オールジャパンの海外展開‐辛抱強い戦い始まる
2014年02月03日
オールジャパンによる日本コンテンツ海外展開の取り組みが始まった。昨年、態勢がようやく整った。ただ、課題は山積しており、険しい道のりが予想されている。
今年2月22日(土)インドネシアに、スカパーJSATによる日本コンテンツ専門のTVチャンネル「WAKUWAKU JAPAN(ワクワク ジャパン)」が開局することになった。民間による日本コンテンツ専門のTVチャンネルとしては、電通と民放局主導で昨年2月25日シンガポールに開局した「Hello! Japan(ハロー!ジャパン)」(運営:JFCTV/本社シンガポール)に次いで2局目だ。いずれも海外で日本の番組の認知拡大とセールス拡大、さらには日本ブランドの市場拡大が目的。まずは、成長を見込むインドネシアとシンガポールでスタートし、今後アジアを中心に各国・地域に拡げる構想にある。当面は採算を度外視しており、腰を据えての取り組みとなりそう。
日本コンテンツの海外市場は厳しくなっている。かつて80年代、90年代、日本の番組がアジアにあふれニーズが高かったが、その後、とくに韓国などが席巻し、日本の番組が入るすき間が減ってきた。そこで、巻き返しを図ろうと、国を挙げてのオールジャパンでの取り組みが始まった。
まずは、経産省・総務省は昨年3月から映像産業振興機構(VIPO)を窓口に、日本のコンテンツの海外発信を総合的に支援する「J‐LOP」(ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金)制度をスタートさせた。これまでに1660件の申請を受け付け、1000件以上の事業が採択されている(14年1月15日現在)。続いて、総務省推進の「放送コンテンツ海外展開促進機構」(BEAJ/読み:ビージェイ)が昨年8月設立した。NHK、民放キー5社、WOWOW、スカパーJSAT、電通、博報堂DYMP、民放連、音事協、芸団協、レコード協会、住商の15社が参画し、昨年9月の設立発表会を機に始動した。そして、経産省主導のもと発足した「クールジャパン機構」(㈱海外需要開拓支援機構)が昨年11月「開所式」を機にスタートした。電通・博報堂グループ含め、民間企業15社が出資(昨年11月時)。優良コンテンツに投資して海外展開を図るもので、今年3月までには数件決める予定。
両機関ともオールジャパンで取り組むと気勢が上がる。それら支援を受けて、2チャンネルがスタート、果たす役割が注目されている。
日本コンテンツの認知拡大とともに、価格の問題、権利処理の問題、海賊版の横行阻止、これら課題を一つ一つクリアしていかなければならない。認知拡大では、インドネシアでは「おしん」だけと云われるほど日本の番組が知られていない。相当に時間を要すると見られる。タイのように、現地メディアが力をつけはじめ、自国の番組で満足する風潮が生まれつつある中、日本の番組の購入意欲をどこまで高められるか。価格の問題はビジネスに直結する。当面、安価で提供しながらゆくゆく値上げに持っていかなければならない。現状、民放キー各局の海外番販の年間売上は10億円前後に過ぎない。権利処理は以前より進展を見せるものの、さらにネット配信とセットにクリアしていく課題を抱えている。こうした取り組みとともに海賊版阻止につながることが期待されている。そしてもっとも肝要なのは、現地に受け入れられる、ヒットする番組の創出だ。
日本の制作力は高いレベルにある。アニメはじめ、ドラマやバラエティも多彩だ。TBSの「SASUKE」は、アジア、欧米各国をはじめ旧共産圏やアフリカ、中東、中南米諸国など世界5大陸に販売され、157の国・地域に達している。今年2月下旬には、「日・ASEAN友好協力40周年記念事業」の認定を受けた国際大会『SASUKE ASEAN OPEN CUP 2014』がマレーシアで開催されるほどになった。これらを機に、将来「SASUKE」の世界大会が実現できればとの夢も描かれている。
BEAJの岡素之代表理事は、成功のカギは「戦略商品の選定」と話し、クージャパン機構の太田伸之社長は「投資した相手の事業が、芽が出て、根付くようになったところで回収したい」と述べる。辛抱強く、現地ニーズを捉えた戦略が求められている。
ちなみに、「WAKUWAKU JAPAN(ワクワク ジャパン)」では、多彩なジャンルの番組を放送するが、ドラマでは「あまちゃん」「孤独のグルメ」「ドクターX」「雲の階段」「Q10」ほか、アニメ・特撮では「ウルトラマンコスモス」「仮面ライダーBLACK」「宇宙兄弟」などが放送される予定だ。
(戎 正治)