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「アジア映画」を見る意味を問い、批評の文脈を刷新する!

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「アジア映画」を見る意味を問い、批評の文脈を刷新する!

2014年01月25日
24616.jpg 東京国際映画祭「アジアの未来」部門のプログラミング・ディレクターを務め、日本映画大学の教授でもある石坂健治氏、仏文学者ながら香港映画に造詣の深い東大教授の野崎歓氏、気鋭の映画・演劇評論家の夏目深雪氏が、編集・執筆に名を連ねるアジア映画ガイドブックの決定版「アジア映画の森 新世紀の映画地図」(作品社刊)に続く、アジア映画本シリーズの第2弾「アジア映画で〈世界〉を見る 越境する映画、グローバルな文化」(同)が、昨年12月21日に発売(税別2800円)された。
作品社 詳細ページはこちら

 グローバリズムの中、越境し変容するアジア各国と日本の映画。本書は「今、アジア映画を見ること」の意味を問いながら、歴史/政治/社会状況を読み解きつつ、映画/映像の可能性を探り、批評の文脈を刷新しようとするもの。地図上の〈世界〉と我々の生きる現実(リアル)な〈世界〉を、14の論考と7つの対談・座談で切り取る、画期的評論集だ。

 執筆者は、市山尚三、宇田川幸洋、金子遊、空族(相澤虎之助・富田克也)、ショーレ・ゴルパリアン、諏訪敦彦、中沢けい、夏目深雪、野崎歓、野中恵子、萩野亮、福間健二、松岡環、森山直人、四方田犬彦、渡邉大輔と、現在日本でアジア映画について独自の見識を持つ強力な布陣となっている。
前回「アジア映画の森~」石坂氏インタビューはこちら

 本書の刊行を記念したイベント「特集 アジア映画で〈世界〉を見る」が、1月26日(日)、2月2日(日)の2日間、東京・渋谷の映画美学校で開催される。重要作品の上映とトーク、講義、シンポジウムによる各プログラムから、アジア映画の境界線を多角的に探っていく。 イベント詳細はこちら

 そこで本コーナーでは今回、映画評論家で日本映画大学学長の佐藤忠男氏と、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターである矢田部吉彦氏による本書の書評を掲載。必読の本書と共に、それぞれの立場から本書をどう読み、アジア及び日本映画、そして〈世界〉をどう捉えているのかがわかる、日本映画界にとっても参考になる貴重な意見が述べられている。




ヨーロッパとアメリカを知れば世界が分かったような気になれる時代はもう終わった
佐藤 忠男(映画評論家)

 アジア諸国の映画について、18人の論者・研究者が、書き、あるいは語った本である。まず題がいい。アジア諸国の映画を見ること、論じることは、単にアジアの国や民族を知るために必要だというだけではない。世界を見るために必要だと言っている。ヨーロッパとアメリカを知れば世界が分かったような気になれる時代はもう終わったのだ。

 いまわれわれは、韓国、中国、香港、台湾などの映画は当然のこととして見ているが、イラン映画も普通に視野のうちに入っているし、そろそろインド映画もそうなりそうである。ちょっと熱心な人ならトルコ映画、マレーシア映画、タイ映画、フィリピン映画などにも注目している。そう、フィリピン映画で思い出したが、中田秀夫監督がまだ東大の学生だった頃、フィリピン映画の研究で卒論を書きたいと言って私を訪ねてきたことがあり、マニラの知人に紹介状を書いたものである。彼はそれでマニラに行って勉強して部厚い論文を書いて送ってくれた。それがいま、彼の作るホラー映画などに影響しているかどうか興味のあるところだ。当時はそれは珍しいことだったが、いまでは、あるいはこれからは当り前のことになるだろう。

 この本は、それらの全地域の映画について新しい動きや注目すべき特色、作品、人材などを教えてくれる。私としては、ベトナム、バングラデシュ、スリランカ、旧ソビエト連邦の中央アジア諸国にも見るべき作品はあると思うし、パキスタン映画に新しい動きはないかと知りたい。もうフィルム作品は作れないらしいモンゴルはどうなっているかも知りたい。いまや日本でも新たなブームになりそうなインド映画も、いわゆるボリウッド作品だけでなくケーララ州のマラヤーラム語映画なども探索してほしい。しかしそれはこの本ではないものねだりというものであって、これだけ広くアジアの各地を映画で展望できるようになったこと自体、驚くべきことであり、素晴らしいことである。

 たとえば野中恵子の「なぜ今、トルコ映画が面白いのか」で、レイス・チェリッキ監督について触れている。アジアフォーカス福岡映画祭で私は彼の作品の上映に大いにつとめた。トルコ語ができない私としては、彼が本国やトルコの専門家たちの間でどう評価されているのか殆ど知らないでやっていたのだが、こういう文章を読むと、わが意を得たりで、自分のひとりよがりでアジア映画を紹介してきたわけではないと嬉しくなる。さまざまな論者がタイのアピチャッポンの作品について、さまざまな角度から触れているのも面白い。それだけアジアは複雑で、知的な探求の対象として面白いのだ。

矢田部氏の書評はこちら


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