【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.41】
夏興行の意味が変わってきたのではないか
2011年08月09日
はっきり言おう。今年の夏興行は昨年実績をかなり下回る。ここ3回ほど、夏興行の景況について大雑把に触れてきたが、ここに来ても、やはり今まで述べてきた事態に大きな変化はなかった。この8月6日で、だいたい大どころの作品が登場したものの、状況を変転させるような作品は見当たらなかったのである。
では、この8月6、7日(土日)の興行はどうなっていたのか。どのような数字の推移をたどっているのかを、3作品を挙げて見てみよう。まず「コクリコ坂から」からいくと、この6、7日は13万3395人・1億8223万8500円を記録した。これは、前週7月30、31日の76・2%であった。7日までの累計では、22億5121万6700円。
「劇場版ポケットモンスター~」はどうであったか。8月6、7日は16万2055人・1億7363万9500円を記録した(2本同時公開だが、1本として計算)。これは、前週7月30、31日の69・4%であった。7日までの累計では、25億9889万1450円。「コクリコ坂から」「ポケモン」とも、8月7日時点では公開23日目である。
もう1本は、「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」である。8月6、7日は23万0312人・3億7007万7600円を記録。これは、前週7月30、31日(前夜祭成績込み)の59・4%であった。7日までの累計では、17億9127万3000円。こちらは、8月7日時点では公開10日目である。
お盆興行を除けば、夏興行のもっともかきいれどきのこの時期の成績としては、こうした興行の推移は決して良いとは言えない。私は、トータルの数字のことを言っているのではない。前週との比較として、その落ち方に悪化の度合いが増しているのではないかと感じているのだ。
最近、スタート時の成績は良かったのに、2週目、3週目あたりから失速していく作品が増えている。これは、学生たちの休みが多い夏興行などではなく、普通時の興行で多い。ただそれがこの夏興行においてさえ顕著になってきたことは、何を物語っているのか。
むろん、お盆に近づいていく今後は、安定感を見せていくだろうが、こうした推移はその時期が過ぎれば、とたんに興行の失速の度合いが増すことを示唆しているとも言えよう。私は、夏興行の意味が、少し変わってきたことを痛感しないではいられない。
(大高宏雄)