ドッグシュガームービーズ配給『戦争と一人の女』(製作:戦争と一人の女製作運動体/製作プロダクション:ドッグシュガー)の完成報告記者会見が19日、東京のヒューマントラストシネマ渋谷で開催され、本作企画の寺脇研、脚本の荒井晴彦、監督の井上淳一、主演の江口のりこ、永瀬正敏、村上淳が登壇した。
作品は、坂口安吾の原作を基に、戦争という大きな波の中で翻弄される男と女の話を官能的に描いた禁断の問題作(98分)。故・若松孝二監督の遺伝子を継ぐ者たちが、戦争の不条理とエロスという普遍的なテーマに真正面から取り組んだ衝撃の文芸エロスで、若松監督の弟子として満を持して長編デビューとなる脚本家の井上淳一が監督。脚本もまた若松プロ出身である荒井晴彦と中野太が手掛けた。音楽は青山真治。他に柄本明らが出演している。
今回、官能シーンも多く体当たりの演技を見せた江口は、「役作りの苦労はなく、スタッフ・キャストみんなに助けられて撮影中はとても気持ちの良い時間を過ごせた」とチームワークの良さを語った。続いて、原作の坂口安吾をモデルにした作家役を演じた永瀬が「俳優生活30周年の年の一作目がこの映画ということがとても光栄なこと」と語り、連続レイプ殺人犯という難しい役を演じた村上は「自分の役は加害者だが、映画を見終わると実は登場人物全員が(戦争の)被害者だと判る」と作品の重いテーマに触れた。
20年以上前に若松監督に弟子入りしたという井上監督は今回、恩師の代表作でもある『キャタピラー』(10年)と同じモチーフ “戦争” と “性” をキーワードにしてこの作品を撮った。「若松監督からは、どう撮るかということではなく何を撮るかということを学んだ。これは決して映画学校では学べないことだ」と恩師を偲んだ。
映画初プロデュースとなった寺脇は、元文部科学省の役人で映画評論家でもあるが、「映画を初めて作ってみて、こんなに大変とは思わなかった。あんまり人の映画をけなせないなという思いと、なんで金をかけて作った映画でくだらないものが多いのだろうという二つの思いがよぎった」と複雑な胸の内を吐露した。
本作は低予算のインディペンデント映画ではあるが、京都の松竹撮影所が全面的に協力して戦時中のセットを制作。江口と永瀬は「二人の暮らした家のセットが素晴らしく印象に残っている」と振り返り、登壇者全員が「とにかくこの映画は一人でも多くの人に、映画館で見てもらいたい」とアピールした。4月27日(土)よりテアトル新宿他にて全国公開。
(写真は、左より村上淳、江口のりこ、永瀬正敏、井上淳一監督)