韓国ドラマ「馬医」がおもしろい。物語は、17世紀の朝鮮王朝時代、馬の医者から王の主治医にまでなった男、ペク・クァンヒョンの実話をもとにしたドラマだ。NHKBSプレミアムで今年7月から毎週日曜夜9時放送中にある。
ちょうどTBS「半沢直樹」のウラで始まり、あまり話題にのぼらないようだが、ある調査ではBS放送の中で突出した数字を獲得している。一部熱狂的な人気があると言っていい。私は8月の途中から見るようになったが、一度見るとやめられない。複雑な出生の事情を抱え、腕利きの獣医となっても身分は低いままで、やがて医者を目指す。その間、卑劣な差別を受けながらの闘いが描かれる。韓国ドラマ独特のドロドロ的な展開。主人公の成長とそれを支える周囲の人たち―ドラマにありがちなパターンながらも、主人公を見守りたくなるよう思わせる描き方が上手く、視聴者の心を掴む。馬医から医者へという点も目を引く。実話とはいえ、相当なフィクションで脚本・演出の妙があるのだ。
監督は、韓国歴史ドラマの巨匠、イ・ビョンフン監督。「ホジュン」「宮廷女官 チャングムの誓い」に続く3作目の医療ドラマ。残念ながら前2作とも見ていないので、今作を評するには甘いのだが、素直にハマってしまった。韓国ドラマにこれだけハマったのは「朱蒙」以来だ。
ちなみに、「馬医」はNHKBSより先にCS放送「衛星劇場」で今年3月~6月に放送された。韓流ファンはチェック済みだろう。あの「朱蒙」はじめ、韓流の多くはCS放送で先行放送されている。韓流に限らず、人気海外ドラマの多くがCS放送で日本初放送している。それはもう定着しているが、あらためて、専門チャンネルならではのCS放送の存在意義があることを伝えておきたい。
多チャンネル時代、国内外含め「ドラマ」の数は膨大で、どんな番組が放送されているか全てを知る人はいないだろう。もちろん全てを見るのも至難の業。そんな中で良作に巡り合えるかどうか。見る時間がないとよく言われるが、良作ならば視聴者は食いつく。「馬医」は偶然に見たものだった。衛星放送の宣伝担当者の試行錯誤の苦労を思いつつ、裾野を広げるに、番組の認知拡大は大テーマであると、見る側の立場からもそう思った。
社会現象になった「あまちゃん」「半沢直樹」が終了したが、「馬医」のおかげで楽しみが続いている。次回11月17日(日)が20話目。全50話なのでしばらくは楽しめそうだ。
(戎 正治)