西河克己監督が愛知県美浜町の戸塚ヨットスクールを舞台に映画化した「スパルタの海」(伊東四朗主演)が、映画の完成から実に28年ぶりにアルバトロス・フィルムの配給により、今秋劇場公開(10月29日よりシアターN渋谷)されることになった。
戸塚ヨットスクールはヨット訓練を通じて不登校の少年らを教育していく専門学校で、1983年(昭和58年)、生徒が自殺する事件が発生、戸塚宏校長ら関係者が逮捕され、「スパルタの海」はお蔵入りとなっていたものだ。
現在、日本映画界では「スパルタ~」のような未公開となった作品が数本ある。
その1本が、千野皓司監督(80歳)が半生を賭けて製作・監督した日本=ミャンマー合作「THWAY 血の絆」(製作:同製作委員会)。1990年にミャンマーの人気作家ジャネージョー・ママレーの小説「血の絆」の企画を立ち上げ、その後、出資会社の倒産や出演俳優の降板など数多くの困難を乗り越え2005年、3時間15分に及ぶ超大作として完成、第17回東京国際映画祭・ある視点部門に出品し好評を得たものの、現在までお蔵入りとなっているが、千野監督は06年に就任した日本・ミャンマー友好協会会長として、劇場公開に向けて奔走している。
栗山富夫監督が、佐賀県を舞台に製作した「ふうけもん」(中村雅俊主演)も未公開となっている。08年秋のリーマンショックにより当初決まっていた製作出資会社が降板するなど撮影は終わっていたが、完成させることができず、現在も未完成のままである。
また、ファーストランは公開されたものの、再公開やビデオ化、テレビ放送されない作品もある。石原プロモーション製作の「黒部の太陽」(‘68)や不動産会社丸源(MARUGEN)製作の「鹿鳴館」(市川崑監督/’86)、「食卓のない家」(小林正樹監督/‘85)、「地平線」(新藤兼人監督/’84)で、「黒部~」は近くDVD化が予定されているが、絢爛豪華に製作された市川監督の「鹿鳴館」を再見したいというファンの声は多いと聞く。
また、米国人監督のポール・シュレイター監督が「金閣寺」や「豊饒の海」(第2部)をベースに作家三島由紀夫の世界を映画化した「MISHIMA」(緒方拳主演/‘85)が、三島由紀夫の遺族の許諾を得ずに製作したため、お蔵入りとなっている。
そして、古くは名匠木下惠介監督が1960年代に製作した「戦場の固き約束」が興行上の採算性に対する疑義から松竹からお蔵入りにされ、その後1988年にも日中合作で同作品の再映画化を発表したが実現には至らなかった。
このほか、曽根中生監督のロマンポルノ作品など、まだ数多くの未公開作品があり、関係者の努力により一刻も早い公開が待たれるところである。
(代表取締役社長:指田 洋)