民放系BS放送各社の広告会社向け「10月編成説明会」が7月下旬から相次いで開催された。大震災の影響も受けたが、完全デジタル化のフォローの風を受け、この春の業績は各社とも好調で、いずれも士気の高い、意欲的な説明会だった。視聴可能世帯の普及率は64%(3415万世帯)に達し、BS5社の接触率は4期連続(昨年12月度、今年2月度、4月度、6月度)の上り調子で、業績に大きく反映している。
10月改編を見ると、順調な業績ゆえに概ね小規模な改編となったが、BS日テレはメインコンテンツの巨人戦が終了する秋が改編のポイントにあって、今回大幅改編に踏み切った。袴田直希編成局長は「最大級規模の改編」とし、枠移動含め夜帯は50%超の改編率。そのため、夕方ベルト放送の幼児こども向けアニメ番組を朝帯に移動する。開局以来のその時間に定着した人気アニメ番組だけに、思い切った決断だったという。これにより夕方から大人向け番組を充実させ、ゴールデン帯への流れを作る。BS放送の主な視聴者である大人層をしっかり捉える戦略で、接触率も売上げもトップを目指す意気込みを見せた。(※「日刊文化通信速報」放送版8月3日付に詳細掲載)。
BS朝日は “第2のスタートライン” と位置付ける。オリジナル連続ドラマ第3弾含む2本の新番組と、毎月1本の大型スペシャル番組をラインナップした。同局は夜9時台の紀行番組のゾーン編成が奏功するなどで高接触率を獲得。その勢いに乗って、現在売上トップにあるBS‐TBSも捉えるべく、壱岐正常務執行役員営業局長は「断トツトップシェアを目指す」と宣言した(※同7月28日付に詳細掲載)。
BSフジは、この6月末にフジテレビ スポーツ局次長だった齋藤秋水氏を編成・報道局長に迎え、一層攻勢に出る構えを見せる。齋藤局長は、営業、編成・制作の経歴を持ち、さらに衛星放送スカパー!に出向していた経験が活かされる。説明会で自身の編成方針を示した中で、「ソーシャルメディア」をその一つにあげ、8月中旬に勉強会を開く予定。今後どんな展開を打ち出してくるか楽しみだ(※同8月4日付に詳細掲載)。
一方、後発のBS11は昨日、説明会を開催した。今春の大改編を踏襲し、この秋はゾーン編成を明確に打ち出す方針を示した。新聞最終面の番組表掲載等々で、ステーションの存在感を高める環境作りを着々と進めており、先輩BS局と同じ土俵の入り口にようやく立つことが出来たと話す。だが、これからがスタート、真価が問われると緊張感を高める。 “BSイレブンの日” とする11月11日には夜帯6時間の生放送を準備中で、意気込みを示した(※同8月11日付に詳細掲載)。
今年10月から来年3月にかけ新規BS放送が18チャンネル参入し、BS放送は合計29チャンネルと競争が激化する。新規組みは大半が有料放送だが、一部無料放送もあり、既存の民放系無料放送と直接対決となる。広告の奪い合いが懸念されるが、BSフジ北林由孝社長は「むしろチャンス到来。BS放送というストリートが賑やかになって、広告のパイを拡大していきたい」と話す。今秋以降BSの話題が各紙で彩られるだろう。視聴者の注目が一層集まるだけに “番組の質が問われる” と各社とも意識する。つまらない番組で失望させたら終わりだと。視聴者の支持をどれだけ集められるか、皆メラメラと燃えている。
(戎 正治)