ユニジャパン エンタテインメントフォーラム
なぜ、韓国・日本の共同製作なのか!?
10月23日から28日まで、東京の六本木ヒルズ森タワーで開催された「ユニジャパンエンタテインメントフォーラム」(主催:経済産業省、公益財団法人ユニジャパン)の公式プログラムのひとつとして「韓国のグローバルファンドとロケーションインセンティブ制度について」と題したセミナーが26日、40Fセミナースペースで行われた。
これは韓国映画振興委員会(KOFIC)によるプレゼンテーションセミナー。韓国政府は、国際共同製作を活性化させるため、韓国企業が参加する映画、ドラマ、アニメなどの映像作品制作に対して、2011年度中に1000億ウォン(約75億円)規模の助成を行う。また、KOFICでは、韓国で10日以上撮影される、海外資本80%以上の映像作品かTVドラマが一定の条件を満たした場合(韓国で10億ウォン、約7500万円以上支出など)に、制作費の25%、金額としては最高30億ウォンまでを現金で支給する手厚い支援制度を展開している。
セミナーでは最初に、キネマ旬報映画総合研究所エグゼクティブ・ディレクターの掛尾良夫氏(上写真)が登壇し、〝なぜ、韓国・日本の共同製作なのか〟について説明した。
それによれば、「世界の映画市場で最も成長著しいのが、中国、インドなど急速な経済発展を遂げているアジアであり、今後、それぞれの文化が交流を深め、ゆるやかに融合していく」と予想する。そこで重要となるのが国際共同製作映画であるが、「広大なアジア市場を対象とするなら、一つの国の力だけでは限界」があり、「様々な面で相似する韓国と日本が、ベストパートナーだ」という。
具体的には、地理的、環境、産業的な状況も近く、「自国の映画シェアが50%を超えるのはおそらく日韓のみで、映画製作力があり、製作費規模や、飽和状態にある市場と、その縮小が予想される」という点でも似ている。これまで両国の共同製作には成功例が少ないが、「互いに国内にとどまっていては行き詰ってしまい、海外に出ていかなければならない」という点も同じだ。
前述の韓国の助成、支援制度に対し、日本も本年度、文化庁による2億円の国際共同製作支援が開始され、両国が今年から共同製作支援を始めたのも共通している。また、韓国では共同製作支援だけでなく、ロケーション・インセンティブも用意され、「これも利用すれば、映画製作の可能性は大きく広がると思う」とし、これまでの「失敗の原因を分析し乗り越えていけば、成功につながるはず。ようやく環境が整ってきたことで、第一歩が今年から始まるのではないか」とまとめた。
「グローバル・コンテンツ・ファンド」を設立
そして、韓国の国際共同製作支援システムについて、KOFIC国際共同製作チームマネージャーのハン・サンヒ氏(写真左)が説明を行った。KOFICは今年「外国映像物ロケーション支援」事業を実施。12年には新規事業「国際共同製作支援インセンティブ」を実施する予定で、11年・12年に韓国政府レベルで「グローバル・コンテンツ・ファンド」を設立する。それぞれの概要は次の通り。
①グローバル・コンテンツ・ファンド=毎年1本ずつ、計2本の同ファンドを設立予定(計2千億ウォン)。毎年民間の投資運用会社から提案書を募集し、審査を経てファンド運用会社を確定。11年は「ソビックベンチャーキャピタル㈱」に決定した。投資対象は、韓国企業が参加する国際的コンテンツの製作物。投資期間は、ファンド存続期間は7年。11年は11月中旬に設立完了予定。
②国際共同製作支援インセンティブ=支援対象映画は、直接製作費10億ウォン以上の長編実写劇映画。但し、KOFICにより韓国映画として認められる必要がある。支援申請資格は、国際共同製作映画の韓国側のパートナーで、映画製作業として登録されている韓国の映画製作者。志願審査は年2回の公募を通じて受け付け、審査委員会を構成し選定予定。支援内容は、韓国で執行される費用の25%を現金で支援(1本あたりの支援限度は未定)。※同事業の12年の総予算は20億ウォンと予想。
③外国映像物ロケーション支援=支援対象となる映画は、外国資本による投資が直接製作費の8割を超える70分以上の長編劇映画。支援申請資格は、韓国に事業者登録された法人で、外国映画者が製作する長編映画のプロダクションサービスを行う映画製作者(ポスプロ会社含む)。支援内容は、韓国で支出する映画製作費の25%を現金で支援。※同。
日本・韓国の相互のメリットとは―
続いて、CJ powercastジェネラルマネージャーのイ・ドンウ氏(写真右)が登壇し、KOFICの支援を受ける初めての日本映画に選定された「道~白磁の人~」(ティ・ジョイ配給で、2012年初夏公開)を紹介。
作品は、韓国合併期の朝鮮半島で民族の壁を越えて活躍した歴史的人物、浅川巧の生涯を描くもので、主演は吉沢悠、ペ・スビン。監督は高橋伴明。その最終選定や支援金の最終規模など決定、製作の過程について説明。
「韓国ロケを通じて、日本の製作会社は物価の安さと為替の利点を生かして、より節約した制作費で作品を完成することが出来た。と同時に韓国映画界には雇用創出と韓国の映画制作に関する能力を海外にアピールできた」などと語った。
そして最後に、ソウルフィルムコミッションのシニアマネージャー、チョン・ニナ氏(写真左)が、韓国には現在10ヶ所にフィルムコミッション(FC)があり、そのロケーション・サービスについて説明。
ソウルと首都圏の撮影環境とロケーション、ソウルFCについて、韓国のFCのインセンティブ・プログラムを紹介し、韓国での撮影のメリットをアピールした。(了)
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