TBSの4月期新ドラマ「JIN ‐仁‐」(完結編)が海外80カ国で放送が決定したというから快挙だ。前作が、昨年のカンヌMIPCOMで、海外TV番組マーケットのバイヤーから「もっとも購入したい作品」(バイヤーズ・アワード)に選ばれ、文字通りの結果となった。国内でもオリコンの「2011年春のドラマ期待度ランキング」で総合・男性・女性とすべての項目で1位となった。この4月改編ドラマの一番の注目作だ。
ストーリーは医師の仁(大沢たかお)が江戸時代にタイムスリップして現代医療をもって病気に苦しむ人たちを救う。そのヒューマンな奮闘ぶりが感動を呼び、坂本龍馬ら史実の人物の登場も話題となった。続編となる今回、大沢をはじめ、綾瀬はるか、内野聖陽(坂本龍馬)ら主要キャストはもちろん引き続き登場するが、新キャスト&歴史のヒーローたちがまた豪華。藤本隆宏(西郷隆盛)、黒川智花(徳川家茂の正室、皇女和宮)、THE BOOMの宮沢和史(近藤勇)、市川亀治郎(中岡慎太郎)、市村正親(佐久間象山)、佐藤隆太(オリジナルキャラクター長州藩出身の武士)。架空の主人公がこれら史実の人物たちと接点を持つのだからまさにエンターテイメント時代劇。外国人もビックリか!?
時代考証は前作に続き山田順子氏。「TV時代劇を100倍楽しく観る方法」など著書も多い。放送作家として歴史クイズ番組を手掛けたのを機に、TV時代劇で活躍するようになったという。最近はやはり「JIN」の時代考証家として名が知られているようだ。時代考証家と言うと、一般に視聴者にはあまり馴染みなく、稲垣史生氏の弟子と云われる杉浦日向子氏ぐらいではないか。TV番組(NHKお江戸でござる)にもよく出演していたので。ちなみに、NHK大河「龍馬伝」は大石学東京学芸大教授。「篤姫」「新選組」も手掛けて大活躍だ。
普段ほとんど気にとめない時代考証家だが、その存在なくして時代劇は成り立たない。限度を超えると、よく知る視聴者からバッシングを食らう。とは言え、時代考証にこだわり過ぎては娯楽のTVも映画も成り立たない。お歯黒の女優さんなんて見たくないわけで。でも藤沢周平原作の映画のように、逆にあえてこだわれば見所にもなる。ただ、エンターテイメントに徹して総じてその垣根は低くなっているのだろう。
「JIN」では歴史監修の大庭邦彦聖徳大学人文学部日本文化学科教授とともに製作される。このドラマは歴史の人物の命を助けて “歴史を変えてもいいのか” というのも一つのテーマで、主人公の葛藤が見所。どんな展開を見せるのか。一つのヒット商品が出れば流れが変わるというのは放送界でも云われている。視聴率低迷にあえぐTBSにとって「JIN」はその期待を背負っている。視聴率争いも変えるか。いよいよ4月17日スタートだ。