フォークシンガー松山千春の生き様を舞台公演化することになった。
来年、千春がデビュー35年を迎えることもあって企画したのだが、当社・文化通信社の創立60周年を記念した事業として行う。
原作は松山千春の自伝的小説「足寄より」である。「旅立ち」でデビューしたのが77年。それから2年後の79年に小学館から発刊されたのが同著だった。当時23歳の千春が自らの生い立ち、生き方、そしてデビューするまでを描いた自伝的小説として話題となり70万部を超える大ベストセラーとなった。
デビュー30周年の時にCDドラマ化し、その後、映画化され評判となった。CD、映画ときたら次は舞台と言うわけだ。来年の夏に上演を予定しているので、舞台に関しての詳細はこれからだが、内容としては、千春の生みの親である北海道のSTVラジオ竹田健二ディレクター(故人)との出会いから、デビューまでのふれあい、絆、信頼、そして別れを描いていきたいと思っている。いずれにしても夢を追いながらも貧乏、挫折、屈辱を味わいながらも突っ張りながら育った千春と竹田ディレクターとの青春群像がストーリーの柱になる。因みに「旅立ち」は、千春のデビュー曲のタイトルである。
ところが、そこで問題が…。肝心な千春役がいないのだ。CDドラマ化した時は塚本高史が千春を演じ、そして映画化では大東俊介が千春役を好演した。では、舞台は…。
松山千春は実在する現役のフォークシンガーである。そういったことからも簡単には決められるものじゃない。演じる方も大変に違いない。しかも、一番の難問は何と言っても千春ファンの存在である。舞台を制作する立場としてはファンからの反発が一番怖い。
かつて映画で千春役を演じた大東の場合は、まだ新人だったこともあり、フレッシュで性格もよく、とにかく素直で努力家だっただけにファンからも好感を持って受け入れられた。ただ、だからといって舞台でも…とはいかない。
結局、舞台化に当たっては千春役を一般公募することにした。しかも、18歳から23歳までの “平成生まれ男性” ということをポイントにしている。
「平成生まれで演技も弾き語りも出来る第2の松山千春を求む」
というわけだ。
単に松山千春に似ているということではなく個性的でフレッシュな新人を探すしかないと思っている。
文化通信社は映画、放送、音楽の業界向けエンターテインメント情報紙として60年の歴史を刻んできた。今回の舞台はその記念事業として企画している。それは、単に「舞台を企画した」でもいいだろうが、やる以上は、やはりビジョンのようなものが欲しい。いや、それ以上に業界にとってもプラスになるようなことをすべきだと思っている。
今回は、千春サイドからもOKが出ての舞台化である。つまり、見方によってはあの松山千春を利用できるのだし、何と言っても注目率も高い。そういった意味でも千春を最大限に利用して新人を発掘出来れば…と思っている。
(渡邉裕二)