東日本大震災から1年。チャリティーコンサートの現実は…
2012年02月08日
あの痛ましい東日本大震災から、もう1年が経とうとしている。そういった中、大震災から1年目を迎える3月11日と13日に、フォーク歌手の松山千春、元かぐや姫の伊勢正三、そして宮城・女川町出身の俳優・中村雅俊の3人が被災県である宮城と岩手で被災地支援の「復興応援コンサート あの日をわすれない2012」を行うことになった。予定では3月11日に盛岡の岩手県民会館、13日には宮城・仙台サンプラザホールで予定している。両会場とも、ホールとしては各県では最大級だがチケットは即日完売。それでも問い合わせが相次いでいて、これまたキャンセル待ちは両会場とも1000人を超えているという。
今回のコンサートの経緯について千春は
「地震や津波で被災にあわれた久慈や三陸町、宮古、釜石、気仙沼…そういった被災地で、定期的にいろいろなアーティストのコンサートをやろう。被災地の方々に安い金額で楽しんでいただきたいと思った」とした上で
「しかし、コンサートをやるとなるとどうしても赤字になってしまう。そういった現実の中で今回、地元のイベンターのギルドネクストの社長から赤字を補てんするようなコンサートが出来ないかと提案された。そこで色々考えて、今回のようなコンサートをやることにした。コンサートの収益金については全額を被災地でコンサートをやり続けるための赤字の補てんに使いたい」。
要は、地元のイベンターであるギルドネクストの提案に千春が応えたということのようだ。
いずれにしても、これまでチャリティーコンサートの収益金というと被災地に寄付することが目的となっていた。が、今回の収益金は被災地でコンサートを定期的にやり続けるための、いわば「資金」にしていきたいというのだ。
と言うのも、今回に限らず被災地でコンサートを行う場合、必ず地元のイベンターが深く関わっているが、そういった地元のイベンターも実は震災で被害にあっている。実際、今回のコンサートを主催するイベンターにしても、社長の自宅の家屋は崩壊寸前だったし、事務所も数日間、使用が出来ないほどの大打撃を受けた。
しかし、震災直後から被災地では、さまざまなアーティストが現地を訪れ、支援のコンサートやイベントを行っている。ところが「被災地でコンサートをやり続けるためにはイベンターへの支援が必要」というわけだ。
だが、そういったイベントやコンサートは「チャリティー」と謳い、収益金は全額を寄付するとしている。となると当然だが経費も抑えられるわけだし、結局は地元のイベンターが犠牲になるしかない…というわけだ。95年の阪神・淡路大震災の場合は、不幸中の幸いと言うべきか大阪府内での被害が最小限にとどまった。しかし、東日本大震災は全く違う。被災は広範囲で、しかも津波によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の事故もあって、前代未聞ともいえる被害を巻き起こしている。これまでの状況とは全く違うのだ。それが大きなジレンマとなっている。
そういったことから「被災にあわなかった我々が頑張っていくしかない」と千春は言う。
千春と正やんはデビュー以来、親交が深かった。「今度、何か一緒に出来れば」と話し合っていたという。そういった意味で今回はタイミングも良かった。一方、雅俊は千春と同じレコード会社(日本コロムビア)の所属で、しかも被災地・女川町の出身であることから千春の呼びかけに応えた。
「まだ、内容は決まっていないけど面白い雰囲気のコンサートになると思う。とにかく復興、復旧で1日でも早くよりよいふるさとを取り戻して欲しいし、そのためにも俺が出来ることは何でもやっていこうと思っている」と千春は意欲を見せていた。
(渡邉裕二)