一周忌を過ぎてもハッキリしないのが元X(元X JAPAN)のメンバーだったベーシストのTAIJI(本名=沢田泰司・享年45歳)のサイパンでの自殺事件である。
渡航先のサイパンで逮捕され、取り調べ中に自殺を図り帰らぬ人となったのが昨年7月のことだった。この事件の不可解なことは、これまでもコラムで記してきたので、ここでは割愛するが、何より不可解なのは、邦人が海外(サイパン)で自殺を図って亡くなったのである。本来なら現地の日本総領事館はもちろん、外務省だって状況捜査するのが “常識” だろう。しかも、この自殺には今もってハッキリしないこと、不可解な部分が多いのである。だったら、それなりに真相を調べるものである。しかし、TAIJIの場合は違っていた…。
真相は1年経った現在でも明らかにならず、それどころか(事件そのものが)葬られようとしている。こんなことがあっていいものか? 聞くところによるとサイパンというのは観光スポットでありながら、謎の死が多発している場所らしい。要するに、不可解な死が多い場所らしいのだ。
では、TAIJIの場合は…。まず根本的な問題として、どうやら外務省筋や警察関係の間には、ロック・アーティストに対する偏見があるというのだ。
「タトゥーをしているような奴だから…」。
確かに「日本維新の会」の党首で大阪市長の橋下徹氏でさえ、「タトゥー」に対しては、ファッションであることの前にそういった見方をするのだから仕方がない…のかもしれないが、だからと言って、今回の場合は人一人が亡くなっているのである、だとしたら、そういった個人的な偏見はおかしい。
思い起こせば、09年8月、東京・六本木の六本木ヒルズのレジデンスで元俳優・押尾学と合成麻薬MDMAを服用して怪死した田中香織さんの時もそうだった。当時、銀座の高級クラブ「J」で働いていたことや、全身にタトゥーがあったこと、それにMDMAで亡くなったことから
「自業自得」「仕方がない」
なんていう声もあった。だが、果たしてそうなのか?
理屈はどうであれ、ここで僕が言いたいのはTAIJIの自殺には、謎や不可解な部分が多すぎるということである。
「サイパンでの事件(出来事)」
だからと言ってウヤムヤにしていいはずがない。サイパンだって、イメージ的にマイナスだろうと思いつつ、これも民主党政権になったからなのか? 自民党だったら…なんてフッと思ったりもした。振り返ったら民主党政権になってからというもの外交関係は全くダメ。それこそ米国にはヘロヘロだし、アジア内でも韓国や中国とも衝突続き。これじゃ、サイパンで起こったことなんて手が回らない?
そんな中、先週発売の「週刊文春」もTAIJIの死について疑問を呈する記事を5ページも特集していた。「週刊文春」の記者はサイパンまで取材に行き、当時、TAIJIのマネジメントを行っていた関係者にも直撃取材している。この記事を読んだだけでもTAIJIの死には疑問がつきまとう。
しかも、この取材に応じているのは当時TAIJIの婚約者だった赤塚友美さんである。
赤塚さんは、TAIJIの死について今でも「納得できない」と自ら真相を探っている。まるで、どこかの2時間ドラマのようであるが、だからといって、なかなか出来ることじゃない。が、ここで不可思議なのは、赤塚さんが「疑問」に思って、自らの行動で事件の真相を探っているのに、その行動を止めようとしているのがTAIJIの親であり、妹なのである。
母親は、TAIJIの死に疑問を感じながらも、いつの間にか…。妹は「Sister MAYO」の名前でアーティスト活動しているが、完全に北見氏側に立ち「兄は自殺だった」と言い、今や事件を語ろうとしていない。何で、婚約者が真相を探ろうと一生懸命に動いているのに、肝心な肉親が真相を隠そうとするのか?
「もう終わったこと」「静かにしておいて」。
TAIJIの死は、あらゆるところで不可解なことばかりである。
(渡邉裕二)