「天地明察」は、健闘したと思う。9月15日から17日までの3日間で、全国動員18万2824人・興収2億1460万6800円を記録した。客層は「あなたへ」と似た展開で年配者が多いから、平日の高稼働が見込まれる。最終での一つの興収目安は15億円前後となろうが、観客の評判がいいので、口コミでさらにその上の成績も期待できる。
本作は、派手な“チャンバラ“がない時代劇という点に、製作側の大きなチャレンジ性を見ることができる。ドラマ部分で引っ張っていくこのような作品は、その地味な側面が興行のリスクを負うこともあるわけだが、それを跳ね返すだけの中身の今日性が、あったということだろう。「あなたへ」とはまた別の意味で、本作の製作、興行のありようを、私は高く評価したい。
一方、「バイオハザード」だが、こちらはやはり強かった。シリーズ最新作の「バイオハザードⅤ リトリビューション」が、9月14日から17日までの4日間で82万0085人・12億4881万6000円を記録した。前作「バイオハザードⅳ アフターライフ」は、最終興収が47億円。単純な比較はできないが、初日(金曜日)だけを見れば、新作のほうが上であった。
洋画低迷の折、本当に珍しい大ヒットである。同じ配給会社の作品で比較すると、今のところではあるが、最終興収が31億5千万円前後であった「アメイジング・スパイダーマン」を上回るのはほぼ確実で、40億円突破も視野に入る。となれば、何と「アベンジャーズ」(最終35~38億円推定)をさえ凌ぐということになる。
今後の推移いかんだが、アメコミよりゲームを題材にした米作品のほうが、日本市場では支持を得るという結果が出そうである。アメコミが突き抜けないのはわかるが、ゲーム=「バイオハザード」のほうに支持が傾くというのが、実はよくわからない。面白いという評判も、それほど聞くことはない。
ただ、ゲームから派生した作品ということと、女ヒーローものという点が、他のアメコミの映画化作品とは大きく違っていることは押さえる必要があろう。物語の連続性がアメコミより強く出ているように見えることも、これに加えていい。
要するに、ヒーローの“存在論“などを考えることがあまり押しつけられず、ひたすら描写のアクション性に身を委ねることができるという特質が大きいのではないか。若者たちを中心にした本作の絶えない支持を見て、私はそんな気がしたのである。
(大高宏雄)