7月の当コラム(7月26日「ある大手映画会社が、低予算映画を継続して製作か?」)でも取り上げたが、松竹が本格的に低予算映画の製作を開始した。
主目的は若手映画クリエイターの育成だ。
かつて1990年代、東西に映画塾(鎌倉映画塾/京都映画塾)を設け実践型式で映画教育を行ってきた同社だったが、98年にそれぞれ解散、大船撮影所も閉鎖、売却され若手映画スタッフ育成の場が失われていた。
松竹や映画界の将来を見据え、迫本淳一社長が実施に踏み切ったもの。
同社の映像本部に総予算1億円を計上、1作品3000万円(直接製作費2500万円/宣伝費500万円)で年間3本製作する。
第1弾は、AKBの指原莉乃が主演した『劇場版ミューズの鏡~マイプリティドール~』で、9月29日新宿ピカデリー系で公開したが、興行成績は1000万円にもとどかず不発に終わった。
「あくまでスタッフを養成する。新しいクリエイターを育てることであって、この(プロジェクトで)儲けるとは最初から考えていない。儲かればそれに越したことはないが、1億円をドブに捨てる」覚悟だ、と同社の大角正取締役映像副本部長。
10月下旬、関西のアイドル歌手を主人公にした第2弾も撮影し、来年上期公開予定。そして、同プロジェクトのレーベル名称も決定する方針だ。
同社はかつて、〈シネマジャパネスク〉レーベル名称の下、製作費1億円前後で年間7~8本製作、ブロックブッキングで劇場公開し、その後傍系のCSチャンネル「衛星劇場」にソフト提供。ビジネス展開を図ったが、2年余りで頓挫した経緯もあり、同プロジェクトがいかに継続できるのかが、松竹の力量が問われているといえよう。
(取締役会長:指田 洋)