東京国際映画祭「アジアの風」部門のプログラミング・ディレクターを務め、日本映画大学の教授でもある石坂健治氏が監修者として名を連ねるアジア映画ガイドブックの決定版「アジア映画の森 新世紀の映画地図」(作品社刊)が発売された。石坂氏に加え、市山尚三氏、野崎歓氏、松岡環氏、門間貴志氏が監修・執筆し、若手のライター夏目深雪氏、佐野亨氏が編集を担当。四方田犬彦氏、宇田川幸洋氏など現在日本でアジア映画について語り得る豪華な執筆陣が結集。 “アジア映画” とは何か、そして、そこから見えて来る日本映画の現在位置にまで迫る、業界人も必読の書。本著をまとめた経緯や狙いなどについて、石坂氏に聞いた―。
――本著をまとめられた狙いについて聞かせて下さい。
石坂 アジア映画は一般公開されるものもありますが、国が限られていたり、映画祭で上映するものはその場で終わってしまうものが多いので、きちんと記録しておかないといけないという思いが前々からありました。似たようなことを考えている方たちが結構いて、スタートした本です。
版元の作品社さんは9年前の2003年に四方田(犬彦)先生が監修という形で、「知の攻略 思想読本 アジア映画」という本を出しています。当時としてはあまり類のない本で、やはり国ごとに章が分かれていて、最初に座談会があり、作家論があってと、100人くらい取り上げられていたと思います。私も執筆で参加しましたが、それから10年近く経つので、リニューアルしたいという思いもありました。
今回は、2000年以降のアジア映画の動向というところに絞った本格的なガイドブックであり、尚且つ一般公開されたものや、映画祭で上映されたものをほぼ網羅するという形で、監修者が5人揃いました。その中には、私や市山(尚三)さんみたいに、実際に映画祭のディレクターをやっている人間が入っているので、自分の東京国際映画祭も含めて、一般公開はされていないけども、映画祭で上映した作家や作品を網羅するように心がけました。
書き手も、四方田さんには巻頭論文を特別寄稿という形で書いて頂き、諏訪敦彦監督にはアピチャッポン・ウィーラセタクン論を、作家ならではの視点で書いて頂きました。「森」というのが今回のもう一つのテーマなんですが、森を撮るということはどういうことかという、作り手の側からの素晴らしいアピチャッポン論です。
みんなの人脈で、宇田川(幸洋)さんなど、日本でアジア映画について書ける人をほぼ集めてしまったのではないでしょうか。これだけの書き手を集めて一年で編集できたというのは、結構順調にいった方だと思います。
※インタビューの続きは、エンタメ・トピックスに掲載中。