実に不可解な出来事である。
「飛行機の中で暴れた」との理由から、サイパンで逮捕され、取調べ中にベッドのシーツで首を吊って自殺を図った元Xのメンバーで、ベーシストのTAIJIこと沢田泰司さん(享年45歳)のことだ。
TAIJIの自殺は、X JAPANのHideの自殺に次ぐショッキングな事件だった。「躁鬱だった」「気性が激しかった」、いや持病の「てんかんが原因では…」。TAIJIの自殺にはさまざまな憶測が流れてきた。しかし、その一方では「自殺ではなかった」という可能性も出ている。
事件を振り返ると、7月11日。TAIJIは成田発のデルタ航空でサイパンに向かった。同行していたのはTAIJIのマネジメントを行っていたと言うYOUプロダクションのマネジャー北見輝美さん。サイパンに到着する30分ぐらい前に、TAIJIと北見さんが言い争いになり、飛行機内で暴れたため業務妨害などで、サイパンの警察当局によって逮捕され起訴された。そして、その取調べ中にTAIJIは留置所のベッドのシーツで首を吊り自殺を図った。TAIJIは急きょ、病院に運ばれ集中治療室で治療が開始された。14日のことだった。しかし、日本で、この情報が伝わったのは16日のこと。では、この2日間は一体なんだったのか?
後日の情報では、TAIJIは、運ばれた時点で「脳死状態」だったと言う。しかし、日本では「意識がある」「言葉を喋っている」との情報だった。何故か。それはTAIJIの携帯電話のメールを使って、北見さんが情報操作をしていたと言われる。このため、TAIJIは「元気でいる」と、現実とは真逆な情報が伝わっていた。そればかりか、TAIJIの自殺未遂がニュースとして伝わるや、北見さんはTAIJIのブログやホームページを全て削除してしまった。実に不可解である。
その後、TAIJIの自殺未遂を聞いた親族(母親)と婚約者である赤塚友美さん(TAIJIが代表を務めるTS GLASTON COMPANYのマネジャー)はサイパンに向かった。17日のことだった。サイパンに到着しTAIJIと面会した親族は、TAIJIに取り付けられた生命維持装置を外すことに同意。その時点でTAIJIは帰らぬ人となった。17日午前11時ごろのことだった――これが、今回の事件の全容である。
サイパンと言う場所もあるが本来、生命維持装置を取り外すということ自体、大きな問題である。しかし、それ以上にTAIJIの自殺未遂後、同行していたマネジャーが取っていた行動も疑問がつきまとう。しかも、TAIJIの遺体は、現在もサイパンに安置されたままで「誰が管理しているのかも分からない」状態になっているという。サイパンには米日本大使館のサイパン出張駐在官事務所があるが、対処に動いたという形跡もなければ、邦人の自殺に対して何をやっているのかもわからない。正直言って、前代未聞の出来事だと言えよう。
しかも、そういった中、さらに驚くべき情報が発覚してきた。
「実は、TAIJIの首には首を吊った時に出来る痕が全くなかった」。
と言うのだ。
首を吊った以上は、首に索痕が残るはず。ところが、その痕がなかったというのだ。そればかりではない。口の周辺には、粘着テープが貼り付けられたような痕まで残っていたと言う――この証言が事実だとしたら「TAIJIが首を吊った」という情報さえ怪しくなってくる。
サイパンでは、TAIJIの検視も行われていない。そもそも、遺体すら、どういった状態で安置されているのかも伝わってこない中でTAIJIの死は謎が深まるばかりである。
(渡邉裕二)