(このインタビュー記事は、6月26日発行の文化通信ジャーナル2019年7月号を抜粋したものです)
佐々木興業が東京・池袋に建設中の新シネコン「グランドシネマサンシャイン」が、いよいよ完成間近だ。
池袋は、映画興行において、いま日本で一番ホットなエリアだろう。長らくシネマサンシャイン池袋(佐々木興業)と池袋HUMAXシネマズ(ヒューマックスシネマ)が牽引してきた市場に、シネコンが2つ、今年と来年に相次いでオープンすることになった。
東急不動産が建設する商業施設「キュープラザ池袋」の4階~13階に、佐々木興業が全力を投じた巨艦店が7月19日(金)お目見えする。上映設備はもちろんのこと、あらゆる面で国内最高レベルのシネコンが誕生すると言っても過言ではないだろう。
新館にどのような思いを込めたのか。今後の池袋の市場をどう展望しているのか。佐々木伸一社長(=写真左)、佐々木武彦専務(=写真右)が語る。
一番いいと思うもの集めた
──グランドシネマサンシャインは12スクリーン、2443席の都内最大級であり、シネコンとして前例のない豪華さが早くから評判になっていました。ここまで振り切るとは、池袋が牙城である佐々木興業の意地というか、矜持というか、とにかく驚かされます。
伸一社長 いま我々にできる最高の劇場をご用意しました。このプロジェクトが始まってから、役員で手分けして各国に足を運んで、世界的な評価を得ているシネコンを視察してきました。実際に見て、いま一番いいと思うものを集めたつもりです。常設の映画館として国内最大のスクリーンサイズ(幅25・8m×高さ18・9m)を誇る「IMAXⓇレーザー/GTテクノロジー」を筆頭に、「4DX with ScreenX」、全スクリーンに導入する「RGBレーザープロジェクター」、イマーシブサウンドの「ドルビーアトモス」「DTS・X」など、世界水準の設備を取り揃えました。
武彦専務 椅子にも、こだわっています。「グランドクラス」「プレミアムクラス」「スタンダードクラス」の3グレードを用意するのですが、グランドクラスとプレミアムクラスに採用するプレミアシートは、マレーシアのメーカーの製品です。現地に出向いて、実際に座ってみて、綿の量を増やしたり、縫製を変えたりとカスタマイズしました。
伸一社長 椅子ということでは、最前列でも無理なくご覧になれる作りにしています。最前列にフラットシートを採用し、寝転んで見上げながら映画を楽しめるようにしました。スペースの関係上、フラットシートが入らないシアターには、オットマン(スツール)を付けますので、足を伸ばしてリラックスして鑑賞できます。グランドシネマサンシャインは、すべての座席でご覧になりやすい映画館を目指しました。
──ラージフォーマットやプレミアシートにかかる追加料金は、いくらに設定しましたか。
武彦専務 通常の3Dが+400円で、うちメガネ代が100円。IMAXは2Dが+700円、3Dが+1100円。4DX with ScreenXは+1500円で、4DX単体の作品は+1100円、ほとんどないでしょうがScreenX単体の作品は+600円。当社独自規格のラージフォーマット「ベスティア」は+200円。シートの追加料金は、プレミアムクラスが+1500円、グランドクラスが+3000円です。先述したフラットシートは追加料金がかかりません。
佐々木興業のゲストハウス
──となると、チケットの最高額はIMAX3Dのグランドクラスで、5900円になりますね。
伸一社長 グランドクラスには、それだけの価値があります。電動リクライニングはもちろんのこと、付属のテーブルはボトルクーラーになっていて、ドリンクを冷えた状態に保てます。座面の脇には非接触型の携帯充電器があって、映画鑑賞中に充電もできる。USBの差し込み口もあるなど、何かと便利な機能を備えています。
──グランドシネマサンシャインのコンセプトは、どんなものでしょう。
伸一社長 デザインのコンセプトは「邸宅のシアター」です。自分で言うのは小っ恥ずかしいですが、映画興行に70年携わってきた佐々木興業のゲストハウスにお迎えするという心構えです。「芸術の神は細部に宿る」と言うように、劇場の隅々、細かな部分にまで徹底的にこだわりました。
武彦専務 たとえば、ロビーには大理石を入れたのですが、中国に行って、自分たちの目で見て、買い付けをしました。
伸一社長 お手洗いのサイン一つをとっても、コンセプトに合ったデザインを新たに起こしています。便器にもこだわっていて、最上位機種を入れています。
──フロアにも、面白い趣向を凝らしていると聞きます。
伸一社長 劇場内のさまざまな場所に、映画の要素をちりばめます。モギリを通った後、シアターのある各フロアに上がっていくわけですが、エスカレーターの脇には、名作映画のポスターを並べます。各階の内装はフロアごとにカンヌ、ベネチアなど異なる国際映画祭をイメージしたインテリアで統一します。お手洗いにも、楽しみを用意します。映画鑑賞の前でも後でも気持ちよく過ごせて、映画ファンの方々に喜んでいただけます。
武彦専務 館内インテリアという点で、ぜひ見ていただきたいものが二つあります。一つは、4階エントランスロビー天井から吊るす球体のオブジェです。ここに映像を投射して、万華鏡のような美しさを放ちます。もう一つ、12階ロビーの天井全面をLEDビジョン(幅31m×高さ10m)にして、映像を流します。これらCGによる映像アートは、クリエイティブスタジオのWOWに制作を依頼し、ロビー回りのデジタルサイネージでも流していきます。
伸一社長 この天井部のLEDビジョンは、IMAXの段床の裏側を有効活用したものであり、床に対して水平ではなく、斜めになっています。12階はガラス張りなので、LEDビジョンが池袋の街中を歩いている人たちの視線にちょうど正面から向き合うようになるので、目を引く存在になると思います。
──IMAX専用のショートフィルムを製作し、本編上映前に流すそうですね。
伸一社長 関根光才監督による『TRANSPHERE(トランスフィアー)』という作品です。IMAXレーザー/GTテクノロジーは素晴らしいシアターですが、このサイズで全編を上映できる映画は『ダンケルク』くらいで、現状は大半の映画で数分だけ映像が上下に広がる程度です。せっかくですから全編フルサイズのIMAX映像を見ていただこうと、ショートフィルムの製作を決めました。9分ほどの映像が、ここでしか味わえない視覚×聴覚体験をもたらします。
続きは、文化通信ジャーナル2019年7月号に掲載。