日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDV‐J)は、北朝鮮による日本人拉致問題啓発DVD「拉致 私たちは何故、気付かなかったのか!」を製作。9月26日(月)に全国約4000のレンタルショップで無料レンタル開始する。CDV‐Jは08年、政府の要請を受け、拉致問題対策本部が作成したアニメ「めぐみ」DVDを全国の店舗で無料貸し出しした実績があり、今回は同組合が自発的に製作。無料DVDレンタルで拉致問題への関心を喚起する第二弾のキャンペーンとして展開する。
若松修CDV‐J専務理事は12日に内閣府で行われた会見で、「アニメ『めぐみ』は3年間で15万人に視聴して頂いた。この数字が多いのか少ないのかはわからない。ただ、『めぐみ』を扱うことで我々も拉致問題の当事者になり、この問題が進展しないことに焦りや苛立ちを禁じえない。そこで、もう一度、国民にもっと知って頂こうと思い、製作するに至った」とDVD作成の理由を説明。昨年9月頃より理事会で話し合いを始め、12月からは脚本家や制作プロダクションも交えて本格的なディスカッションを開始。この春には大筋のシナリオを固めたという。キーポイントとなったのは、平成14年10月20日、皇后陛下が誕生日に際し寄せられた談話の中で「何故私たち皆が、自分たちの共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識し続けることができなかったのかとの思いを消すことができません」と拉致問題について触れられたこと。このお言葉を元に今回のテーマが設定された。内容は、77年に北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの両親が想い続けてきたこと、心の叫びを、これまで蓄積された映像資料や撮りおろしインタビューで構成するドキュメンタリー。
DVDは各店舗3本ずつ無償配布。POPなども用意し、「めぐみ」とのコーナー展開も行う。また、ユーザーがDVDを見た感想や意見を書き込めるように、専用サイトにリンクするQRコードが記載されたカードをDVDに同封するなどし、利用者の声を集める試みも行う。
拉致問題は、平成14年の小泉首相(当時)訪朝後何ら進展がない。そのことについて、山本恭司内閣官房 拉致問題対策本部事務局 政策調整室長は「政府として解決のために努力しているものの、ここ数年は目に見える成果がない。ご家族の皆さんには申し訳ない」と陳謝した上で、「対話にしても圧力にしても、それを支えているのは国民の皆様の関心と強い支援。その意味で、今回のDVDの意義は大きい」と述べた。政府は、本作への関わりは “後援名義の付与” のみだが、レンタル開始に際し改めて「めぐみ」を各店舗に1本ずつ無償配布するという。
会見には横田夫妻も出席。滋さんは「大勢の方が見てくださるよう祈っている」とし、早紀江さんは「DVDをたくさんの人に見てもらって、被害者の何らかの思いが皆さんに伝われば嬉しい」と語った。