【邦画3社 2017年配給ラインナップインタビュー】東映 木村光仁 映画営業部長 兼 映画興行部長
2017年02月17日
東映は2016年、年間で30本近くを劇場公開。『ONE PIECE FILM GOLD』が興収52億円の大ヒットを記録したものの、実写映画で10億円を突破したのは『さらば あぶない刑事』のみと、総じて苦戦を強いられた。
巻き返しを図るべく、同社は2017年、本数を絞って1本1本を確実に当てていく戦略にシフト。実績十分のシリーズ新作『相棒 劇場版Ⅳ』『探偵はBARにいる3』や、大作時代劇『花戦さ』、ハリウッド超大作『パワーレンジャー』をはじめ、強力な作品のみ15本(1月中旬時点)でラインナップを組んだ。
それらの作品群に加え、東映の今後の配給事業の方向性、劇場営業のあり方について、昨年6月に映画営業部長 兼 映画興行部長に就任した木村光仁氏(=写真)に考えを聞いた――。
流れを良くするのが使命――ディズニーを退社されたあと、昨年6月1日に東映に入社され、配給の改革案を岡田裕介会長、多田憲之社長に提出されたのでしょうか。
木村 僕が配給に対する改革案を出したということではないです。前の会社を辞めると決めて、しばらくどうしようかなと考えている時に会長からお話を頂き、「東映はここがダメで、自分たちでもこうしなきゃならない。今、背水の陣で臨んでいる」と。トップの方がそうお考えになっていた中でこちらにお誘い頂き、「急には変わらないだろうけども、とにかく前向きに一つ一つ取り組んでいけ」という話を頂いています。
今東映が悩んでいることは、僕も外から見ていて感じていた部分もあったし、入社して7ヵ月ほど経ちましたが、これはこういうことなのか、と理解を深めてきました。全部を理解できたとは言いませんし、システムの違いに戸惑う部分もありますが、今このように変えていかなきゃいけないという考えは、会長と社長のお考えとほぼ合致しているのではないかなと思っています。
――具体的には何でしょうか。木村 言えないことも多いですが、壊されるべき慣習と、守るべき伝統を明確にしていかなければならないと思います。東映はその都度時代にマッチしたものを打ちだしてきた会社で、正直、すごく強かった。30年ほど前ですが、僕がこの業界に入った時に、劇場に最も利益をもたらしていたのは、邦画会社なら東映、洋画会社なら東和やヘラルドだという話をよく聞いていました。しかし、強かったがゆえに、東映の中で角質化し、ずっと動かなかった部分があり、それを外の血を入れて、少しでも流れを良くすることが、自分に課せられた使命だと思っています。この4~5年だけ見ても、ビジネスの内容や映画館の生業、興行・配給の世界は大きく変わってきています。配給会社の常として、変わってきていることを後ろから追いかけるより、先を読んで、次に何をやるか。その時には業界から笑われることであっても、何年か経てば正論になっているということを意識しています。
ただ、お客さんからしてみれば、東映のレーベルで映画を見ているわけではなくて、映画一つ一つを見て選んでいるわけじゃないですか。そこに会社の理屈や、制作の事情は関係ない。営業はそれをニュートラルに見るのが仕事で、これは映画として、もっといけると思う、これはいけないと思うという線引きを明確にし、きちっと企画の方にフィードバックする。もちろん宣伝の方もそうですが、そういうことを期待されているんじゃないかなと思います。
その前に、邦画の世界をきちっと覚えなきゃならないということもありますが、それは勉強しながらですね。
続きは、文化通信ジャーナル2017年2月号に掲載。