新進気鋭監督6人が注目の若手女優とタッグを組み生み出したオムニバス映画『TOKYO CITY GIRL』が、9月5日より角川シネマ新宿ほか全国順次公開される。配給元のアークエンタテインメントによると、この企画で短編全12本が製作される予定だという。今回は夏バージョンとして前半6作が公開される。
それぞれの作品に、東京の街の雑踏で懸命に生きる女の子が登場する。そのうちの一本『KOENJI 夢の寿命』に女優・武田梨奈が出演。『KOENJI 夢の寿命』は、タイトルにもあるように「夢」をテーマにした物語。今回のインタビューでは武田が本作に込めた想いと女優としてひとりの女性として抱く夢について聞いた。
■『KOENJI 夢の寿命』概要(監督:山田能龍)
沢山の若者が夢を持ち寄る街―東京―高円寺。咲(武田梨奈)が東京にやってきたのは7年前。現在は高円寺でピンサロ嬢をしながら彼氏(前田公輝)と同棲している。彼氏の祐太は自称パチプロだが正味はパチンコ狂いの無職。祐太と出会ったのは、オーディション会場。2人とも「俳優になる」という夢を東京に持ち込んだが、現在の夢は「まともな生活」。半径300mで完結する毎日。ある日、特にきっかけもなく咲は爆発してしまう。2人が出した答え、2人の未来とは。夢の死亡率を描いた痛切な物語。
リアルな女の子を意識して演じた
――今作で武田さんは役者の夢を諦めきれないピンサロ嬢・咲役を演じられました。武田さんがピンサロ嬢の役を演じられたことに驚きましたが、風俗関係の役は今回が初めてでしょうか。 武田 以前、結果として風俗の職に行きついてしまう役を演じたことがありますが、最初からその仕事をしているというのは初めてです。
監督からはとにかく慣れているようにしてほしいと言われました。私は「ピンサロ」というものを知らなかったので、実際にお店を見せて頂いて、どういう造りになっているのかを事前に調べたりもしました。
――咲役を演じるにあたって、意識したことはありますか。
武田 リアルな女の子を演じるように心がけました。「なんかこういう女の子いるな」「なんかこういうカップルいるな」って思って頂けると嬉しいです。そのリアルさが見どころで、誰もが心をつつかれる様なシーンが沢山あると思います。
「先の見えない不安感」を肌で理解できた
――今作のテーマは夢だと思います。今作の様に、夢を追って単身で上京する若者が多くいます。武田さんは咲の様に、東京で一人暮らしをした経験はありますか。
武田 ずっと実家住まいなのでないんです。でも時には海外や地方ロケに、一人で長期滞留することがあります。海外では英語の単語等を繋ぎ合わせる様にして会話をしています。しかし中には英語が全く分からない方もいます。自分の力不足ですが、自分の表現したいことが思うようにならないと、もどかしさを感じます。
――劇中、咲と咲の彼氏は「仕事」と「一休(居酒屋チェーン)」の往復でしたね。咲はそういった現状に不安感を抱いていました。武田さんの演技に説得力がある様に感じましたが、共感できる部分があったということでしょうか。
武田 私も「家→学校→アクションの稽古場→家」を繰り返す毎日を送っていた時期があります。思い描いていた将来はいつ来るのかと不安でした。
なので咲のオーディションに通い、落ち続けたという設定が自分とリンクしています。私もまったく同じ経験をしてきましたので、もの凄く共感できる部分でした。私は映画に出させて頂けるようになってからより、オーディションに落ち続けていた期間の方が長いんです。
その年数の分だけ咲が感じていた「先の見えない生活をしている不安感」を肌で理解することができました。
ドラマ「3年B組 金八先生」を観て役者を志した
――なるほど。説得力の謎が解けました。オーディションを受け始めたのは何歳からでしょうか。
武田 小学校にあがった頃からです。キラキラしたいとか有名になりたいとかではなく、表現する世界に飛び込みたいという気持ちの方が大きかったことを覚えています。
――やはり、映画のオーディションが主でしたか。
武田 実は「モーニング娘。」さんのオーディションも受けていたりもしていました。加護亜依さん、辻希美さんの時期やハロプロキッズオーディションも受けました。毎月、オーディション雑誌を買ってました。本当に色々受けていました。
でも続けているうちに、お芝居が自分のしたいことだと気づき、そこからは受けるものを絞っていきました。それは10歳頃のことです。
――芝居だと気づいたことには何かきっかけがあったのでしょうか。
武田 ドラマ「3年B組 金八先生」の武田鉄矢さんの演技を見たことですね。
――きっかけはドラマだったのですね。
武田 はい。ドラマよりも映画の方を観ていた子だったんですけどね。ドラマは父に勧められて観るようになりました。
ハリウッドにも進出したい
――09年に公開された『ハイキック・ガール!』が大きな転機だと考えていいのでしょうか。
武田 はい。それまでは先ほども触れたように、「先の見えない不安感」を常に感じていました。『ハイキック・ガール!』で大きな役を頂いてから、役をもらえることが増えました。
それでも、女優さんとしては世間一般ではあまり知られてないことを感じます。バラエティ番組、CMで見ましたと声をかえて下さる人の方が多くて、出演した映画のタイトルを言っても、「知らない」という反応が返ってくることがよくあります。まだまだだと受け止め、映画の方も頑張っていきたいです。
あと、同世代で映画界を盛り上げていきたいとも思います。斉藤工さんが、短編映画を撮った際に、エミー賞にノミネートされたんです。でも、そのことはあまり報道されずに、映画の内容から「斉藤工、壁ドン!」みたいな見出しの記事になったらしいんですね。そういう時に、悔しいなって思います。わたしたちで映画界をもっと盛り上げていきたいです。
――今後どのような役に挑戦していきたいですか。
武田 隅から隅まで、色んな人を演じたいです。色んなジャンルをやっていきたいです。それに加えて、普段、見て下さっている人たちの期待を裏切りたいという気持ちもあります。
アクション女優というイメージが強くあると思いますが、闘う女の子じゃない役にも挑戦していきたいです。以前は認知すらされていなかったので、アクション女優や瓦割りのイメージを持って頂けることも有難いです。
また、「アクションと芝居どちらが好きですか?」とよく聞かれます。私はアクションとお芝居を分けて考えていなく、アクション=芝居、芝居=アクションと考えています。全体の表現を見て頂けると嬉しいです。
――では、作品のジャンルに関しては。
武田 今までは実際の世界に沿った作品が多かったのですが、ファンタジーや映画らしい設定のある作品にも興味があります。最近のハリウッドで言うと、『メイズ・ランナー』の様な映画が楽しそうです。アドベンチャー的な要素があって、若手俳優が一杯出ているサバイバル劇が魅力的です。「無人島で置き去りにされて」くらいの設定ですかね(笑)。日本ではあまり見ないフィクション性の高い映画に興味があります。
――女優として描かれている将来像は。
武田 代わりのきかない女優、海外との架け橋になれるような女優になりたいです。「この役は武田さんにやって欲しい」「武田以外に考えられない」と言われる女優に。
また、現在はミャンマーやタイ、インドネシアなどアジアの作品に呼んで頂くことが多いのですが、どんどんその他の海外にも出ていきたいです。将来的にはハリウッドにも進出していきたいと考えています。
――女優業以外にも夢はありますか。
武田 いつかアクション映画専門の映画館を作りたいです。ロビーにはヌンチャクが置いてあったりして、上映を待っている間にも楽しめるような(笑)。
アトラクションもあって世界中のアクション映画が上映される映画館を作りたいです。
――その様な夢を描かれているとは。映画が本当に好きなんですね。
武田 勿論です(笑)。
――最後に、『TOKYO CITY GIRL』をこれから観る人に対してコメントをお願いします。
武田 女の子が主演の短編で構成されたオムニバス映画です。色んなパターンの東京での過ごし方/悩み方が描かれていますが、必ずどれかは共感できる一本があるはずです。
女性に限らず、男性やシニア層の方、どの世代の方々にも共感でき、身近に感じることのできる要素が含まれています。観た後には、背中を押されるような気持ちになって頂けると思います。是非、『TOKYO CITY GIRL』を観て下さい。
――ありがとうございました。更なるご活躍を期待してます。
『TOKYO CITY GIRL』 http://tokyo-city-girl.com/9/5(土)より角川シネマ新宿ほか全国順次公開。
出演:武田梨奈 青山美郷 田中美晴 三浦 萌 比嘉梨乃 遠谷比芽子 塚地武雅
監督:山田能龍 藤井道人 志真健太郎 原廣利 山田智和 山口健人
制作プロダクション:株式会社モンタージュ、株式会社BABEL LABEL 配給・宣伝:アークエンタテインメント