木下惠介生誕100年記念映画『はじまりのみち』の完成を記念し、原恵一監督をはじめ、細田守監督、樋口真嗣監督をパネリストに迎えたシンポジウムが12日、東京工科大学蒲田キャンパスの片柳記念ホールで行われた。
同作は、『二十四の瞳』、『喜びも悲しみも幾歳月』など数々の名作を生み出した巨匠・木下惠介監督の戦時中の実話をもとに、母子の情愛を描いた物語。本作のメガホンをとったのは、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』といったアニメーション作品で高い評価を受けている原恵一監督。木下監督を敬愛する原監督が、本作で初めて実写に挑戦した。
出演は加瀬亮、田中裕子のほか、濱田岳、ユースケ・サンタマリア、斉木しげる、光石研、濱田マリ、山下リオ、藤村聖子、松岡茉優、相楽樹、大杉漣など。ナレーションを宮﨑あおいが担当した。6月1日(土)より全国ロードショー。
▼原恵一監督の話 (実写映画を)前向きにどうしても撮りたい、という感じではなかったが、木下監督に光を当てたいとずっと思っていた自分の想いに嘘をつきたくなくて、今回引き受けた。当初脚本のみで参加予定だったが、やるしかないなと思い、自信はなかったが、監督をやってみようと手を挙げた。アニメは机に向かって1カット1カットの積み重ね。実写は大変な撮影のシーンの際に、スタッフから要望があった時だけ画コンテを作成する、という感じだった。カット割りもカメラマンさんに頼っていた。実写はアニメと違って天候の影響も受けるので、そういう意味では大変だった。撮り終えてからはアニメーションと同じ作業だった。映画になっていない場合、アニメは画をイジれるけど実写はできない。『はじまりのみち』は撮り足す必要がないくらい、ちゃんと映画になっていたので良かった。
▼細田守監督の話 原監督のアニメのファンでずっと見ていたが、実写をやると聞いて若干不安に思っていた。アニメとは勝手が違うため、原さん独自のテイストが無くなってしまうと思ったから。実際に出来上がった作品を見ると、静かだけど力がある寸分違わぬ原恵一スピリットが作品全体に漂っていて安心した。
▼樋口真嗣監督の話 僕は撮影現場を見に行った時に安心した。スタッフが監督を愛していて、みんなで支えている感じがしたから。見学した時はリヤカーが出発するところのシーンだったが、もう少し待つと日が射すから待とう、という時の現場がとても良い雰囲気だった。