界はそのまま地続き。キャラクターだけでなく、運転を交代しながらワイワイガヤガヤ盛り上がる車中も、オープニングのスロモーションも、まさに“あのゾンランドが帰ってきた!”という演出が満載なのだ。前作でファンの心を掴んだポイントは全部押さえてきた心憎い続編と言えるだろう。
一方で、ゾンビ撃滅シーンの迫力は前作からパワーアップ。特にクライマックスの容赦ない暴れぶりは痛快の一言だ。“前作から世界観を踏襲”と散々言ったものの、前作を観ていなくてもノープロブレム。「アカデミー賞で受賞・ノミネートされてきた名優たちが、楽しく日常生活を送りながらゾンビをド派手にやっつける映画」という認識さえあれば十分だ。ただし、ビル・マーレイが登場するくだりを楽しむためには、やはり前作を復習しておくことをお薦めする。
とにかく、女神がトーチを掲げるコロンビア映画のオープニングロゴからエンドクレジットまで、全編にわたり遊び心が散りばめられており、90数分間を漏れなく楽しめる作品に仕上がっている。
SPE映画マーケティング部の島田いずみマネージャーは「『ゾンビランド』は業界人やライターの方にもファンが多く、この良い熱を一般の人にも伝えていきたいと思います。前作はカルト的な立ち位置でしたが、劇場での公開が終了したあともDVDなどを通してファンが増え続け、ゾンビ映画ファンの中では上位に挙げられる人気作になりました。『ウォーキング・デッド』などがヒットしたことなどにより、10年前よりゾンビ映画が市民権を得ていると感じるので、本作は非常に高いポテンシャルがあると思っています。当時は知名度の低かったキャスト陣は今やすっかり大スターとなり、監督も『ヴェノム』、脚本家も『デッドプール』を手掛ける売れっ子となって本作に戻ってきました。宣伝では、ゾンビ映画なのにこの“超一流”メンバーが勢ぞろいしている点をアピールしていきます。ターゲット層の中心は若い男性。劇中では、映画ファンの心をくすぐる小ネタも満載なので、リピーターの鑑賞も期待できると思います」と話す。
ちなみに、今回は吹替版も制作された。そのこだわりぶりも天晴れで、タラハシー役を小山力也(「ウォーキング・デッド」)、コロンバス役を中村悠一(『新感染 ファイナル・エクスプレス』)、ウィチタ役を本田貴子(『バイオハザード』シリーズ)、リトルロック役を秋山ゆずき(『カメラを止めるな!』出演)が担当するという、ゾンビ一色の声優を配してきている。
(取材・文 平池由典)