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民放テレビ局の首領(ドン)長期政権の傾向に

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民放テレビ局の首領(ドン)長期政権の傾向に

2014年06月30日

 民放テレビキー5社は6月総会を終え、新たな役員体制でスタートした。TBSが4月ひと足早く役員の大異動を行い、テレビ朝日は4月ホールディングス体制として6月社長交代したことが大きなトピックだろう。フジテレビとテレビ東京の2社は昨年社長交代しており、日本テレビ含めた3社は特段の動きではなかった様相だ。とはいえ、フジテレビでは大幅な組織変更も伴い、開局以来最大規模となる1千人の人事異動(発令1040件)を行ったことが目を引いた。

 その一方で、フジ日枝久会長(76歳)の長期政権はなお続き、次いでTBS井上弘会長(74歳)体制も不動な体を成してきた印象を受ける。それを指摘する声は少なくない。両局とも視聴率が低迷しているからだ。とはいえ、長期政権の是非を易く問えるものではない。

 日枝久氏は昭和63年(1988年)6月社長に就任し以来26年間トップとして君臨する(平成13年会長就任)。1982年~1993年で12年連続視聴率3冠、2004年~2010年で7年連続視聴率3冠の実績を成した。その間、企業内クーデターを起こし鹿内一族経営から解き放ち立て直す。さらにフジHD2013年度連結売上高は6400億円規模と断トツで、2位(TBSHD連結売上高3500億円)以下を圧倒するグループ企業に成長拡大させた。民放界をリードする、この偉業ゆえに、長きにわたる社長・会長というトップの座は揺るぎなく、フジのみならず、まさに民放の首領(ドン)だ。

 一方、井上弘氏は平成14年(2002年)6月社長に就任し以来12年間トップの座に就いている(平成21年4月会長就任)。当然ながらTBSにおいて絶対の権力を持ち、石原俊爾社長(平成21年4月就任)とともに統制する。平成24年4月からは民放連会長として手腕を発揮している。

 民放の首領(ドン)と言えば、かつては日本テレビの故・氏家齊一郎氏を指して、そう云われたりした。盟友の渡邉恒雄氏とともに読売新聞グループの代表的な顔であり、日本テレビ代表取締役会長として84歳で平成23年(2011年)3月28日に亡くなるまで、その名は放送業界だけでなく政財界に通じ強大な発言力を持っていた。平成4年(1992年)日本テレビ社長に就任しおよそ19年間トップの座に就く。昭和57年(1982年)代表取締役副社長就任から数えれば、長きにわたり日本テレビで権勢を振るってきた。

 そうした体制が、フジテレビ、TBSに継がれているかのような印象だ。フジHDの株主総会は今年も一部株主から批判を受け、75歳役員定年制導入など提案された。非常勤含む取締役の3分の1近くが75歳以上(常勤取締役では日枝会長1名)のため、老害経営とも指摘された。これに対し、フジは「適性は年齢だけで判断すべきものではない」と反論、結局、株主提案は否決された。

 役員の高齢化を問うものだが、常勤の取締役の年齢が注視されるだろう。各社ホールディングス(HD)の取締役(社外取締役等除く)の今年7月時の平均年齢をみると、日テレHDは平均59.6歳、テレ朝HDは平均59.8歳、TBSHDは平均61.3歳、テレ東HDは平均.61.6歳、フジHDは平均62.4歳。

 この7月に5人が誕生日を迎えるため、6月総会時点はこれより若干下がっているだろう。上場企業の役員平均は60歳前後とのデータもあり、だとすれば民放キー5社は平均的と言っていい。これは、HDの取締役(社外取締役除く)の年齢であって、中核のテレビ放送事業会社とは違う。テレビ放送事業会社の役員は、一部を除いてHDとほぼ同様だが、平均年齢で言えばホールディングスより若干下がるのではないか。

 若返りは経営戦略の一つ。フジテレビは昨年6月亀山千広社長に交代、TBSは今春、現場統括の役員を大刷新した。視聴率巻き返しに躍起だ。ただ、大トップは変わらない。日テレは氏家氏亡き後、折しも2011年度9年ぶり視聴率3冠に復活し、そして今年度(2014年度)は6月29日現在3冠でトップを走る好調ぶりだ。2011年6月社長に就任した大久保好男社長が手腕を発揮する。テレ朝は2009年6月プロパー初の社長として早河洋氏が就任し、以降じわり視聴率を上げ、12年度G・P帯2冠、13年度P帯1冠とトップ争いする局に躍進した。

 故・氏家氏は84歳まで代表取締役会長を務めた。業界内ではフジ日枝会長、TBS井上会長の体制は当面変わらないとの見方が強い。まだまだ続くと見られている。ただ、それが変わる時、大きな節目となることは間違いないだろう。さらに言えば、テレ朝は6月吉田慎一氏に社長交代したが、キーマンである早河洋会長兼CEOの長期政権を既に予想する見方もされている。独裁の長期政権は論外だが、いずれにしてもテレビ各社で首領(ドン)化の傾向に向いているようだ。

●在京民放5社「認定放送持株会社」取締役(非常勤・社外取締役除く)
年齢(2014年7月時)

■日本テレビホールディングス 平均59.6歳(7月時)

代表取締役社長  大久保 好男 (64歳) 昭和25年7月8日生
専務取締役 渡辺 弘 (62歳) 昭和27年7月11日生
専務取締役 小杉 善信 (60歳) 昭和29年2月8日生
常務取締役 丸山 公夫 (60歳) 昭和29年4月7日生
取締役 赤座 弘一 (55歳) 昭和33年11月14日生
取締役 石澤 顕 (57歳) 昭和31年10月14日生


■テレビ朝日ホールディングス
 平均59.8歳(7月時)
代表取締役会長  早河 洋 (70歳) 昭和19年1月1日生
代表取締役社長 吉田 慎一 (64歳) 昭和25年1月9日生
専務取締役 福田 俊男 (67歳) 昭和22年7月1日生
常務取締役 藤ノ木 正哉 (59歳) 昭和30年6月19日生
常務取締役 武田 徹 (63歳) 昭和25年11月29日生
取締役 亀山 慶二 (55歳) 昭和34年1月18日生
取締役 角南 源五 (57歳) 昭和31年10月20日生
取締役 平城 隆司 (53歳) 昭和35年9月28日生
取締役 川口 忠久 (58歳) 昭和30年12月23日生
取締役 篠塚 浩 (52歳) 昭和37年6月15日生


■TBSホールディングス
 平均61.3歳(7月時)
代表取締役会長 井上 弘 (74歳) 昭和15年1月5日生
代表取締役副会長  財津 敬三 (68歳) 昭和20年9月16日生
代表取締役社長 石原 俊爾 (68歳) 昭和20年10月2日生
常務取締役 藤田 徹也 (57歳) 昭和32年6月24日生
取締役 難波 一弘 (56歳) 昭和33年1月1日生
取締役 加藤 嘉一 (58歳) 昭和31年5月28日生
取締役 星野 誠 (59歳) 昭和30年4月27日生
取締役 新田 良一 (57歳) 昭和32年4月5日生
取締役 河合 俊明 (54歳) 昭和34年11月1日生
取締役 武田 信二 (62歳) 昭和27年7月5日生


■テレビ東京ホールディングス
 平均61.6歳(7月時)
代表取締役社長  島田 昌幸 (69歳) 昭和20年1月16日生
取締役副社長 高橋 雄一 (62歳) 昭和26年8月12日生
専務取締役 菊池 悟 (62歳) 昭和27年4月27日生
専務取締役 高島 政明 (62歳) 昭和27年4月29日生
専務取締役 三宅 誠一 (63歳) 昭和26年7月4日生
専務取締役 井澤 昌平 (62歳) 昭和27年1月23日生
常務取締役 田村 明彦 (58歳) 昭和30年8月23日生
常務取締役 宮田 鈴子 (59歳) 昭和30年4月2日生
常務取締役 廣瀬 和彦 (58歳) 昭和31年4月8日生
常務取締役 村田 一郎 (59歳) 昭和30年6月2日生
取締役 永野 健二 (64歳) 昭和24年9月29日生


■フジ・メディア・ホールディングス
 平均62.4歳(7月時)
代表取締役会長  日枝 久 (76歳) 昭和12年12月31日生
取締役副会長 豊田 皓 (68歳) 昭和21年4月28日生
代表取締役社長 太田 英昭 (67歳) 昭和21年12月22日
取締役副社長 嘉納 修治 (64歳) 昭和25年2月22日生
常務取締役 和賀井 隆 (61歳) 昭和27年10月6日生
常務取締役 金光 修 (59歳) 昭和29年10月28日生
取締役 亀山 千広 (58歳) 昭和31年6月15日生
取締役 遠藤 龍之介 (58歳) 昭和31年6月3日生
取締役 大多 亮 (55歳) 昭和33年11月3日生
取締役 稲木 甲二 (58歳) 昭和30年8月1日生

(戎 正治)

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