演歌に興味のない人でも、ちょっと観てみたいコンサートかもしれない。
歌手の五木ひろしが7月29日に東京・中野サンプラザホールで行う「東日本大震災 復興支援 五木ひろしチャリティーコンサート」に松山千春が出演するという。 “演歌歌手” の五木と “フォークシンガー” の千春との競演は、もちろん初めて。ある意味で異色のコラボレーションなだけに、どんなコンサートになるのか…注目されそうだ。
コロッケが物まねをする “十八番同士” っていうわけでもないが、五木にとって千春との競演は長年、温め続けてきた企画だったようだ。で、震災直後から「何か自分に出来ることはないか」と考え続けてきた五木は「やるんだったらこれしかない」と思ったようだ。
3月のある日。五木は自ら千春に電話をかけ、震災復興に対する自らの思いを語り、チャリティーコンサートへの出演交渉をしたと言う。当初、千春は「演歌歌手なんだから、やるんだったら演歌仲間と一緒にやるのがベストじゃないか」と言い、五木からの出演を断ったという。が、五木は引き下がらなかった。「オレは千春と一緒にやりたいんだ。やるんだったら千春以外は考えられない」と言い切ったと言う。
とにかく「出演をOKするまでは引き下がらない」と言う五木に、さすがの千春も「そこまで言うんだったら…」と出演を了承した。
基本的に、千春は「チャリティーコンサート」に対しては、一貫した考えを持っている。例えば、義援金活動に対しては
「『募金お願いします』とか言って。もちろんチャリティーを悪いとは思わないけど、あれだけやっていると、それこそ募金しない人が何か悪い人に見えちゃう」「ちょっと、やり過ぎだろうって。度が過ぎる。一般の連中までが募金箱を持って『お願いします』っていうのは待ってくれって! そんなことをやっているぐらいだったら働けって、もっと働いて、自分自身が稼いだ金の中から義援金を出せって言うんだよ。何、他人の金を当てにするな。オレに言わせたら、『募金お願いします』って、そういった姿を子供たちに見せていたら、今どきの子供たちは『何かあったら人に頼ればいい』って思うようになっちゃうだろうって」と疑問を投げかける。
さらに、「『感動を与えたい!』とか『勇気を与えられれば!』とか叫んでいるけど、『感動』とか『勇気』というのは受けるものであって、決して与えるものなんかじゃないだろう。そういった『感動』とか『勇気』っていうのは、歌を聴いた人が受けるものじゃないか」とも言う。
千春は、震災直後からスタートした全国ツアーでは、全会場で震災と大津波で亡くなった人たちへの黙とうを呼びかけてきた。一方で、自身のラジオ番組(FM NACK5「ON THE RADIO」)では、震災直後に「我々も知恵がある人間は知恵を出そう。力がある奴は力を出そう。汗をかける奴は汗をかこう。カネのある奴はカネを出そう。私、何もないんですっていう奴は元気を出そう」と訴え続けてきた。
ある意味で首尾一貫した主張をし続ける千春に五木が惚れ込んだと言っていいかもしれないが、両者の間で「チャリティーコンサート」に対する考えが一致したことだけは確かだろう。
現時点でコンサートの内容については最終決定していないが、それにしても五木と千春の競演は「テレビでも観ることが出来ない企画」だけに注目されそうだ。
(渡邉裕二)