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TBS水曜21時「映画」編成は妥当か?

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TBS水曜21時「映画」編成は妥当か?

2012年07月20日

 TBSの水曜21時「映画」枠で初めて視聴率が2ケタを超えた。7月18日(水)放送の映画「トイ・ストーリー2」10.6%だ。

 18年半ぶりに復活したこの映画枠は、「水曜プレミアシネマ」として今年4月からスタートしている。TBSにとって水曜日の視聴率低迷が課題にあって、底上げを図るべく「映画枠」の編成を決めた。バラエティに嫌気がさした大人の視聴者もターゲットに、安定的な2ケタ視聴率を獲るのが狙いだ。

 ところが、初回のアニメ「ライオン・キング」は5.6%と厳しいスタートとなった。ウラの日テレ「世界仰天ニュース」は17.8%、テレ東2時間ドラマ「水曜ミステリー9 小杉健治サスペンス 偽証法廷」(寺脇康文)は11.0%で、これらにTBSは惨敗した。次の木村拓哉主演「SPACE BATTLESHIP ヤマト」も7.9%と期待に応えられなかった。その後も1ケタが続き、前週の7月11日「トイ・ストーリー」で9.9%を獲得、そして今回の2ケタとなった。スタートから3ヵ月余を経てようやく狙っていたバーに届いた。

 この “水曜21時” という「映画」。当初から懸念もされていた。週末でもない、平日のど真ん中で、映画が視聴者にどれほど受け入れられるのだろうかと。もちろん作品次第であるのは当然だが、効果的な編成なのかどうかということだ。他局の映画は週末に編成している。先頃7月6日放送の日テレ「千と千尋の神隠し」は19.2%、7月13日放送「となりのトトロ」は18.3%を獲得した。「となりのトトロ」は13回目の放送でこの高数字、圧倒的な作品力で別格と言っていいが、他の作品も比較的安定して2ケタを得ている。テレ朝「日曜洋画劇場」も同様。この枠は昨年10月からは23時10分まで枠大し、プライム帯ぎりぎりまで視聴者を繋ぎとめる戦略をとっている。新作劇場公開のタイミングや週末ゆえに娯楽を楽しむ心理が相まって、映画への視聴度合いが平日と週末では微妙に異なるのではないだろうか。

 そしてTBSは「ハムナプトラ」「釣りバカ日誌18」「ザ・ロック」「シックス・センス」「スパイダーマン3」など、それなりに人気作品を配した。しかし視聴率は2ケタに届かなかった。「SPACE BATTLESHIP ヤマト」は興収41億円を記録した大ヒット作。にもかかわらずだ。仮説ながら週末に放送されていたらもう少し違った結果だったように想像する。あの大ヒット映画「おくりびと」は2009年9月の初放送で21.7%を獲得し作品力を示したが、今年のお正月1月4日の21時放送で3.4%という結果だった。タイミング・時期的な編成戦略が課題に挙げられる例と言えるだろう。

 加えて、大ヒット作品だからといって高視聴率を獲得できる時代でなくなった。20%を超えるような映画は年々減っている。ゆえに、近年テレビ局で放送する映画の本数は激減し、レギュラーの映画枠もドラマやドキュメンタリー等と混合編成するようになった。さきほど他局の映画枠は比較的安定と記したが、ジブリ作品など一部を除けば、なんとか2ケタを維持している状況で、1ケタになることも少なくない。それだけ、視聴率の観点で言えば、映画はかつてのような力はない。衛星放送の映画専門のチャンネルやインターネット配信などで映画が溢れていることも背景にある。

 ちなみに、歴代の映画視聴率上位5作品は次のとおり。

 1、日テレ「千と千尋の神隠し」46.9% (2003年1月放送)
 2、フジ「キタキツネ物語」44.7% (1979年8月放送)
 3、フジ「ミラクル・ワールドブッシュマン」40.4% (1983年4月放送)
 4、TBS「犬神家の一族」40.2% (1978年1月放送)
 5、日テレ「ジョーズ」37.7% (1981年9月放送)

 TBSは視聴率争いで苦戦している。10%では十分でなく、15%推移の番組が求められる。その中、平日21時の映画編成は果たして妥当なのだろうか。これから夏休み。HUT(総世帯視聴率)が下がる季節だが、娯楽の王道 “映画” の奮闘が期待される。

(戎 正治)

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