昨年の「紅白歌合戦」を再検証!!
2012年01月25日
話題としては、ちょっと古い感もしなくはないが、昨年末の「第62回NHK紅白歌合戦」は果たして、成功だったのか…という噺である。前半の視聴率が35.2%で、後半は41.6%。スポーツ各紙は「ミタを超えた」(「ミタ」とは、昨秋に日本テレビで放送し、最終回で40%もの視聴率を上げた「家政婦のミタ」のこと)と報じていたが…。
しかし、現実的に考えると、昨年の「紅白」は、従来のようにBS2(現BSプレミアム)やBSハイビジョンでは放送されず、総合テレビだけの放送だった。そういったこともあってか、NHK内部でも「43%はいく」と予想していたらしいから、やはり後半の41.6%にはショックだったに違いない。しかも、前年より0.1ポイント下回った。ま、そういった意味では「ミタを超えた」というのは、ある意味では的確な皮肉を込めた表現だったのかもしれない…。
一方、出場アーティストの視聴率を見ると最高視聴率は48.2%を獲得したSMAPだった。「紅白」でSMAPの視聴率トップは2年連続。因みに、前半は初出場の椎名林檎で39.4%だった。
いずれにしても、今や「音楽番組」なんかで40%前後の視聴率は上げられないのも事実。そういったことで「紅白」は、オバケ音楽番組であることには違いない。当然、出場歌手にも少なからずの恩恵もある。中でも、今回は西田敏行と猪苗代湖ズの「福島県出身」アーティストに効果がもたらされたと言われる。
西田敏行(視聴率42.2%)が歌った「あの街に生まれて」は、今年に入って200位圏外から100位に急上昇。昨年6月22日の発売から7ヶ月目で初の100位入りを果たした。因みに、西田にとっては、86年9月5日に発売されて86位になった「人生ララバイ」以来24年10ヶ月ぶりのトップ100位入りだったとか。また、猪苗代湖ズ(同35.1%)は、「I Love You &I need You ふくしま」が44位から30位に急上昇した。
この他でも、水森かおり(同34.1%)の「庄内平野 風の中」が129位→110位→49位、平原綾香(同42.1%)の「おひさま~大切なあなたへ~」は圏外→159位→66位と、昨秋10月10日付以来14週ぶりのトップ70位入りを果たした。また、前半の出場歌手で最高視聴率(39.4%)を上げた椎名林檎の歌った「カーネーション」も117位→94位→60位とランクを上げた。
その他、AKB48(同38.9%)の「フライングゲット」や氷川きよし(同43.1%)の「情熱のマリアッチ」があったが、両曲は「紅白」と同時に「日本レコード大賞」の効果もあったと思われる。
しかし、冷静に考えたら、坂本冬美「また君に恋してる」や植村花菜「トイレの神様」、さらに言えば秋川雅史「千の風になって」、すぎやままさと「吾亦紅」といった作品のような目立ってヒットした曲はなかったかもしれない。
さらに、出場歌手で言えば、由紀さおりや斉藤和義のような、2011年を象徴する歌手を出場させなかったことも汚点だったかもしれない。
由紀は、昨秋10月12日に世界24ヶ国で発売したアルバム「1969」が大ブレークしている。このアルバムは、米ジャズグループ“ピンク・マルティーニ”とコラボしたものだったが、発売直後から収録曲の「夜明けのスキャット」が話題となり、米iTunesのダウンロードでジャズ部門1位に輝いたりした。もちろん、オリコンのチャートでもアルバム部門でベストテン内にランクインを果たした。由紀は現在63歳だが、アルバム部門では「女性歌手として史上最年長のトップ10入り」だったのだ。
そんな由紀が「紅白」出場していたら、01年に実姉・安田祥子と2人で出場して以来10年ぶり、単独ではトリで出場した92年以来、実に19年ぶりとなった。話題性もあったはず。NHKでは、ピンク・マルティーニのスケジュールがつかず、出場枠から外した…なんて言っているが、少なくとも今回は絢香ではなく由紀だったはずである。
斉藤和義は、言うまでもなくテレビドラマ「家政婦のミタ」の主題歌「やさしくなりたい」がヒットしている。昨年は原発を皮肉った作品でネガティブな話題も出たが、「紅白」初出場には相応しかったはずである。
もっとも、今さら…っていう噺なのかもしれないが。
(渡邉裕二)