先日、東京・渋谷で開かれた「御領亭 千秋楽」を観覧した。いえいえ、寄席の見世物ではない。この6月で退任する、音楽チャンネル「MUSIC ON! TV」(エムオン!)の御領博社長の送別会のこと。大の落語好きで知られる御領氏のために、社員たちが渋谷のライブハウスを寄席風の宴会場に様変わりさせ、「御領亭~」のお題で大パーティーを演出した。ステージに寄席の後ろ幕を張り、客席は畳と座布団を敷く、一夜限りの演芸ホールと相成って、会場は満員御礼、立ち見も溢れて大盛況。御領氏を慕う多くの業界関係者が出席して賑わいだ。真打ち・御領氏は着物で登場、自身の姿も気に入った様子で、皆と歓談、杯を交わす。
その合間に、高座のめくりで演目が進行。スタッフが作成した御領ヒストリーのVTRを披露し、ソニー・ミュージックでの販促、営業、レーベル立ち上げ、スキー場経営などなど、自由奔放ゆえの幾多の伝説も紹介しながら御領氏の足跡を振り返った。手掛けたアーティスト、郷ひろみ、近藤真彦、伊武雅刀、石井竜也らもVTRで登場し、お酒にまつわる、たくさんのコメントで笑わせる。メインの大喜利では、御領氏はじめ社員ら5人がカラフルな着物で高座に登壇、声援飛び交い、珍問答にお題を解いて会場を沸かせた。
そして女性社員たちから花束贈呈と、帽子に革ジャンスタイルの御領氏のフィギュアがプレゼント、さらに女性社員たちに囲まれてハグのプレゼント、これには御領氏も照れ笑う。続いて会場の皆と大集合写真の撮影と、盛りだくさんの演目が繰り広げられた。
そんな一つ一つの粋な計らいに社員たちの御領氏への思いが込められている。こんな送別会はそうないだろう。ソニー・ミュージックの社風なのか、御領氏の “楽しく行こう” 精神がエムオン!にあふれている。
終演を迎え、御領氏が挨拶。震災で大変な時期なのにと配慮しつつ、ひとときの宴に感謝を述べた。60歳の定年を迎え、37年のサラリーマン人生を振り返って、幸せだったと語った。仕事は楽しく、夜はもっと楽しくのはしご酒、来るもの拒まずをモットーに人を楽しませる。だから今宵も多くの人が集った。
思えば、私も飲んだことしか浮かばない……なんてことはなく、いつもフランクに取材に応じて頂きたくさんのことを教えてもらった。連絡して不在でも、そのあと必ず電話をかけ直して頂き、こちらの他愛ない話も付き合って頂いた。
挨拶の最後に「これまで、たぶん人を裏切ったことはないように思うので、皆さんとお付き合いできたのでは」と少々照れ気味に自身を語った御領氏が印象的だった。そんな御領氏とスタッフらを見て、「羨ましいですねぇ」と一緒にいた知人が話す。
7月1日付でソニー・ミュージックエンタテインメントの顧問に就任する。ひとまずですが、本当にお疲れ様でした。あらためて感謝申し上げます。
(戎 正治)