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東京テアトル、太田和宏取締役専務執行役員語る

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東京テアトル、太田和宏取締役専務執行役員語る

2012年07月20日

銀座と名古屋に3億円ずつ投資、各3スクリーン
 興行の目線で営業力を強化、出資も検討していく


 東京テアトルは先月、第8次中期経営計画(2012年~14年度)=「To The Next 2014」を策定し、今後3年を、「本業であるオペレーション事業(=顧客に直に接し、サービスを提供する事業)への回帰に向けた新たな経営構造改革期」と位置づけた。具体的には、①15年度以降、各事業が持続的な成長を続けるための営業基盤の整備、②有利子負債圧縮、財務基盤の強化、③事業の選択と集中、不採算事業の整理、に取り組む。

 同社は今年5月、創業の地である銀座テアトルビルを178億円(簿価129億円)で売却し、この売却資金を改革の原資とする。①各事業への投資総額は40億円で、内訳は、映像関連事業6億円、ホテル飲食関連事業9億円、不動産関連事業24億円(不動産販売4億円、不動産賃貸20億円)、管理部門1億円。

 なかでも映像関連事業では、「ミニシアター興行網の整備」と「興行網を活かした配給事業の拡大」を主眼とし、14年度までに2サイト6スクリーンを新規出店、東名阪チェーンを確立。都内スクリーン数を確保し、インディペンデント映画市場のシェアを広げ、さらに興行網の活用に加え、宣伝機能の整備、機動的な出資、他社との提携により映画配給事業を拡大、自社配給作品の1本あたりの興収規模(興収3億円以上の作品を3本獲得)を拡大する。14年度の映像関連事業の売上高は40億円(12年度予想34億円)、営業利益は1億2千万円(8千万円)と計画している。

 以前映像事業本部長を務め、現在、取締役専務執行役員 事業企画室長 兼 飲食事業部長 兼 不動産販売事業部長の太田和宏氏に、今回の第8次中期経営計画における映像関連事業のポジション、計画の進捗状況などについて聞いた―。
(インタビュー:和田隆)




 ―ミニシアター興行網を整備し、東名阪チェーンを確立するということですが、すでに名古屋は具体的な候補地が固まりつつあるとの情報もあります。

P1200539.JPG太田専務
 東京は、銀座テアトルシネマが来年5月末になくなってしまうので、ヒューマントラストシネマ有楽町だけでなく、なんとか創業の地である銀座に出店したいということで、物件の情報収集を始めているところです。名古屋は情報としての案件がありますが、まだ諸般の事情でお話し出来る段階にはありません。銀座と名古屋に3億円ずつ投資し、3スクリーンずつを考えています。


 ―興行網を活かして配給事業を拡大し、宣伝機能を整備するとしていますが、改めてメディアボックスで宣伝業務を手掛けていくのですか。

太田専務
 広告市場の構造変化が進む中で、今のメディアボックスは広告会社というよりも、テアトルグループのリソースを活用したプロモーションのウェートを高めようとしています。そこに再度パブリシティ機能やプロデュース機能を加えようという考えはありません。また、一本の作品に対する宣伝機能が分離することの非効率性は経験でも明らかです。したがって本体の配給部門の中に宣伝要員を入れる形になると思いますが、並行して他社とのアライアンス(提携)も模索していきます。


 ―配給の本数を増やしていくということですか。

太田専務
 まずはそうなると思います。当社の場合、三年前に出資規模を大幅に縮小したことで、配給作品は劇場のブッキングの過程で依頼を受けたり、或いは当社から持ちかけたり、といった獲得方法に切り替わっています。ということは、作品を増やそうとするならば、当社の番組編成を熟知した人間の方がより獲得力が高まるのではないかと。決断もスピーディーになりますし。今回、映像事業部映画興行部長だった赤須恵祐が映像事業部映画営業部長に就任したのはそういう背景があります。一方、銀座テアトルビル売却後には出資も機動的に行っていこうと考えていますので、これまで製作委員会との調整業務を数多く行ってきた森平浩司を映像事業部映像推進室長としました。


 ―製作出資、洋画の買い付けも再開されるのでしょうか。

太田専務
 興行網の整備と配給事業基盤整備は簡単なことではありません。そういう状況の中で製作と買付をすぐに再開しようとは考えていません。但し、他社企画作品や買付作品への出資は機動的に行っていくと思います。


 ―独立系の映画市場のシェアを広げるということですが、厳しい状況が続いており、なかなか展望が開けません。何か施策はあるのでしょうか。

太田専務
 当社の主たる顧客の特徴は、①教養や趣味に一定レベルの投資を優先するライフスタイルである。②コミュニティ形成志向が比較的強い。③自分の嗜好性を明確に認識しており、情報の洪水に流されにくい。④おそらく「食」や生活用品に対しても一定のこだわりがあり、それに対する投資は惜しまない。というものであると捉えています。ですので作家性を大事にし、企画にこだわりを持ち、作家やその周辺の方々と顧客がコミュニケーション出来る場を創造する、といった取り組みを実直に続けています。こうした取り組みは直ぐに興行収入に跳ね返って来ませんが、潜在顧客の掘り起こしには繋がってきていると自負しています。しかもこれからは高齢化社会で、高齢の方々の娯楽ニーズの5位以内には映画が必ず入っています。自分たちらしさを失わなければむしろチャンスだと見ていて、充分に我々はやっていけると考えています。自分たちのお客さまが誰なのかを忘れてしまったら駄目で、劇場が映画ファンといかに関係性を構築できるかを追求していきたいと考えています。


3年で健全な企業になること、そして―

 ―今回、不動産関連事業を不動産販売事業と不動産賃貸事業に分けられましたが。

太田専務
 第8次中期経営計画の中でも軸となるのが、映像と飲食、そして中古マンション販売とリフォームです。以前は、賃貸事業と中古マンション販売とリフォームを一人の担当役員でやっていたのですが、多岐にわたっていることもあって、今回、不動産賃貸事業と分けて取り組み、これから伸ばさなければならない飲食、中古マンション販売とリフォームを私が担当することになりました。


 ―焼き鳥チェーン「串鳥」を拡大するということですが。

太田専務
 飲食は、関連会社である札幌開発㈱が手掛ける「串鳥」が札幌地区ではNo.1のシェアを誇っており、すでに当社グループ飲食事業の柱になっています。これは北海道内でのシェアを上げていきます。一方、都内で展開するダイニングバー業態の飲食店は1995年にオープン以来高収益が続いているのですが未だ三店舗に留まっています。この業態をブラッシュアップした新業態に近い店舗「TOKYO Mar Mare(トーキョー・マルマーレ)」を7月20日に東京駅八重洲口にオープンさせます。こちらを軌道に乗せてもう一つの軸を作り、二業態での拡大を目指しています。

 一方、不動産事業に於ける中古マンション販売事業は2007年よりスタートしており、五年間で年商30億円、営業利益1億円以上を安定して計上出来る構造に育ちました。この安定性を維持するとともに、現在市場が活発化しているリフォーム事業を並行して拡大しようと考えています。これまでのリフォームは自社のマンション販売のための機能でしたが、年間250件手掛けている実績をベースに一般消費者からの受注を拡大していくことを目指しています。飲食事業の軸を二つ作ることとリフォーム事業を成長させること、この二つが私の仕事です。


 ―賃貸商業施設の運営事業から、契約期間満了に伴い契約を終了されるということですが、その理由は。

太田専務
 いわゆるサブリース事業で現在5拠点あるのですが、いずれも期間満了が迫っています。これに伴って年々収益が悪化しており、この損失がグループの大変な重荷になっていましたが。この損失が来年度より大幅に改善していきます。そういう意味で12年度からの3年は、むしろこの撤退と銀座ビルの売却というリストラクチャリングの3年だと考えています。まず、この3年で健全な企業になること、そして次に成長性、収益性を15年度から追求していきます。


 ―最後に、「大規模買付行為に関する対応方針」(買収防衛策)を発表されましたが、具体的にそのような動きがあるのですか。

P1200544.JPG太田専務
 具体的にはありません。当社の大株主であった西洋環境開発と東邦生命が破綻した影響によって市場に流通している当社の株が多過ぎるのです。当社の株価が低いのは、その影響が一番大きい。ですから、いざという時の為の買収防衛策です。

 映像関連事業では、全国の状態と我々の劇場地域の状態は異なります。昨年で言うと、当社の年間興行成績は対前年比110%。かといって興行状況が良くなっているのかというとそうではなくて、全体は対前年比82・1%でした。当社の場合は、有楽町と渋谷の立て直しが結果につながりました。今はエリアごとにどんどん細分化していっています。今後、新宿はどうなっていくのか、歌舞伎町にTOHOシネマズさんのシネコンが15年に出来て、他社も対策を考えられていると思います。当社もテアトル新宿のある新宿ビルは次の再開発の対象で、何年後かはわかりませんが、興行の環境が変わった時に、再開発してスクリーンを増やすのか、現状維持でいくのか判断していかなければならないと思っています。(了)



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