正直言って、終わるまで不安でたまらなかった三浦祐太朗主演の舞台「旅立ち~足寄より~」だった。が、何とか無事に終わった。
今回の舞台は、当社の創立60周年記念の事業として企画したものだった。しかし、現役――それも第一線のシンガーとして活躍している松山千春の生き様を描く舞台と言うことで、主演の松山千春役を誰にするかと言うことで頭を悩ませた。千春本人はもちろんだが、ファンも納得するような人物じゃなければならない…。
CDドラマの時は塚本高史、そして映画版では大東俊介(現在は大東駿介)だった。じゃあ、舞台は…。
結局、オーディションで決めることにしたが、そのオーディションに祐太朗君が応募してきてくれたのは、今思えば実にラッキーだった。オーディションには823人が応募してきたが、その中でも彼はダントツだった。
祐太朗君以外も、STVラジオの竹田健二ディレクター役や、千春の父親役…と頭を悩ませた。悩みに悩んで選んだのが風間トオルと杉田二郎だった。特に杉田は、今年がデビュー45周年だが、演技は一度も経験がない。しかも、千春の父親役である。映画版では泉谷しげるが演じただけに、杉田本人も悩みに悩んだようだが、最終的には出演を承諾してくれた。
言うまでもなく、千春役に決まった祐太朗君も演技は初めて。その初挑戦の場が舞台と言うのは英断だったと思う。感心したのは、祐太朗君はオーディション前から原作本を読み尽くし、映画も観て、さらに千春の作品を聴き、最終審査では千春のギター奏法である「2フィンガー」を独自にマスターした。とにかく、努力を積み重ねてきた。それだけではない。千春役に決まってからは、自らの意思で千春の生まれ故郷である足寄を1人旅するなど、今回の舞台に賭けてきた。
これは裏話だが、実は母親の百恵さんは舞台の経験があるが、父親の三浦友和、そして弟の貴大も舞台は1度も経験がない。よくワイドショーなんかは「お父さんからのアドバイスは?」「弟さんからは?」と質問していたが、舞台の経験がないのにアドバイスと言うのは…。無理に両親を出したがる質問には疑問が残った。だったら、彼が独学で学んだ「2フィンガー」奏法をもっと評価して欲しかった。
また、この舞台では祐太朗君のソロ・デビューも決まった。
デビュー曲は、千春のデビュー曲であり、今回の舞台のタイトルにもなっていた「旅立ち」。舞台公演の中日の8月1日に発売された。「旅立ち」は、千春と竹田ディレクターとの出会いの作品ということもあり、千春自身も大切にしてきたもの。また、カップリング曲には、祐太朗のオリジナル曲と、松山千春のカバーをもう1曲、千春の名曲「季節の中へ」を収録している。「季節の中へ」は、千春がデビューして2年目の78年に江崎グリコ「アーモンドチョコレート」のCM曲として使われた作品。同曲は何かとCMが話題になっているが、実は千春の作品で初めてオリコン1位になった曲でもあり、79年の春の「センバツ」の行進曲にもなった作品でもある。
そういったことから、慌ただしい中での舞台になった。
出演者が祐太朗、風間、杉田、それにモーニング娘。の保田圭、逸見太郎、若山騎一郎、城咲仁…なかなかスケジュールが合わず、舞台稽古もドタバタ状態だった。しかも、改めて舞台というのはリスキーなエンターテインメントだということも実感した。今回の舞台は、映像ドラマも制作して映像と舞台をコラボレートさせた異色のものだっただけに、アンファー「スカルプD」のバックアップが得られたのが幸いした。ハッキリ言って、スポンサーがなかったら今回は成立しなかった部分も多分にある。しかも、使ってみて初めて分かったのは、会場の草月ホール。楽屋も狭いし、そもそも舞台公演には全く適していなかった。準備していると次々に問題が…。
いずれにしても、5日間9公演はほぼ満席だった。観た人の評判も上々だった。最終日の公演では、スタンディングオベーションまで…。やっぱり、出演者にとっては、これはたまらない一瞬だろう。
因みに、祐太朗君のCDは、シングルにも関わらずトータルで1000枚を軽く突破してしまった…それも1人1枚である。AKBとは違う!?
(渡邉裕二)