かぐや姫…偶然に発見された40年前の“幻の作品”
2011年08月03日
シンガーソングライターの南こうせつの夏の野外イベント「フォークジャンボリー2011 in いわみざわ」が7月31日、いわみざわ公園・野外音楽堂キタオンで行われた。
このイベントは、こうせつが02年にスタートした。1回目は札幌芸術の森・野外ステージだったが、2回目からは現在のいわみざわ公園・野外音楽堂キタオンで開催されるようになり、今年で10回目を迎えた。これまでにBEGINや海援隊をはじめ、夏川りみ、中村あゆみ、川嶋あい、太田裕美などがゲスト出演してきた。09年には、亡くなる直前に加藤和彦も出演している。
今年は、かぐや姫時代の相棒・正やんこと伊勢正三や山本潤子、それに松山千春がゲストとして駆けつけた。チケットは即日完売の人気で、8000人が定員の同会場に1万人が詰めかけ、芝生席などは足の踏み場もないほどとなった。
「あの素晴らしい愛をもう一度」で幕を明けたステージは、こうせつが「北の旅人」や「加茂の流れに」の他「夏の少女」「夢一夜」などを歌い、伊勢正三は「置手紙」「なごり雪」「ささやかなこの人生」など、懐かしのヒット曲を披露した。また、千春も「長い夜」の他「大空と大地の中で」「人生の空から」などを熱唱。さらには、かぐや姫のヒット曲「神田川」や「22歳の別れ」…。“かぐや姫世代”“フォーク世代”の僕は、仕事とは言え、思わず聴き入ってしまう曲のオンパレードだった。
今の時代、ヒット曲など“記録”として残る曲は多々あるが、“記憶”に残る名曲――スタンダード曲と言うのは少なくなった。「あの素晴らしい愛をもう一度」にしても、山本潤子の「翼を下さい」、正やんの「22歳の別れ」「なごり雪」…。高校時代、大学時代、みんなで歌った記憶が蘇る。今の時代の高校生や大学生は、どういった曲をみんなで歌うのだろうか? そう思ったら、歌える曲が、いっぱいあった僕の青春時代――70~80年代(90年代の前半までぐらいまでか…)というのは、ある意味で幸せな時代だったのかもしれない…なんて勝手に思ったりする。
そんな中、かぐや姫が結成される前に、正やんが書き下していたという“幻の曲”「涙は海に」が発見された。こうせつに聞いたら「今から40年前ぐらいに正やんが予備校生時代に作ってカセット・テープに収めていたもの」だと言う。「当時、正やんが僕にテープを送ってきたようなんだけど、どうも荷物に紛れて押入れの奥に入ったままになっていた。それが最近、偶然に出てきたものだから、何だろうと思って聴いてみたら、すごくいい曲で…。正やんに聞いたら、彼も全く覚えていなくて…」。
♪青い空に浮かぶ 白い雲だけが 私のこの心を知っているだろう
遠い遠い海の果てまで 小さな舟でゆこう 涙なんてもうあの青い
青い海に溶かそう…。
正やんが19歳ぐらいの時に書き下した作品らしい。実に瑞々しい作品だった。もちろん現時点ではCD化の予定なんてないが、ぜひ、アルバムの中にでも入れて欲しい1曲だった。
ところで、こうせつの「フォークジャンボリー」だが今年、10年目を迎えたことから「一区切りをつけて今年をファイナルにしたい」と言う。何か、恒例の行事が1つなくなるごとに時代の流れや、寂しさを痛感するばかりだ。
(渡邉裕二)