西麻布に開業「シネマラウンジ100」全貌をレポート
2014年03月10日
「シネマラウンジ100」は、六本木ヒルズから西麻布方面に徒歩5分ほどの交差点に位置しているダイニング・バー「VERANDA」を装飾したもの。外壁には、映画のカチンコの上にマリリン・モンローが腰かけた印象的なロゴが張り出され、映画に関連した店舗であることがすぐに分かる。
外階段を2階に上って店に入り、レジカウンターを抜けると、まずはエントランスにつながる。ここでは6台のモニターが設置され、最新洋画約60本の予告編が放映されている。また、モニター下の壁面には約100作品のチラシがずらりと並び、壮観な眺めが広がっている。対面にはアンジェリーナ・ジョリー、ジュリア・ロバーツ、トム・クルーズといったスター俳優たちのパネルが展示されており、来場者は早速洋画の世界に引き込まれることだろう。
さらに中へ進むとカウンターとメインフロアがあり、奥には120インチの大型スクリーンが設置されている。ここではシネマトゥデイによる最新ハリウッドニュースや、映画コメンテーターLiLiCoのオススメ映画紹介映像が放映され、旬の映画ネタを知ることができるようになっている。
食事メニューは多数あるが、注目は映画とコラボしたスペシャルメニューだ。フード5品、デザート4品、カクテル8品の計17品が用意され、洋画の世界観に触れることができる。例えば『ゴッドファーザー』に登場する「ミートボールとソーセージのトマト煮」(980円)。ドン・コルレオーネが襲撃に合い、ファミリーがキッチンで作戦会議をしている際、ドンの腹心が三男マイケルに「覚えておいて損じゃねえぞ」と教えたのがこの料理だ。ほかにも、『ショコラ』の「ラム肉とチョコレートソース」(1280円)、『ショーシャンクの空に』の「アップルパイ」(600円)、『007』のジェームズ・ボンドが愛するカクテル「ドライ・マティーニ」(900円)などが並ぶ。オープン当日に開催されたマスコミ・関係者向けの内覧会ではこれらのメニューが振る舞われ、記者もフードとデザート全品を堪能。特に『アビエイター』に出てくる「ビーフステーキと豆12粒」(1800円)は絶品だった。
メインフロアの装飾では、120インチのスクリーンのほかに、7台のモニターにも目が行く。1930年代から2010年代にかけての新旧洋画が常時放映されており、向かって左から右のモニターに進むにつれ、放映されている作品の年代が新しくなっていくのがわかる。ちなみに内覧会の際は『ティファニーで朝食を』、『エクソシスト』、『ゴースト/ニューヨークの幻』、『ハリー・ポッター』、『ブラック・スワン』などが流れていた。
映像以外にも様々な工夫が施されている。日刊ゲンダイで映画コラムを連載していたイラストレーター高松啓二氏が全面協力し、ハリウッド俳優たちのペーパークラフト(紙の模型)を掲示。そのメンバーは、レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、マイケル・J・フォックス、オードリー・ヘプバーン、ブルース・リー、マリリン・モンロー、クリント・イーストウッドなど様々で、俳優の特徴や雰囲気を的確に捉えたアートには感心してしまうこと請け合いだ。
さらに、近代映画社が協力し、過去の「SCREEN誌」の表紙パネルや、貴重なハリウッドスターのサインなども展示されている。スティーブ・マックイーンやアラン・ドロンなど錚々たる顔ぶれのサインが並ぶ中、ショーン・コネリーがカタカナで「スクリーン」と書いた色紙には思わずニンマリしてしまう。また、レストルーム(トイレ)にまでひと工夫あるので、ぜひとも利用してもらいたい。
営業期間の100日間には、様々なトークショーが開催されることも目玉の1つ。3月4日に登壇した岩井俊二監督をはじめ、毎週火曜日に映画業界人が登場し、映画の魅力を語る予定だ。さらに隔週で木曜日には、なんでも添削家・赤ペン瀧川先生と、配給会社の宣伝プロデューサーによる対談も行ない、作品の見どころを来場者に伝授する。
なお、営業時間は18時から翌朝4時まで(日曜・祝日は24時まで)。トークイベントの開催日は18時~19時30分まで貸し切りとなり、20時から通常営業する。トークイベントはチケット制(定員60名)のため、気になる登壇者の回は早めの予約(公式HPから)をおすすめするが、当日も店舗で若干数チケット販売するという。
内覧会では、シネブリッジの長谷川学代表取締役が登壇。近年の洋画動員不調を危惧し、この企画を立ち上げたことを説明した上で、「映画界が目指している、年間動員2億人(13年は1億5千万人)は実現不可能な数字ではないと思う。年2回観る人に、『もう1回観にいこう』と思ってもらうことは可能なはず」と話し、この店舗を通じて「特に若者層に映画の素晴らしさを伝えていきたい」と熱く語った。
当日は、LiLiCoとお笑い芸人パンサーによるイベントが行われることもあり、マスコミも多数駆けつけたが、写真撮影を待つ間、報道陣が一様にモニターで放映される洋画に見入っている姿は実に印象的で、改めて映画の魅力を確認した一幕だった。映画人の熱い想いがこもったこの店舗の繁盛を期待したい。 了
「シネマラウンジ100」公式ホームページ(
http://www.cl-100.com/)
取材・文/構成: 平池 由典