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映画界の新鋭!
「バルーンリレー」藤村享平監督のこれまで、これから

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映画界の新鋭!
「バルーンリレー」藤村享平監督のこれまで、これから

2012年06月15日

藤村監督×鈴木智氏メイン.JPG

 日本映画界に期待の新人監督が登場した。藤村享平監督(28)=写真右。劇場長編デビュー作「バルーンリレー」の公開が6月23日(土)に控える。

 藤村監督は、日本映画学校で学び映画の道へ。2010年に文化庁の若手映画作家育成プロジェクト「ndjc」で撮った短編映画『逆転のシンデレラ』が高い評価を受けた。勢いに乗り、SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザとユナイテッド・シネマによる若手映像クリエイター育成プログラム「D‐MAP」の監督に採択され長編メガホンをとるチャンスを獲得。そして完成させたのが『バルーンリレー』。20代で商業映画監督の仲間入りを果たした。
 
 老若男女見る人を選ばない良質なコメディを得意とする。卓越した映像スキルは映画界以外からも注目され、人気バンド「SEKAI NO OWARI」のプロモーションビデオ演出も任された。しかし、その才能は生まれ持ったものではなく、あくまでこれまでの積み重ねによって育んだものだという。なかでも「ndjc」での経験が、大きな飛躍のきっかけになった。

 藤村監督のこれまで、これから――。商業映画監督を志望する若者に向け、ndjc時代に脚本指導を担当し、藤村監督をよく知る脚本家・鈴木智氏(『金融腐蝕列島・呪縛』『誰も守ってくれない』)と対談してもらった。




鈴木智氏(以下、鈴木) まずは、新作「バルーンリレー」の完成、そして悲願の劇場公開、おめでとうございますだね。

藤村享平監督(以下、藤村) ありがとうございます。どうしても20代のうちに商業長編でメガホンをとるぞとやってきて、ついに実現させることができました。これまで支えてくれた方々、今回チャンスをいただいた皆さんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。


バルーンリレー メイン mini.jpgユナイテッド・シネマ主催
第五回シネマプロットコンペティション2010 テーマ部門賞映画化作品
SKIPシティ若手映像クリエーター支援プロジェクト「D-MAP」第3弾作品
『バルーンリレー』(2012年/日本/ヴィスタサイズ/カラー/65分)

ある日、中学生・こずえの眼の前に飛んできた“赤い風船”。それはのんきなカップルが飛ばした「結婚式の招待状」だった。退屈な日常の憂さ晴らしに式場に向かうこずえだったが・・・。“赤い風船”をめぐって次々と謎の大人たちが現れ、とんでもない週末の冒険が始まった。果たしてこずえは、もとの〈日常〉に帰ることができるのか。
刈谷友衣子 大久保祥太郎
美波、古舘寛治/川島潤哉、木村了、鈴之助/内田春菊、松金よね子
監督・脚本:藤村享平  
 
6月23日(土)より
ユナイテッド・シネマ豊洲、ユナイテッド・シネマ浦和ほか全国順次公開
一般1,300円(税込)/学生1,000円(税込)

同時上映 ndjc2010(若手映画作家育成プロジェクト)完成作品
『逆転のシンデレラ』(27分)/監督・脚本:藤村享平

>>映画「バルーンリレー」公式サイト



鈴木
 かつて脚本指導をさせてもらった身としては、出来には言いたいことが色々とあるけれど……(笑)、全体としてはとても面白く見せてもらいました。かつてのハワード・ホークスのような“スクリューボールコメディ”をやろうとしている、その志が立派。

藤村 恐縮です。これまですべて自分の企画で撮ってきたんですが、今回はそもそものプロットが他人のアイデア(ユナイテッド・シネマ主催のシネマプロットコンペティション受賞作)だったので、それをどう脚本化してどう撮るか、難しかったですね。特に脚本は当初のプロットを大きく変更するわけにもいかないわけで、苦労しました。撮影日数も短くて。最終的には、役者さんの持ち味に助けられました。

鈴木 役者さんがとてもいいよね。主演の刈谷友衣子さんも大久保祥太郎くんも良い。前作『逆転のシンデレラ』も見ていて思うのは、藤村君は中高生への愛が深いね(笑)。ヤクザ役の古館寛治さんはもちろん良いし、なによりあの警官役の人(川島潤哉)! よくぞこんな人見つけてきた!って感じ。

藤村 キャラクターの面白さを見ていただければと思います。初の商業長編ということで、まだまだこれから色々と感想をいただいて、次につなげていかなければいけません。まずは、こうして商業長編を撮れたということで満足度はとても高いですね。

バルーンリレー 場面 mini.JPG
映画「バルーンリレー」より


鈴木
 ndjcで短編を制作した人が、過去6年間で33人。ndjcを経て、今回念願の商業長編デビューを果たしたわけだけど、ndjcで学んだことは『バルーンリレー』でも大きかった?

藤村 ndjcを通じて「プロのスタッフと仕事をする感覚」を知っていたのが強みになりましたね。短編であれ長編であれ、予算規模がどうであれ、プロの現場でのコミュニケーションというのは変わらないわけですから。一度経験していたことが自信になりました。

鈴木 自主と違って商業作品ともなると、プロデューサーだとか色んな人からワーワーいわれるのが当たり前だから、ああいうのを経験しているのといないのとで全然違うよね。それも撮影現場だけの話じゃない。ndjcの脚本指導では、僕も藤村君に、あれやこれやと注文をつけさせてもらったけれど、企画や脚本の段階からそのコミュニケーションがちゃんととれるかどうか、それが商業映画監督として成功するための重要なポイントだと思う。

逆転メインカット mini.jpg
短編「逆転のシンデレラ」より


藤村 こうやって商業長編を撮れるまでになって、あらためて僕の強みはなんだろう? と考えると「脚本を直せる」ことなんだろうと思うんですよ。他の監督と違って、僕は日本映画学校で演出コースじゃなく脚本コースで学んで、ndjcでもきっちり脚本指導を受けてきた。そういう経験を積んできたのは、今となって大きいですね。

鈴木 ndjcで脚本指導を担当していて実感するのは、いわゆる自主映画畑の監督も、もちろん面白い映画を撮る才能はあるんだけれど、それとは別にして、ちゃんと脚本指導を受けていないから、どうしても自分の世界観の中に留まった脚本しか書けないということなんだよね。脚本がより良くなるよう「直してね」と指導すると、結果的にバラバラになっちゃうこともある。それでは、もったいない。そのコミュニケーションが上手でないと商業ベースではやっていけないわけで、藤村君はndjc当時から自分のやりたい核みたいなものをちゃんと認識していて、直しが入っても柔軟に対応できるタイプだったね。

藤村
 ndjcでは35ミリフィルムで撮らせてもらって、今回の『バルーンリレー』は完全デジタル撮影。フィルムを知っていたからこそ、デジタルの良さもさらに実感することができました。デジタルの画質も相当良くなってきているけれど、それでもやっぱりフィルム独特の質感には感動させられるものです。1コマも無駄にできないぞと現場に張りつめる緊張感はフィルムならではで、あれは一度味わっておくべきです。一方で『バルーンリレー』では、デジタルだからこその機動力に驚かされましたね。撮ったシーンがすぐに再生できちゃう、あのスピード感もまた捨てがたい。フィルムとデジタルどちらが上かではない、どちらも一長一短があると思います。


ndjc特集上映.jpgndjc全33作品からのユナイテッド・シネマセレクション上映
ユナイテッド・シネマ みんなの映画プロジェクト
ndjc x ユナイテッド・シネマ

「映画の底力」~日本の若き才能が魅せます。~

■日時: 6/16(土)~6/22(金)1週間限定
■場所: ユナイテッド・シネマ豊洲 
入場料金: 一般1200円、クラブスパイス会員・豊洲プレミア会員1000円
■内容: 1プログラム約1時間半(1本30分×3本で1プログラム)

Aプログラム=真田幹也『Life Cycles』、平林勇『BABIN』、森英人『動物の狩り方』 Bプログラム=松永大司『おとこのこ』、中江和仁『パーマネント ランド』、中野量太『琥珀色のキラキラ』 Cプログラム=岨手由貴子『アンダーウェア・アフェア』、山口智『UFO食堂』、谷本佳織『あかり』 Dプログラム=村松正浩『けものがにげる』、藤沢浩和『嘘々実実』、和島香太郎『第三の肌』



ndjc上映スケジュール.jpg

>>「映画の底力 ~日本の若き才能が魅せます。~」公式サイト


鈴木  その劇場長編デビュー作『バルーンリレー』が6月23日から公開になるね。藤村君がndjcで撮った『逆転のシンデレラ』も同時上映される。6月16日(土)からは、ndjcのセレクション上映もある。ndjcの特集上映から、藤村君の新作長編まで、一挙に見ることをお薦めしたいね。藤村君の作品はもちろん、ndjcの作品もどれも面白いものばかりだし、まさしく“日本映画の若き才能”がここに凝縮されていると言えると思う。この才能を観客が育てていく環境が、今後の日本映画界にとって理想の形。藤村君の今後の目標は?

藤村 今回の『バルーンリレー』も、あくまで「D‐MAP」という若手映像クリエイター育成プログラムとして撮ったものです。別にアーティストのプロモーションビデオも撮らせていただいて、やっぱり次の目標は、いわゆるメジャーと呼ばれる会社で映画を撮りたいと思います。数千万~億単位の予算の作品をと思って、貪欲に動いていきます。

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>>「ndjc2012」作家募集詳細ページ


鈴木 そんなに遠い未来の話ではないように思うよ。この対談を読んでいる映画監督志望者で、我こそは藤村君に続くぞ、とか、僕や私の方が才能は上だという人は、ちょうど今、今年度の「ndjc」の作家募集が行われているわけで、すぐ応募すればいい。映画監督を志望しながら、このプロジェクトに応募しない人はちょっとセンスがないんじゃないかな。応募資格も諸々規定があるけれど、それをどうにかしてでもエントリーするくらいの意気じゃなきゃいけない。

藤村 同意します。僕は2年連続で応募して、2年目で30分短編を撮ることができたんです。映画監督として現実的に必要なスキルが学べる、本当に良いプロジェクトです。可能性を信じて、応募してほしいですね。
(了)


(C)2012 D-MAP2011
(C)VIPO


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