第27回東京国際映画祭 クロージングセレモニー グランプリは『神様なんかくそくらえ』
2014年11月05日
第27回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが10月31日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、各賞の受賞結果が発表された。コンペティション部門のグランプリは、マンハッタンのストリートを舞台に、若者の生態を生々しく描いた『神様なんかくそくらえ』が獲得。審査委員長のジェームズ・ガン監督からは「画期的で強烈な作品。素晴らしい演技力に満ち、音楽もダイナミックで過激」と絶賛の言葉が並べられた。監督賞も受賞し、2冠の快挙となった。
ジョシュア・サフディ(右)、ベニー・サフディ(左)両監督
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表彰式の壇上に立ったジョジュア・サフディとベニー・サフディの共同監督は「尊敬する日本で賞を頂けて光栄。『ニッポン』という著書を読んでから、この国が大好きになった。コンペに選出されただけで十分だと思っていたが、一方で日本人にうけそうだ、という感覚もあった」(ジョシュア)と自信の受賞であったことを明かした。また、「東京はスピードに溢れている。この体験は次の映画作りに役立つ」(ベニー)とも話し、今後の映画製作にも意欲をのぞかせた。
日本から唯一選出されていた
『紙の月』も最優秀女優賞と観客賞の2つを受賞。主演の宮沢りえは「吉田大八監督の粘り強く厳しい、でも愛のこもった演出で、梅澤梨花という手ごわい役を乗り越えることができた。この賞(女優賞)を半分にできるなら、『最優秀演出賞』として吉田監督にあげたい」とユニークな表現で監督に感謝の意を表した。
もう1本、W受賞を果たしたのがロシア映画の
『草原の実験』。WOWOW視聴者の6人が審査員を務めたWOWOW賞と、最優秀芸術貢献賞を獲得。ほぼ台詞がなく、映像だけで愛と反戦を描く意欲作で、アレクサンドル・コット監督は「映画は映像による芸術だということを証明するためにこの映画を作った」と製作意図を語った。
そのほか、最優秀男優賞を、アルコール依存症の男を描くポーランド映画『マイティ・エンジェル』の
ロベルト・ヴィエンツキヴェチが受賞
。本人は来日できなかったが、監督のヴォイテク・スマルゾフスキが「ロベルトは審査員の皆さんと俳優仲間にも感謝すると思う」と喜びの言葉を語った。また、審査員特別賞は、やることが全て裏目に出てしまう女性教師を描くブルガリア映画
『ザ・レッスン/授業の代償』が獲得。ペタル・ヴァルチャノフ監督は「主演のマルギータ(・ゴルシェバ)がこの映画の全てを表している」と共に登壇した主演女優を称えた。
最優秀女優賞の宮沢りえ
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総評として、ジェームズ・ガン審査委員長は「今年のコンペに流れるテーマは、愛する、そして愛されることの必要性だった。表現は違っていても、人の心や感情は同じ。作品を観たあと、自分自身のことをよく知ることができた」と感想を述べた。
なお、「日本映画スプラッシュ部門」のグランプリは
『百円の恋』が受賞。武正晴監督は「受賞を推進力にして色々なところに広げていきたい」と12月20日からの全国公開へ弾みにする考えを述べた。また、スペシャル・メンションとして
『滝を見にいく』も受賞を果たした。「アジアの未来部門」の作品賞はイラン映画
『ゼロ地帯の子どもたち』。アミールフセイン・アシュガリ監督は「この賞を平和を求める全ての人に捧げたい」とコメント。国際交流基金アジアセンター特別賞はカンボジア映画『遺されたフィルム』の
ソト・クォーリーカー監督。「これでカンボジア、映画業界に認められると思う」と万感の表情で語った。
授賞式の冒頭では、今年新設されたサムライ賞の表彰があり、
北野武監督と
ティム・バートン監督が揃って登壇。北野監督は「1人だと嫌だったけどティム・バートン監督とならいいやと思った」と茶目っ気たっぷりに話して会場の笑いを誘い、バートン監督も「偉大な北野監督と一緒に受賞できるのは名誉なこと」と喜びを分かち合った。
最後には椎名保ディレクター・ジェネラルが舞台に立ち、「オープニングセレモニーで、安倍(晋三)総理に『日本のコンテンツを世界に発信する東京国際映画祭は、海外の映画人、経済人と橋渡しするハブである』と言って頂いた。このメッセージを重く受けとめ、これから1年1年を積み上げていきたい」と締めくくった。
取材・文/構成 平池 由典