今夏連続ドラマが活況。昨日8月11日(日)29・0%獲得した圧巻のTBS「半沢直樹」はじめ、ドラマは話題に欠かないが、視聴率が振るわずとも良質ドラマはあるものだ。と言えば、日テレ「Woman」と思う人は多いだろうが、にわかに上昇しつつあり、各メディアで取り上げられているので、ここでは、夜8時のTBS「名もなき毒」を挙げたい。宮部みゆき原作のドラマだ。
物語はサスペンスを軸に、登場人物たちの日常垣間見る心の「毒」を描く。誰もが持っているであろう、陰の部分をしたたかにチラつかせる。それが何気ない日常にリアル感を持たせている。明る目のトーンも欠かない演出ながら、ゆえに心に潜む悪の怖さを浮き立たせる。それが随所に散りばめられ、秀逸な作品に仕上がっている。主演の小泉孝太郎も好演している。逆玉結婚にコンプレックスを抱きながら、人のよい、純粋な性格の主人公で、小泉ははまり役と言っていい。好感を持って見ている人は少なくないはずだ。
それなのに、である。視聴率が残念だ。初回13・1%と好発進したものの、その後は10%前後の推移で、8月5日(月)の第5話は8・2%と2桁を割ってしまったのだ。これがウケないのはなぜなのか、と考えてしまう。
その一つに、夜8時という時間帯があるのかもしれない。NHK大河ドラマ等を除いて、現在、民放の夜8時ドラマは、このTBSの月曜と、テレビ朝日の木曜、この2枠だけだ。かつてはゴールデン帯の中心枠として、ホームドラマや時代劇、刑事もの、学園ドラマ等がひしめいていた時間帯。しかし、視聴者のライフスタイルの変化を受けて、ドラマの高数字が見込めなくなり、制作費のかかるドラマの夜8時放送が避けられるようになった。
TBSの月8時枠と言えば、あの「水戸黄門」の枠。全1227回(シリーズ全43部)の平均は22・2%という驚異的な数字で、2011年12月の最終回SP13・9%を持って、42年の歴史に幕を閉じた。民放の時代劇衰退の流れもあって、以降、同枠は全クール現代劇に切り替わった。今は「ハンチョウ」と宮部みゆき作品を中心に編成する。
一方、テレビ朝日の木8時枠は、現在放送の「京都地検の女」や、「科捜研の女」「新・おみやさん」などのシリーズもの。
両枠とも、総じて定番の刑事・捜査シリーズものが中心だ。この数年を見ると、1ケタ~12%前後の推移にある。少なくとも8時ドラマでブレイクするような作品は生まれていない。この無難な路線、お決まりのストーリーが数字に影響しているのではないだろうか。
TBSは宮部みゆき原作のミステリーにチャレンジはしているが、この無難な枠というイメージの定着が大きな壁となっているように思う。9時台、10時台は企画次第で数字が化けるが、8時台にはそれがない。NHK大河ドラマは日曜8時にあって、平日8時とは事情が違う。ブレイクするのが難しい平日8時台ドラマ。それだけに、今回の「名もなき毒」が惜しい。少なくとも15%推移の力があったと思うのだが…。
「名もなき毒」は2部構成で、第1部が終了した。きょう8月12日(月)の第6話から第2部がスタートする。無差別連続殺人事件を軸に、怪しい展開が繰り広げられる。是非、一見して欲しい。
(戎 正治)