ユニジャパン エンタテインメントフォーラム
福岡、沖縄、北海道それぞれの活動をプレゼン
10月23日から六本木ヒルズ森タワーで開催された「ユニジャパンエンタテインメントフォーラム」(主催:経済産業省、公益財団法人ユニジャパン)の最終日となる28日、「成功する地域コンテンツ産業育成のポイント」が40Fセミナースペースで行われた。
モデレーターを「Creative Market Tokyo 2011」審査員長の藤井雅俊氏が務め、福岡コンテンツ産業振興会議の澤卓志氏、財団法人沖縄県産業振興公社産業振興部 ハンズオンマネージャーの杉浦幹男氏、一般社団法人札幌・北海道コンテンツ戦略機構理事長の井上俊彦氏が登壇した。
福岡から新しいコンテンツを生み出す
はじめに澤氏(写真右)がプレゼンし、福岡には「レイトン教授」、「イナズマイレブン」、「ニノ国」などの人気ゲームの企画制作・販売を手掛ける㈱レベルファイブ、同じく「NARUTO」、「ドットハック」などを手掛ける㈱サイバーコネクトツーなどの会社があり、ソフトウェアで大きなポテンシャルを持っている地域であることをアピール。多くのコンテンツ系人材育成機関があり、毎年約7千人のクリエイターの卵を社会に送り出しているという。
また、同会議の活動について紹介。349の企業が参画しており、地域の産業振興・連携、福岡から新しいコンテンツを生み出していくことに力を注いでいる。県内コンテンツ産業の現状と課題、目標、そしてコンテンツ制作支援スキームについて説明。さらに今年新しくオープンした福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターを紹介した。
同センターは、福岡県が取り組む国産プログラミング言語「Ruby」によるソフトウェア産業の育成や、ゲーム・映像・CG・WEBなどのコンテンツ産業の振興のための施設。人材育成のセミナーをはじめ、合同企業説明会やビジネスマッチング、県内外を問わず企業の勉強会やセミナーなどが行われており、ビジネスや人材の交流を行なっている。
さらに、「福岡アジアコンテンツマーケット2012」や「2011アジアデジタルアート大賞展」、「第4回フクオカRuby大賞」など、コンテンツ関連の各賞実施についても説明した。
人材をいかに残し、情報を集め、資金を調達するか
次に杉浦氏(写真左)が登壇し、「地域コンテンツ産業振興と『お金』について」をテーマに、沖縄文化等コンテンツ産業創出支援事業の事業スキームについて紹介。
同事業は、沖縄県の文化等を活用したコンテンツ制作に対して投資を行うもの。「制作資金の供給と制作段階に応じたサポートを提供することで、県内クリエイターが創造性を充分に発揮できる環境を整備するとともに、コンテンツビジネスを構築できるプロデューサー等を育成することで、沖縄県文化等を活用したコンテンツ産業を新たな成長産業として育成」しようとしている。
事業の概要は、
①投資ファンドの創設~5億円規模の投資ファンドを設立し、沖縄県の文化等を活用した映画や演劇、ゲーム系コンテンツなどの制作プロジェクトに制作資金を供給するとともに、制作段階に応じたサポートを実施する。支援対象分野は、映像系コンテンツ、エンターテイメント系コンテンツ、ゲーム系コンテンツ。投資内容は5千万円を上限に総事業費の8/10以内の資金を投資。
②コンテンツ関連事業者の人材育成~コンテンツ制作を目指す事業者を対象に、企画・制作・流通まで一連のハンズオン支援を提供することで、プロデューサーやクリエイターなど県内コンテンツ関連事業者のビジネススキル向上を図る。
③事業期間は平成22年度~平成28年度(7年間)。
杉浦氏は産業が育成されるには、「人材をいかに残し、情報を集め、資金を調達していくか、この3つがまわってはじめて成立する」とし、今後の将来展望として、「入りやすい分野へ参入し、まだ手のついていない市場を開拓、シンガポールやマレーシアとの連携を準備中で、各地域とネットワークを築いていく」などと語った。
FCの役割が様変わりしてきている
井上氏(写真右)は、「観光産業とコンテンツ産業の接点」をテーマにプレゼン。一般社団法人札幌・北海道コンテンツ戦略機構は、さっぽろフィルムコミッションが2010年4月に生まれ変わったもので、「正直、まだ我々の取り組みが成功しているわけではなく、もがき苦しんでいるところだが」としながらも、映画やTVドラマ撮影のロケーションを誘致し制作支援を行う、いわゆるこれまでのフィルムコミッション(FC)とは、「180度くらい違う。FCの役割が様変わりしてきており、我々は入口と出口だけをやっていて、真中のコンテンツは手掛けていない。様々な産業との接着剤だと思って活動している」とした。
具体的には、アジア各国を中心に映画、テレビ、音楽、ゲーム、アプリ等の共同制作、共同開発、製作コーディネート。北海道産コンテンツ、北海道との共同製作コンテンツの販路拡大、セールスプロモーションを行い、北海道・札幌市が、より一層コンテンツ製作をし易く、コンテンツが馴染む街となるように、インフラ整備、規制緩和、ルール作り、ビジネスモデルの創造、さらに次世代の北海道・札幌のコンテンツ産業の担い手を育成。これらが効果的に進むよう、世界のコンテンツ産業マーケットをリサーチしている。
北海道で撮影され、中国で大ヒットした映画「狙った恋の落とし方。~非誠勿擾・フェイチェンウーラオ~」や、来年1月公開の大泉洋主演「しあわせのパン」を例に、観光誘致成功のカラクリや、コンテンツ産業と観光産業のつなぎ方、海外販路拡大、プロモーション付加価値などについて説明。
他国との戦略的な関係性を構築するパブリック・ディプロマシーには3種類あり、「ロケ誘致」「番組販売」「メディア招聘」における近年の推移を紹介。戦略の傾向と対策として、中国への番販は困難であり、招聘中心からロケ誘致へ移行。台湾・香港・韓国は成熟しており、年齢や性別によって使い分け、シンガポール、タイ、ASEAN(東南アジア諸国連合)は番販の成長は大きい(ロケはまだ)とし、「まだまだ食い込んでいないエリアがある」という。そして、資金循環(投資・権利)と地域コンテンツ戦略(観光・物産への憧れ・誘導)についての考えを述べ、「海外から見た時に、我々地方は東京との差別化を図らなければならない」とした。
地域連携の可能性と課題
続いて、ティーチインが行われ、「成功する地域コンテンツ創生とは?」、「地域コンテンツの定義とは?」などについてそれぞれ考えを述べ、藤井氏(写真上)がまとめた「産業基盤と情報のコンテンツ権利テーブル設定」、「地域コンテンツの内包される資質・地域財産とは」、「地域コンテンツの知的財産の流動性ファイナンス」、そして「地域プロデューサーとは」、「地域連携の可能性と課題」についての概念が示された。(了)
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